愛しの座敷わらし 上 (朝日文庫)
座敷ワラシが出てきたからといって、その存在ゆえに家族の心境に変化が出てくるという事に納得できるような流れがないので、良くある「転勤家族、田舎で大騒動」みたいなプロットに「飛び道具」「キャラクター」として挿入されたとしか考えられない。
座敷ワラシだからこそのストーリー展開とかあまり感じないし。
座敷ワラシについては、本文中の歴史的な考察もあるかもしれないが、村の中の逆差別の正当化としての「座敷ワラシ」という側面にはまったく触れていないというのもどうなんだろうか?登場人物に「ライター」が出ているなら当然そういう事も出ると思ったけれど。(まあ、小説中に実在しているという前提では、妖怪の民俗学的な考察なんか吹っ飛んでしまったということなのでしょうか?)
登場人物も、ティピカルだし、だからといってティピカルゆえのアイロニーもなく、なんだこれ?と思いながら下巻を読むけど、いまひとつ楽しめなかった。
こういうのが新聞連載小説故のことなのでしょうか?
ラストはお約束ですね。
この小説、入試の問題文になっているんですね。さすが、入試出題率NO1を自ら宣伝する新聞の小説です。
誘拐ラプソディー (双葉文庫)
物語は長編ながら、割合一気に読み上げられます。
何故なら、内容と展開の両方がギャグっぽくて、かつ、軽妙だからです。
誘拐自体のちぐはぐさには、笑ってしまいました。
しかし、子供の境遇と教育には、考えさせられるものがあります。
後半は、段々と話が複雑になってきて、奇妙な構図が浮かび上がってきます。
収集がつかなくなってくる感すらありますが、終盤には、物語は、きっちりと収束します。
物語自体に、漫画的なノリを感じました。
暴力団親分などの、設定そのものが、娯楽フィクション的です。
しかし、その「娯楽フィクション性」こそが、真髄だとも、感じます。
いかにも、著者らしいです。
大部分は笑い、時に、しんみりとします。
サニーサイドエッグ (創元推理文庫)
前作に引き続き今作も非常に面白かったです。結構分厚いですが、引き込まれてあっという間に読み終えてしまいます。最後の一行まで、きちんと笑わせてくれました。(実際に読むと言っている意味が分かると思います)ただ、少し残念なのが今回は主人公と助手の絡みがちょっと少なかった事です。前作は助手とのやりとりが非常に楽しかったので、もっと登場させてあげてもいいような気がしました。
神様からひと言 (光文社文庫)
読み終えて「おもしろかった〜」が感想です。
場面の設定がとある食品会社で普通のサラリーマンの話なのですが、よくありそうで、実はほとんど無い、そんなお話です。
とにかく一人一人のキャラクターが最高です。
個性豊かなキャラクターが個性的な行動で物語がテンポ良く進んでいく様は、他の小説では見たことがありません。
何がおもしろかったのか自分でも分からないくらい、普通のサラリーマンのお話なのですが、やっぱりおもしろかったです。
僕たちの戦争 完全版 [DVD]
戦争中と言っても、青年の行動は止められません。否、もっと激しく燃え上がるものなのでしょう。僕のおばあちゃんは十人の子供を産みました。一人は小さくして亡くなりましたけどその四男の子供として僕は生まれました。ふとおばあちゃんの時代のことかな?と親しみを感じました。もちろん戦争だから敵国との銃撃戦もある。そのために命をかけてたたかわなければなりません。その限りある自由な時間。束縛された自由なのかもしれない。その中で、異性の魅力を感じ、より激しく燃え上がるのは動物としての本能でしょう。それなくして、自分の子孫を残せないのだから。
森山未來は実に好演している。見ていてある意味、プロらしくありません。その愛い愛いしさが同性からみても将来大成するなとの予感に満ち溢れている。森山だけではありません。相手役の上野樹里もよくやっている。恋人を探して(?)いや、実際は入れ替わるのですけど、その変化にも敏感に、また、最後にもう一度変わるのですけど、そこで終わっているので、あとは想像するしかないのですが。
このシリーズ。「広島昭和20年8月6日」もそうでしたが、実に悲惨なことをさらりと描いていて、それがより一層悲しみを増すわけですが。そのとのことを再度記します。