ライヴ・アット・モントルー 1997 [DVD]
WOWOWで見たとき、演奏云々以前に、欲に目の眩んだ企画物の極め付けという批判的な直感を持った。でも最近、改めて冷静に見ると、別の感じ方をした。よくフュージョンで超一流を集めると期待ほどではないアルバムが多い。例えばFuse One、Grandcross、M Colombier。でも、気迫が無いが、プロデューサーがどの場面でどういうプレイヤーの音やリズムを使うという綿密な計算をしたうえでの演奏なので、プレイは正確で比類なきもの。譜面が強く一発録りができる超一流を集めて、曲毎にバンドを入れ替える、スティーリー・ダンがいい例。反面、このレジェンズは、緻密に計算して場面に応じてクラプトンのギタープレイを求めたものではなく、単なるジャムセッション。超一流ジャズ系スタジオアーティストの中で、ポンと放り込まれたロックミュージシャンはいくらカリスマといえども、追い付けないのは当たり前。曲もザンボーン、マーカスのオリジナルや、ジャズスタンダードではクラプトンには圧倒的に不利で、せめてロックのオリジナルで演奏すれば違ったものになったと思う。でも誉れ高いモントルージャズフェスなので、そういうわけにはいかない。このように色々考えると無茶なのである。でも、超一流ジャズ系スタジオアーティストとロックのカリスマがジャムしたらこうなった!という音楽遺産として後世に残す映像として、消し去ってはいけないものと考えることにして、音楽的評価はしないことにしたい。
ジャズ・フォー・ジャパン~東日本大震災被災者支援CD~
復興支援のために新録音されているとのことだが、内容は素晴らしい。これほどのメンバーによるこの演奏は最高です。
世界レベルではこのように実行されているのに、日本ではなぜこのような企画が実施されないのか逆に疑問です。
自分の国で発生した震災復興のために、日本人アーティストは海外で実行されているレーベル超え企画(一緒に復興支援目的の新録音)もやらないというのはなぜでしょうか。
過去の持ち歌を集めるだけでなく海外のように本気で支援しようというアーティストは???、100年に1度とも言われる震災なのに。無気力の不思議な国、日本。
Abracadabra
ベン・シドラン、ボズ・スキャツグズを排出した大元の大御所ブルースロックバンド。本作はあからさまなブルースの影響は無く、リリース当時は彼等のキャリアではベテランの域に達していたが、TOTO、STYXあたりを好きな人達にもすんなりと(?)受け入れられる80年代初期の作品。一言で言うと、とにかくコーラスが美しい。作風はLAサウンド(と言ってもノンディストーションのイーグルスあたりの)にカントリーの要素が混ざったスタイルに+キーボードといった感じ。このアルバムは聞き込むほどにその良さが実感できるようで、3、4度通して聞いたぐらいでは良さはわからない。一貫して彼等のスタイルという物はあるが、アラン・パーソンズ・プロジェクトが歌ってもおかしくない曲や、イーグルスのティモシーBシュミット風の曲、ジャクソン・ブラウン風等々、ウェストコーストのいいとこ取りサウンドだ。タイトル曲も当時の彼等からは前衛的とも取れるサウンドだが、ギターの音は実は前時代的な古臭い音だと気付く。ステレオで流せば(当たり前かな)左右にパンするフレーズが新しい流れを感じさせるが基本的な部分は古き良きアメリカのバンドサウンドそのものだ。アメリカのロードサイドのBarでいかにもアメリカといった、カントリーベースのロックバンドが演奏し、酔っ払った客がワイワイ騒いでいる。そんな光景が目に浮かぶようなサウンドだ。マイナーキーではとことん暗く(しかしそんな曲でもコーラスは美しいハーモニーだ)メジャーキーでは明るく陽気な乗りだ。とにかく歌のメロディーを暗記するまで聞いて、CDに合わせて歌い、伴奏を口ずさんで欲しい。そうすればこのアルバムがいかにかっこいいかわかるはずだ。
イノセント・オブ・ナッシング
2004年にアルバム「ナイトキャップ」を発表し、立て続けに本作品を出した注目の女性ジャズ・ボーカリスト。今回はゲストにキーボードのジョージ・デュークを招いている。詳しい経歴は不明だが、声は中音で気負いがなく、少しクールな歌い方が現代的だ。サンバアレンジの「ラウンド&ラウンド」で始まって、2曲目のスタンダード「ラウンド・ミッドナイト」で実力のあるところを見せる。採用曲に変化があり飽きない。音程の低い部分がしっかりと歌えていて、高い声も耳障りにならない。今後の活躍が期待できる中堅アーチストと見た。音質、セパレーションともできの良い高品位CD。
マッドマックス [DVD]
メル・ギブソンの出世作。公開当時も予想を超えるヒットでした。アクション・シーンは大迫力で、なかでもトラックとバイクの正面衝突の場面は凄い!
話の内容はどちらかというと陰惨で、最後も爽快感はなく、全体に重い印象だが、そこがいい。現在のCG満載の軽いアクション映画しか見ていない人にとっては、この映画のハードさは新鮮だと思います。続編の「マッドマックス2」も評価が高い作品ですが、やはり1作目が一番いい。