ブータンに魅せられて (岩波新書)
ブータンが幸福大国、というのを耳にし、どうして国民が幸せでいられるのか知りたくて手に取った1冊。でも実は、2006年の調査では世界で一番幸せを感じているという国はデンマークで、ブータンは8位だった(日本は世界の中で半分くらいの位置)。まあそれはともかく、なんといっても、ワンチェック国王が「国民総幸福」理念を打ち出していたのだから凄い。まずはどういう国なのか?みんな幸せならば、その秘密は?というところが気になった。
チベット文化圏のブータンは1970年代以前までは、外国人がほとんど訪れていなかったそうだ。日本との国交は1986年に樹立する。しかし普通ビザに加えて特別指定地域立ち入りの特別許可がいるなど、そんなに気軽に入国できるという印象ではない。インドの影響が強くあるのはインドが最大の援助国ということもあり「Big Brother」とみなしているらしい(これでは『1984』?)。また純粋にブータン人だけという国でもなく、1980年代末期からネパール人移民問題が顕在化しているようだ。
著者がブータンに入国したのは、ブータンの国立図書館関係の仕事のためのようなので、待遇がVIP級だ。なので、普通の人々の生活に密着したレポートとはいかないようだが、それでも彼らの生活について解説されていることがいくつかある。チベット仏教の教えが浸透していること、切手の収集家の間では有名な国であること、国立図書館の職員に採用される人はこれといって能力のない人ばかり、そしてその理由、一般に仕事は半日である理由、ブータンの民話、女性が実権を掌握していること、異文化に対して寛容であること、信仰が自由であること、最大のお祭り、民族衣装、国会の様子など。
そして結局、なぜ皆、幸せを感じるのかということは、人口の少なさもあっての、「巨大な家族、親族」といういわば「村落共同体」というつながりから「安らぎを見出している」ようだ。北欧も割合、小国といった感じだし、似たようなところがあるのかもしれない。
アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)
『こんな展開ありかよ~』と思わず言ってしまいたくなります。
深く考えずにスラスラ読んでいたら、まんまと騙されてしまいました。寧ろ騙されていたかったですね。強い強いと思い込んでいたので、なんだか残念なのですが、この本を読んで、こう、案外人は脆いのよ、というのを実感したりしました。そんなことを思うと涙が出てきました。
そんな趣旨の小説ではないのかもしれませんが、是非読む人の観点で何倍も何倍も味わってほしい小説だなぁと思います。
スッキリするかどうかは、個人のとららえ方ですね。私は満足しました。お勧めですv思わず友人に回してしまいました。
大いなる休暇 [DVD]
私達は、とかく田舎に単純な善を求めてしまいがちだけど、この物語に
このようなうわべの善はない。それどころか、うわべはほぼ嘘でできている。
単純な感動じゃなく、もっと骨太なものが垣間見える。
アザー・ファイナル [DVD]
最初はくだらない思い付きだったんだろうけど、見事なドキュメンタリーだった。単純な発想ほど、見事なんだよね。FIFAの順位最下位の202位ブータンと203位モンセラトとの最下位決定戦を追ったドキュメンタリー(笑)。ジョークのような企画だが、金儲け至上主義FIFAとプロスポーツの世界ではありえない、純粋な何かを表現しているようで、かなり心が温かくなった。
商業主義に毒されない・・・というか毒しようも無いだろうね(笑)たぶん全然儲からないだろうから。ナイキもアディダスも笑ってスポンサーにならなかったみたいだし。そういうのって、絶対メディアには乗らないし、僕らの目には届かないもんだけど、それをドキュメンタリーの企画にした監督は鋭いねぇ。
ブータンのキャプテンが、「夢はアーセナルでやりたいんだ。無理だとはわかっているけど」と笑ったのは、感動的だったなぁ。こういう純粋な気持ちが世界中にあるからこそ、プロスポーツのようなエネルギーに繋がるはずなんだよなぁ。オススメの作品です。
WiLL (ウィル) 2012年 02月号 [雑誌]
今回のWILLは野田政権、民主党の問題を提起しています。
本年度末、世間を騒がせた女性宮家の問題ですが
どうも、羽毛田宮内庁長官の意見具申を
野田首相が女性天皇の皇位継承問題にすり替え
皇室典範改正(改悪?)に持ち込もうとしているようです。
参考記事は以下のごとく
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111125/plc11112511290009-n1.htm
かなり初期段階で女性宮家と皇位継承権をリンクさせるということは
羽毛田長官の意志とは関係がないという報道をされているのに
どうも民主党と一部マスコミは既成事実化しようとしている。
言いだしっぺはTPP交渉参加を勝手に決めた野田政権です。
なし崩しのTPP交渉参加といい、政権主導という独裁政治がまかりとおる。
マスコミも利用しての独裁政権の工作のおぞましさ、
是非、今回のWILLを読んで、参考にしてください。
なお戦前では、他家に婚姻された皇女さまが皇族としてご公務されることは
当然の権利であり、義務でもありました。
渡辺侍従長さんも人手不足の皇室において
戦前同様の降下された女性皇族の公務参加の可能性を
他の評論家の方におっしゃられておられるようです。
なお小林よしのりさんは今回のWILLで
継体天皇が先代の武烈天皇の姉妹の皇女様と結婚されたことを
皇位継承権の地位を得る為だと解釈されていますが
このことは一切、日本の一番古き歴史書である古事記には書かれていません。
どーも、小林よしのりさんは歴代の天皇陛下が皇女さまと婚姻されたことを
明治天皇の皇女様方が旧宮家とご結婚されたことを
“政略結婚”
あるいは
“旧宮家の権威付け=女系も皇位継承に優先的に考えられた”
と思い込んでおられるようですね。
ここでこの間違いを修正しておきます。
天皇の娘=皇女はすべからく男系皇族、王族と結婚するという不文律が太古よりありました。
なぜか?
それは源氏物語の劇中で書かれています。
※紫式部は一条天皇の中宮彰子の側近中の側近であり、
当代の女性として最高の学識を持った人でした。
すなわち
「皇女たるもの、その体面を保つため、最大の身分の者と婚姻するのが常識である」
「おろかな身分の夫を得ることは父親=天皇の名を貶めることだ」
「もし、婚姻せざるを得ない事情がなければ、終生独身であることが望ましい」
(以上、若菜上より要約)
すなわち、皇女はその身分の高さゆえに体面を保つため
そして天皇である父君の名前を辱めない為に
男系皇族(宮家)、もしくば(平安以降)太政大臣、摂政関白を輩出した家柄の貴公子としか
結婚できなかったのが古代から明治までの慣習でした。
当然、相手が見つからず、終生独身、あるいは出家した姫宮も大勢います。
幕末の和宮様も最初に婚約したのは有栖川宮さまであり、
後に将軍家茂と婚姻が決まったとき、身分違い(将軍様でも武家の下賎な男扱いされたのですw)が
最後まで問題となり、尾を引いたのです。
明治時代、それまで宮中の実権を握っていた公家は後ろに追いやられ
代わって台頭してきたのは薩長の下賎な武家ども(皇室から見れば)でした。
これではとても体面が保てません。
そこで、宮家の方々との縁組が行われたのです。
小林さんは宮家との皇女さまの婚姻を単なる皇位継承の政略結婚と考えているようですが
これは皇女の婚姻事情をまったく調べもしなかった浅はかな解釈です。
日本人の作家さんとして、せめて「源氏物語」くらい読んで欲しいですね。
古典は書かれた時代の常識や社会を描いているのですから。