ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集
ベートーヴェンの抒情性を最大限に発展させた演奏として評価したい。勿論、彼の音楽の構築性、あるいは哲学的な深みや緊張感の表出という観点から聴けば、他にも更に優れた全曲集はある。スークとパネンカは双方ともいわゆる美音の持ち主で、その音色を生かす表現に傾くのは当然だが、かと言ってこのソナタ集がそれほどおとなしいものでないことは第七番ハ短調や第九番イ長調「クロイツェル」のドラマティックな解釈を聴けば納得できるだろう。また嘗ての美音を誇った奏者たちにありがちな耽美的な古臭さは微塵も無く、むしろ現代的なセンスで曲想を把握し、それを洗練された趣味と音色で歌い上げていく颯爽とした表現が魅力だ。アンサンブルとしても緊密で、特に緩徐楽章でのスークの瑞々しい歌い口にパネンカの澄み切ったピアノの音色が良く溶け合って、聴き手を陶酔させる。このピアニストの隅々まで行き届いた、潔癖とも言えるダイナミクスの表出は特筆すべき価値がある。1966年から67年にかけてのスプラフォンの録音で、リマスターされた音質は申し分ない。
モーツァルト:弦楽五重奏曲第3番・第4番
チェコの代表的なヴァイオリニストであるヨゼフ・スークと
スメタナ四重奏団による演奏。
モーツアルトの書き上げた作品の特長は、天上の音楽であるかのような優美さと
魂が震えるような寂寥感を持つものだと思います。
この弦楽五重奏曲も例外ではないです。
溢れんばかりの愉悦感を持つ第3番。人の持つ孤独感に訴えてくる第4番。
どちらの作品もモーツアルトの音楽性を象徴する演奏だと感じます。
室内楽の苦手な方にも、お勧めの演奏です。
ブラームス:ヴィオラ・ソナタ集
すばらしいです。
これほどブラームスのヴィオラソナタの解釈が分かりやすい録音は他には無いのでは?と思いました。
ヨゼフ・スークの演奏は単調ないかなるパッセージでも手抜きが一切無い、ヴァイオリニストとしてもお馴染みの圧倒的な繊細さが特徴です。ブラームスのソナタ独特のしっとりした面持ちに彼の感性が良く合っていて、例えようのない美しさを表現していると思います。
この演奏には、まるで『気が狂ったようなヴィブラート』や『不自然なアゴーギグやアクセント』は無く、無駄なく丁寧に旋律を歌ったところが絶品です。
なので私はこのCDを始めから最後まで何度通して聴いても、飽きることや気持ちが悪くなることが一切ありませんでした。
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲
独奏チェロのフッフロはチェコのチェリストで、一般的な知名度こそ劣るものの、20代から数多くの国際コンクールで1位輝いた実力派。スークトリオのチェリストとしても活躍した。このディスクでは、ドボルザークの協奏曲をチェコフィル/ヴァーツラフ・ノイマンがサポートする、まさにお国ものの演奏。冒頭からチェコフィルの深々とした響きと、細部に渡る楽器のニュアンスの妙が心をつかむ。ノイマン、最高の出来栄えだ。いよいよ、チェロの独奏。その男性的で豊かで美しい響きに圧倒される。微妙なテンポ(アゴーギグ)と間合い。圧倒的な名演だ。こちらもぐんぐん音楽に引き込まる。これほどすばらしい演奏はめったに聴けるものではない。音楽を聴いてこれほど感動したのは久々のこと。
ヴァイオリン協奏曲はドボルザークのひ孫にあたるヨセフ・スーク独奏。僕自身この曲は何種類かのディスクを今まで聴いてきたが、疑いなく最高の演奏。スケールは大きく、スークの音楽性は他のヴァイオリニストが捉えきれないこの曲の内面的な世界に肉薄している。実に内容の充実した演奏で、この演奏によってドボルザークのヴァイオリン協奏曲の魅力を初めて知る方も多いのではないかと思う。
ヘンデル:ヴァイオリンソナタ集
バロック音楽に詳しくない私ですが、ラジオで偶然聞いた時この演奏の虜になり、CDを買いました。
長く聴いている、本当に大好きな演奏です。
甘いヴァイオリンの音で、まるできらきらとした珠を手の上でころがすような、あたたかで幸せな音楽です。
私が持っているのは以前出ていたCDですが、このCDはさらに音質面で向上しているようですね。
割と短い曲が多いので、クラシック音楽初心者(ピアノをソナチネあたりまで習った人)にも十分おすすめできるのではないかと思います。