ゴーマニズム宣言SPECIAL 昭和天皇論
昭和天皇が終戦時、戦後にたどられた長く険しい道のりを読者とともに振り返ります。
読み終わると「ポツダム宣言の受諾」「玉音放送」「マッカーサーとの写真」等について
今まで深層にあったものが、まるで手が届く所にあるかのように思われ目頭がうるみます。
自分は、歴史を知っていたのだろうか?昭和という時代を知っていたのだろうか?
日本を知っていたのだろうか?戦争を知っていたのだろうか?そして昭和天皇を・・・
読まずに人生を終えるのはあまりにももったいない。戦争論と天皇論を結ぶ力作です。
NHKスペシャル 昭和天皇 二つの「独白録」 [DVD]
いわゆる「昭和天皇独白録」とは、1946(昭和21)年4月から6月にかけ、松平慶民宮内大臣・松平康昌宗秩寮総裁・木下道雄侍従次長・稲田周一内記部長・寺崎英成御用掛の5人が、張作霖爆殺事件から終戦までの経緯を4日間計5回にわたって昭和天皇から直々に聞き、まとめたものである。
本作は、1997(平成9)年6月15日にNHK総合で放送されたNHKスペシャル「昭和天皇 二つの『独白録』」をDVD化したものであり、英語版の「独白録」の発見から極東国際軍事裁判の舞台裏で行われた聞き取り作業の真相に迫ったものである。
私が注目したいのは、いわゆる「昭和天皇独白録」としてまとめられた5回の聞き取り以後も、木下と稲田の2人によって2ヶ月半にわたって聞き取り作業が続けられ、1946(昭和21)年10月1日に昭和天皇に奉呈されたとされる「聖断拝聴録」と呼ばれる記録である。
宮内庁は「聖断拝聴録」の存在すら「不明」としているが、木下の残した記録の断片と見られる文書で昭和天皇は「軍備が充実すると使用したがる軍人の癖」と「軍部の主戦論に附和雷同した日本人の国民性」が戦争防止を困難にしたという鋭い指摘もしている。昭和史の第一級史料として公開が待たれてやまない。
太陽 [DVD]
天皇を演じるというのは、今でも日本人にとって大変な気苦労があったと思います。イッセー尾形さんは、彼の持ち味の一人芝居の演技力で天皇を可能な限り演じられていると思います。イッセー尾形さんの並々ならぬ役者としての気概に圧倒される思いです。尾形さんの動作、仕草に在りし日の昭和天皇を思い浮かべてしまいました。本当は天皇陛下がどんなお人柄であったか知りえませんが、口ぐせが「あっそう」であったことを思いだしました。全体主義、軍事政権、神風特攻隊の現人神が、庭師のような質素な身なりで極常識的で大変な教養人であったというそのことがアメリカ人には驚きであったということを言われていますが、そのお人柄がよく伝わってまいりました。御前会議の様子など、日本という国は常に、天皇と将軍、天皇と総理という二階建てで成り立ってきたということがわかります。日本のあらゆる組織もこれに似たところがあるかな、と思いました。アレクサンドル・ソクーロフ氏によるものですが、まあ、日本人では映画化はできないと思います。日本人にとってもこの映画が撮られたことは喜びだと思います。
昭和天皇と戦争の世紀 (天皇の歴史)
昭和天皇とその時代を概観するのに、ヨーロッパ歴訪時代の第一次大戦で荒廃した各国の焦土、関東大震災によって焼き尽くされた帝都東京の焦土、第二次大戦時の米軍による爆撃で焦土となった日本全土という三つの焦土に立った人、として描き始めるのが印象的。皇太子時代のヨーロッパ歴訪では、ジョージ五世に英国軍が奮戦したベルギーのイーブルを訪れるよう勧められるのですが、砲弾によって森林枯滅となった戦場に立ちます。そうなると各国とも自軍が奮戦した激戦地を見せるようになり、ヴェルダン、ソンムなどの戦跡をめぐる旅が続き、その時の模様は「東宮御渡欧映画」として日本国民も見ることになります。もちろん、そのときは総力戦の威力を自ら知ることになるとは思っていなかったでしょうが…。その後、昭和天皇は関東大震災の時には馬で、第二次大戦の敗戦直前にはクルマで焦土を視察したほか、戦後の巡幸では広島なども訪れることになります。
『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』では熱河作戦によって国際連盟を脱退せざるを得なくなることを知った昭和天皇が、なんとか作戦の裁可を取り消そうと試みたあたりが印象的に描かれていましたが、この『昭和天皇と戦争の世紀』では、僅か二個師団の日本軍によって31万人の中国兵を敗退させたことで塘沽停戦協定締結となったことは一時的には大きな成功をもたらした、とします。《自ら連盟脱退を通告した日本は、除名や経済制裁という不名誉を蒙ることなく、また、中国との新たな関係打開の端緒をも、結果的につかむことになった。熱河作戦をめぐる政府と軍部の経験は、成功体験として、軍の強硬路線を勢いづけた》という(p.235)。マリアナ沖海戦で大敗し、制海・制空権を失った日本が本土爆撃をされるままの状態になってもなお降伏しない日本に原爆まで落としたのは、アメリカに、第一次大戦のような交渉による平和では、第二のヒトラーを生み出してしまう、という懸念が強かったというあたりは悲痛。