これがMBOだ!
MBOのしくみを理解するための教科書である。モデルケースの紹介と具体的事例へのあてはめがあるため、わかりやすくMBOをはじめて勉強する人にお勧めである。
一方、本書で紹介されている3つのモデルケース、1)大企業のノンコア事業・子会社の独立2)オーナー企業の事業承継3)上場企業の非公開化のうち、新聞をにぎわせかつ問題視されているのはほとんど3)であることから、実務はMBOの理念とは離れたところでブームになっているという思いを強くした。
本来MBOはマネージメントバイアウトなのだから、経営陣が株式を取得してスピンアウトするものと考えるが、実際にはPEファンド(プライベートエクイティファンド)が多額の出資を行うから経営者が大株主となることはまずない。本書は、島田晴雄氏とCVC(PEファンド)の共著であるから、MBOの影の部分についてははっきり書かれていない。また、PEファンドを使ったMBOの成功事例として新生銀行を紹介し、続いて日産の成功事例を併記している。後者がMBOでないことは明らかだが、前者もバイアウトファンドによる企業買収としか思えず、このような不正確な記述がところどころに散見される。
2005年7月にワールドの非公開化が発表され、村上ファンドやスティールの存在におびえた上場企業の経営陣が買収防衛の有効策としてMBOを研究しはじめた。2006年6月にすかいらーくが非公開化を発表してMBOブームに火がついたというのが私の見立てである。MBO後に事業改革を実行して本当に株主価値は向上するのだろうか。買収防衛を最大の理由としてMBOスキームを使った経営者の今後を見極めたい。
成功する!「地方発ビジネス」の進め方 わが町ににぎわいを取り戻せ!
本書を読んで、地方もまだまだ捨てたものではないなと感じた。それぞれの構成を生かすよう努力している姿に日本の未来が元気になっていくように思えた。
岐路―3.11と日本の再生
グローバル・アイを持った経済学者として、また、ビジネスの現場にも通ずる筆者ならではの迫力あるメッセージ。
書は
第一章に東日本大震災の記録。第二章に経済への衝撃。第三章は、歴史に紐解き、ポルトガルの大地震に端を発する、国家衰退の例を取り、日本の今後の対応に警鐘を鳴らす。第四章は復興へのロードマップとして7つの緊急提言を、そして最終章は未来志向の日本へとして、東北被災地域に太陽経済都市圏構築を提言している。
第一章の大震災の記録は、時系列にまとめてあり解り易い。また筆者が被災地を足で得てきた情報なので、説得力がある。
中でも福島第一原発事故の記載は、全体の3分の1を割いての力作。
時系列な記録のみならず、政府や関係者達の動き、欧米の研究機関のレポートの紹介、そして原子とは!?被ばく、とは!?といった、科学の基礎的な解説をも含め、縦横に、この放射能問題をカバーしている。
この部分は、筆者のグローバルな切り口が冴え、そして、短期間に、これほど多岐にわたる専門分野の情報収集がなされており、読みこむ価値があった。それだけに、専門的な知識が、ある程度必要とされ、読むのには、てこずった。
書の後半は、復興へのロード・マップとして7つの提言が記されている。どれも、政府として、やらなければならないことばかり。この種の提言は、巷にあふれてはいるが、筆者は元内閣の特命顧問を経験しており、政策運営の裏表も理解した上で、提言していることと察する。よって、提言と同時に、その執行にいたるまでのボトルネックの指摘も、理解しやすい。
さてはて、筆者の、“この震災をバネに日本の再生を!”という熱い想いみなぎる、これらの提言。
これらを、いつ?、だれが?、どのように?、どのくらいのスピードで執行するのか?
それに至るまで、一読者として、何をしなければならないのか!?とまで、考えさせられる。
行政評価―スマート・ローカル・ガバメント
行政評価の目的、仕組み、導入方法などを具体的に解説している入門書である。海外の事例も紹介されるなど、幅広い内容を有しているといえ
るが、残念ながら情報が若干古い。日本において、行政評価が流行りだした当初の状況を確認する上では、有益な書籍といえるだろう。