白鯨 [DVD]
原作はすり切れるほど読みました。
あの膨大な内容をうまく整理して、なおかつ
原作以上の見せ場を生み出しています。
序盤の見せ場は、オーソン・ウェルズの説教。
自分からやらせてくれと申し出ただけあって
相当の気合が入った、すばらしい熱演です。
そしてなんといってもエイハブの最期がすごい。
死して白鯨の背に磔に・・それでも手が招く。
美しく、恐ろしい光景です。
白鯨は生物だったのか?驕れる人間への神の使いか・・
白鯨 下 (岩波文庫 赤 308-3)
白鯨は私が今まで読んだ中でもっとも気に入っている本だ。
特に下巻が最もいい。上巻と中巻はほとんど船乗りたちの光景と鯨について延々と書かれているだけなので退屈してしまう方もいるだろう。
しかし、下巻のラストシーンの緊張感は素晴らしいものがある。
自然と人間、壮大なテーマを扱ったこの本は今の時代にこそ読むべき一冊である。
白鯨 中 (岩波文庫)
メルヴィルの筆力も八木の訳文も、膨大な情報量をものともせず読者を引きずり込む。
ストーリーは一向に進まないにもかかわらず。この力業にはただただ脱帽。
あまつさえ第81章「ピークオッド号、処女号にあう」ではスタッブが
原典にすらないオヤジギャグをかっ飛ばす。これを許した岩波書店って心が広いなあ…。
もちろんギャグやジョークばかりが『白鯨』の取り得ではない。例えば第82章「無敵艦隊」で
母親の乳房にしゃぶりつく赤子の眼差しについて触れた一節からはメルヴィルの
人間に対するただならぬ観察眼・洞察力がうかがわれるし、
第45章「宣誓供述書」の「この世には真実を証するのに虚偽を糊塗するのとおなじほどの
エネルギーを必要とするという、意気阻喪すべき事例にみちあふれているものでありますが」は
現代においてなお痛感される真実だ。
これと言って悩みも無いけど刺激も無くて毎日が物足りないというあなた。
岩波文庫の『白鯨』を手に取って、どこでもいいから適当に開いて読んでみて下さい。
もしかしたら、あなたを突き動かす何かに出会えるかも知れません。