うちにかえろう~Free Flowers~
少し前(と言っても約3年)に、NHKのCFに使われていた曲でした。 プロジェクトXにかぶせたCFだったので、もしや「中島 みゆき」さんの新曲か?と思ってCDを探した記憶があります。
ハスキーで声量もある、実力もありそうなのに、新作が出てこないですね、ちょっと気になります。
ヘヴン (講談社文庫)
ハッキリ言って、読むのがつらい作品です。いじめのシーンはあまりに壮絶(自分自身の中学生時代を思い起こしても、そこまでリアリティは感じませんでしたが、今のいじめはこんなに凄惨なのでしょうか?)。それでも、先が気になったことに加え、最後に救いがあるに違いない、と思い読み進めました。そして最後、ほのかな期待は大きく裏切られることになるのですが。それでも、やはり読み終えてよかったと思いました。
本書には哲学的、宗教的な意味が込められているようです。しかし、そんな難しいことではなく、「他人を変えることができないのだから、自分を変えろ」「人は強く生きなければならない」といったシンプルで前向きなメッセージだと私は受け止めました。誰にでもオススメできる作品ではありません。ただ、本書を読みきらなければ分からなかった世界がありました。
曾根崎心中
心から愛し合った男女の、美しい最期までを、流れるような文体と美しい情景描写で語っていく。
ハードカバーでうすい本なので、読むのにそこまで時間がかからないが、ぐいぐい惹きつけられて、
読んだ後は放心し、涙が出た。
舞台は江戸時代の遊郭で、現代ではうかがい知れない非常に興味深い場所が細かに描かれており、
当時の遊郭独特の言葉もちらほら使われていて、それがよいエッセンスとなっている。
遊郭の描写もあるものの、女性目線から描かれているので、直接的すぎる描写は少なく、うつくしい。
本当の恋とは何なのか、本当に人を愛するとどうなるのか、そういことが、ぬきさしならない状況とともに
描かれていく。
普通の市井で出会っていた男女なら、現代に出会っていた男女なら、相思相愛の幸せな結婚をしたかもしれない。
でもこいういう悲劇の物語は、本当にうつくしいし、忘れられない。
パンドラの匣 [DVD]
主人公・利助=ひばりが綴る手紙がストーリーテリング役なせいか、物語の進み具合が起伏に欠けて盛り上がりを見せない。「ロケットマン」こと「ふかわりょう」こと「フニオチ太郎」が、文句たらたらだったに違いない、どうにも腑に落ちない話だった。
魅力を挙げるならば、看護婦「やっとるか」⇒患者「やっとるぞ」⇒看護婦「頑張れよ」⇒患者「よしきた」…という日常的にあちこちで交わされる合言葉や、塾長ミッキー・カーチスの塾内放送を通じて流される訓話が楽しい。“新しい男”になると意気込みながら、新しさの定義に頭を悩ます軟弱なインテリ「ひばり」ならではのボケ味などは、かなり自虐的なユーモアが利いていて面白かった。
川上未映子のキャスティングがこの映画の最大の見どころだ。この人の大阪弁は聞いてるだけで気持ちいい。映画初出演とは思えない達者な演技、憂いを含んだ表情やニュアンスに富んだセリフ回しなど手慣れたものだ。逆に、金歯がチャームポイントの「マア坊」こと仲里依紗は、彼女の小悪魔的な魅力がこの物語には欠かせないことは分かるが、終戦当時にこんな現代的でふくよかな“おなご”はおらへんて。私なら吉高由里子を推します。
菊地成孔は、『パビリオン山椒魚』に比べれば、彼の音楽が映画に占める割合は数段アップしていて、やれやれ。弦楽曲と彼のヴォーカルを主としたメロディメイクとアレンジが、この映画をそこそこの文芸作品へと導いているのは間違いない。
驚いたのは、全編アフレコであること。小栗康平監督の『死の棘』をめざしたのだろうか。しかし、アフレコの利点を大いに生かして、多重録音や声のパッチワークによってセリフで遊んでいる。これは、鈴木清順に0.1歩ほど近づいたクリエイティブとして評価できるんじゃないかと思った。
乳と卵(らん) (文春文庫)
読点で文章をつなぐだけで、一文がやたら長くて読みにくい文体。
それも関西弁がベースになっているから、
言葉を理解しきれない読者もいるかもしれません。
でも、我慢して読んでいるうちに、この文体が心地よく感じられるようになり、
目が離せなくなったりして。
ストーリーは、豊胸手術をしようとする母と
コミュニケーション・ブレイクダウンに陥った小学生の娘が、
東京の妹(娘にとっては叔母)を訪ねた先で言葉を取り戻すというもの。
このあたりの話は、30代男性の僕には最も縁遠いことなので、
ほとんど共感できませんでした。
ただ、ストーリーはこの際重要ではなく、
ディテールに現代を生きる人の見えない叫びが翻訳されています。
その意味では、文学として成功していると言えるのでしょう。
芥川賞選考会でも賛否両論で、絶賛する人もいれば、
石原慎太郎氏なんかはメッタ斬りにしたとか。
ひとつ言えるのは、文学には正解などないということでしょう。