ショート・カッツ [DVD]
メドフライと呼ばれる害虫駆除のためハリウッドと思しき市街地に農薬が散布されるシーンからこの映画ははじまる。かといって、その後の展開がパニックムービーになるはずもなく、村上春樹が敬愛するレイモンド・カーヴァーの短編集の雰囲気そのままに、気の抜けたビールのような味気ないエピソードが長々と190分間語られる群像劇だ。
10組の夫婦が繰り広げるショートカット・ストーリーはこれといったオチもなく、それぞれのかかわり方も限りなく希薄だ。仲の悪かった夫婦がふとしたきっかけで元のサヤにおさまるかと思えば、一方でその真逆をいく夫婦も登場する。何かあるかわからない人生をそのまま受け入れよというメッセージのような気もするのだが、その登場人物たちに向けられるアルトマンの目はあくまでも批判的だ。
ハリウッドに対する対決姿勢を崩そうとしなかったアルトマンが、農薬や突然おきた大地震によって本当に駆除したかったものは、人生これといった目的もなくただフラフラと生きている中身のない人間たちだったのかもしれない。
ショート・カッツ [DVD]
暗闇の中、異様にカラフルなヘリコプターが飛ぶ、美しく迫力あるオープニング。『メドフライ』という害虫駆除殺虫剤の空中散布だというのですが・・・。
何組かの家族を追って物語は始まります。それぞれが少しづつ重なり合い、絡み合って、徐々に全体像が浮き上がります。
どの家族もなにかちぐはぐで落ち着かない。そんな危うさが観ている側に不安感を与えます。目の前に映し出される、『歪み』や『ずれ』が自分にも突きつけられ、心がヒリヒリする。そんなキツさのある作品です。
しかも、「途中で逃げ出すことを許さない」強い求心力が作品にあるのです。
大人数での、複数の平行するストーリーを、飽きさせることなく見せる演出力と俳優陣の演技力。
どこか突き放したような冷徹さを持つ、容赦ない人間描写。容赦ない・・・でも決して「非難」ではない。人間とはこういう部分を持ったもの。逃げられないし、全て含めて人間なのだ!ということだと思います。
強く印象に残ったことを二つほど。
ジャズシンガー「アニー・ロス」の歌と、チェリスト「ロリ・シンガー」の演奏。この劇中の『母と娘』の音楽が、複数のストーリーを一本の糸へと紡ぎ、さらに一枚の布へと織りなすための強力な手助けをします。
そしてもう一つ。効果的な色使いです。一例をあげますと、妻が画家、夫が医師の夫妻の自宅でのシーンです。妻は『真紅』の電話機(今と違い大きい)を、夫は『紫』の電話機を持ち、同時にそれぞれの友人と話します。着衣、インテリアも同じ配色です。『赤と紫』の激しく美しいぶつかり合いが夫婦の状況を強調して表現していました。
エンディングに流れるアニー・ロスの歌。「人生の囚われ人〜」という歌詞が作品全体を象徴しているかのようでした。逃げられないのです。人生からも、『メドフライ』からも・・・。少々のことが起きても・・・。
ショートカッツ (2) (YS comics)
この本には可愛い女子高生がたくさん出てくるのですが、その女の子達とブラックなネタが絶妙なミスマッチ感をかもし出していて、可笑しいです。兎丸さんお得意のシュールな笑いがキュートでポップに描かれています。そういうのがお好きな方は是非どうぞ!笑えますよ。
ショートカッツ (ビッグコミックス)
内容は1〜2ページで完結するショートストーリー集。
女子高生がほぼ全ての話しに出てきて下ネタが多いです。
赤鬼やエミちゃん等の個性が強すぎてトラウマになるような話はないので
古屋兎丸を知らない人はこれから入るといいですよ〜。
シュールなネタが多いです。