愛と死 (新潮文庫)
学校では、武者小路実篤=白樺派、という風に習います。このときには、白樺派っていったいなんだ・・・と思いましたが、この本を読むと「あー、こういう感じか」となんだかわかるような気もします。
ストーリーはとても単純かつベタです(余談ながら、本書は裏表紙にあらすじを書きすぎ)。主人公は、友人の妹の夏子という美少女と知り合い、お互いにひかれあいます。そんなとき、主人公は半年間、パリに行くことになります。帰国したら結婚することを誓い合って、主人公はパリに(しぶしぶ)出発しますが、帰国寸前に夏子はスペイン風邪で急死してしまう、という題名通りの「愛と死」のお話です。本文115ページの短いお話です。
武者小路実篤が54歳のときに書いた小説だそうですが、このベタなストーリーをベタとはいわせない筆力(技術力?)はさすがです。主人公がパリに行く時に(当時は船旅)、夏子と主人公は手紙(船便)を交わし合うのですが、二人の熱烈な真情、特に、夏子の清純さや健気さ一途さ可憐さみたいなものが全開で、いよいよ会えると盛り上げまくった所で「急死」という急落下感を与えられるので、ベタなんだけど本能レベルでぐーっとくるものがあります。
友情 (新潮文庫)
白樺派の小説を読んだのはこの作品が初めてだった。そんな予備知識のない僕でも十分に楽しむことが出来た。以下、自分なりの感想を書いてみたい。
まず、登場人物たちの求道的な、自らが価値あると信じたもの(恋や芸術)に魂を捧げる、強く、爽やかな生き方に感銘を受けた。
文章が新鮮で、瑞々しく、現代の純文学のような「肥大化したエゴの有様を生々しく書いていく」といった、グロテスクさからは隔絶したものを感じた。こういう明るく、健全な小説を読むのも偶には好いものだ。
現代を生きる多くの人が感じているだろう、疲弊感・閉塞感・徒労感といったマイナスの感情からも、この小説を読むことでカタルシスを得て、一瞬、開放されるのではないうだろうか?
そんなことを思わせる力のある小説である。
小さき者へ・生れ出づる悩み (新潮文庫)
少年は十年後青年となっており、北海道から絵を送ってきた。生活のために学業をなげうち、家業である漁業に精出す「君」は、その逆境の中でもどっしりと腰をすえて、生きるために力いっぱい戦っているのだった。さらに、「私」の心をとらえて放さなかったのは、絵を描くことへの執着、青年の芸術に専心するひたむきさだった。「誰も気もつかず注意も払わない地球の隅っこで、尊い一つの魂が母胎を破り出ようとして苦しんでいる」という言葉が、この小説のテーマである(雅)
人生論・愛について (新潮文庫)
本当にこの年(24)でこの本に出会えて良かった。
今まで色々なものに触れてきて、
ものの考え方とか価値観とかが徐々に形成されてきたと実感するこの時期に、
忘れかけていた大切なことを思い出させてくれたり、
やっぱりそうだよなと再認識させてくれたり、
そういう考え方や感じ方があるのかと知らしてくれたり、
とにかくこれから生きる上で大切なことがたくさん書いてあった。
迷える同世代の人に是非とも読んでもらいたい。
お目出たき人 (新潮文庫)
あまりに素敵なガールフレンドとの出会い、夢のような日々、そして納得のいかない別れ。いつの間にか彼女の偶像を崇拝し始めているストーカー対策法すれすれの人は本書を読むべし。如何に自分が情けないことをしているかを思い知る痛い本。よって読者は限定されると思います。幸せな恋愛をしている人はただ苛々するだけでしょう。