文章読本 (中公文庫)
谷崎潤一郎氏の『文章読本』も、
文章の書き方にテーマを置きながら、
日本人に勧められる内面が充実した生き様を示した名著だった。
丸谷氏はそういう動機をさらに深く自覚しながら、
かつ、なぜこんなに素晴らしい文章をご存じなのかと、
驚くほどの教養の高さをもって、効果的に引用を交えながら、
さらりと、文章の要諦と人間の世界を語る。
タイトルは嘘をついていない。
だが、この本を読んで、文学の味わい方が分からなければ、
他に方策はないのではないだろうかと思わせる、
タイトルからはすれば、サービス過剰とも思える、
それほどの内容を有している。
全体からは、ある種のダンディズムを感じた。
思考のレッスン (文春文庫)
本の読み方、考え方、文章の書き方。
言い換えれば、入力→処理→出力ってことですね。
人はつい出力の部分ばかり考えがちですが、
結果を出すためにはそこに至るまでのプロセスをとばしては
ならないんだなーと思いました。
文学に興味がない方は読んでてつらい部分もあるかもしれませんが、
本の読み方、文章の書き方はさすが作家だけに、かなり具体的で役に立ちそうです。
がんばって読む価値はあると思います。
丸谷さんは読みたい本を読めばいいなんて言ってますが。
快楽としての読書 日本篇 (ちくま文庫)
丸谷才一氏の定評のある書評の中からの選集。国内編。
その選書、批評、表現全て的確で役に立ってなおかつ面白い。読んだことのある本についての納得の評価、読んでいない本はつい購入を考えてしまう。読書好きにも、これからの人にも是非ともお薦めする大人の書評集。
本来は、すべての書評をこの文庫の編集方針と同様に人物順に編纂して発行して欲しいのですが、今の経済状況では文庫で我慢せざるを得ないのが残念です。
何故か出ていない個人全集というと更に難しいのでしょうが、全書評、全人物評、全薀蓄エッセイ、全ユーモアエッセイ、という様に効能機能別の集成が編纂刊行される日を夢見ております。薄い紙で各一冊に纏めて軽い本となれば良いですね。寝転んで楽しめたり、旅のお供になったり。丸谷才一氏の文章は殆ど読んでおりますが、一生の愉しみ、睡眠薬として是非とも実現して欲しいものです。勿論挿画装幀は和田誠氏ですね。今回のも中にも挿画があって楽しめました。兎に角お薦めいたします。
美味礼讃 (文春文庫)
素材とは、料理とは、グルメとは、いや、会食とはいったいなんぞや、というところまでも原点に立ち返らせる力を感じた。
辻調理師専門学校の辻静雄氏関連の本で、あまりに感情描写がリアルな小話集にうならされることしきりである。美味を礼賛する様々な人々を描く名著である。
あいさつは一仕事
丸谷さんのファンなのでその分は差し引いて頂いた方が良いかもしれませんが、場面場面にあわせた当意即妙の内容は、あいさつもここまでくると立派な芸だという気がいたします。直球あり、変化球あり、できればそのあいさつの場に居合わせたかったと思います。いったいどれくらい準備するのかしら。まさかぶっつけ本番ということはないですよね。