桂文枝8「莨の火(たばこのひ)」「たちきれ」
文枝さんといえばたちきれ、というくらい有名な演目で、どのCDにもはいっていますし、テレビ放送でも演じられたことが多いです。
こんなこというと叱られてしまうかもしれませんが、ちょっともういいかな、という気さえしてしまうのです。こういう話はあんまり何度もきかされると
良さがすり減ってしまうのではないでしょうか。(文枝さんはやさしくてたちきれの依頼がくると断わったりしなかったのでしょうが…)
このCDはじっくり演じたスタジオ録音で、お囃子もふくめた、文枝さんの「たちきれ線香」の完成型だと思います。
「たばこの火」は、ふらりとあらわれたいちげんのお客が、店にさんざんお金の立替を頼み、それを思いっきり散財するのですが、その人が実は…
というお話です。
このお話は上方のお話かと思ったらけっこう江戸落語のひともやっていて、いろんな人のいろんな演じ方があるようです。
謎のお客のお金のばらまきかたがものすごくて、やりようによっては下品な嫌味がでてしまうお話ですが、このCDで聞くと、「ああ、こういう
味を楽しむお話なんだなあ」と納得がいきます。
文枝さん以外の、上方の大御所のかたたちの「たばこの火」のCDはでてないのでしょうか。検索してもみつからないのが残念です。
随筆 上方落語の四天王――松鶴・米朝・文枝・春団治
噺家さんの映像と匂いまで立ち上ってくる名随筆である。
著者は大阪の芸能、特に落語に詳しい作家。
1963年〈昭和38年)生まれだから大変に若い。
私見と本書についての感想を述べる。
桂米朝師。異論はあろうが、わたしのベストは『地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)』である。
上方落語特有のハメモノ〈お囃し)の華やぎ。はりのある米調子の声、現代的なくすぐり。幽霊のラインダンス
骸骨のヌードショウ。落語は45歳から、65歳までの円熟芸だと語る米朝師。
笑福亭松鶴師。魅力はその声だ。雑多ないんちき臭い声音。これ笑いのフラ。オーラ。
桂文枝師。わたしは小文枝時代に東京で何度か聞いた。女の人を演ずる姿が色っぽい。華がある。
桂春団治師。三代目である。東京で言ったら桂文楽師。きっちりと大s家風を固めている。
他に「大阪の古今亭志ん朝」の1章。
志ん朝師が語る。
「東京で大阪弁が聞こえてくるのが気に入らない。
大阪に来たら大阪弁。京都なら京都弁。九州なら九州弁が聞こえてくるのが一番じゃないですか。
東京の一番嫌いなところは平気で大阪弁が聞こえてくるところです」
あんけら荘夜話
この本は桂(小)文枝さんが、ご自身の来し方を振り返ってまとめた、貴重な記録です。(小佐田定雄さんの聞き書きによるものです。)
同時に戦後の上方落語の歴史の記録でもあります。
文枝さんのいろんなエピソードが読めるのも楽しいのですが、私は「文枝さんがいろんな噺をどんなふうに演じているか」を語っているところが特に好きです。
それを読むとすごく納得がいって、あらためて、文枝さんの落語はなんてすごいのだろう、と感じます。
落語研究会 五代目 桂文枝 名演集 [DVD]
桂文枝の落語は、花柳界の噺が上手くて味がある。明るい口調の中で、ほろりとさせる情緒が何とも言えない。自分の好みだが、11演目の中で「立ち切れ線香」が好きだ。反対に、桂文枝が悪いわけではないが、初めて聴いた「菊江仏壇」は、何とも後味の悪い話だった。「天神山」も良いが、平成紅梅亭のDVDの「天神山」方が噺に余韻が残り、平成紅梅亭の方が優れているように感じた。