ブリキの太鼓 3 (集英社文庫 ク 2-4)
この本を初めて読んだとき、すごい衝撃を受けました。
単なる歴史批判小説だと思い手を出したのですが、そんな領域に収まるものではありませんでした。
文章は隠喩だらけで、完璧に理解しようとしても不可能だと思います。
訳も個性的なので好みは分かれると思いますが、読み終わったあとでこの作者がノーベル文学賞を取ったことにも納得できたし、私は大好きな作品です。
ブリキの太鼓【字幕ワイド版】 [VHS]
戦争にまっしぐらに突き進む時代に、 成長をすることを自ら止めたオスカルによって 描かれる人物描写の様々。
相当に気持ち悪くてシュールな場面が続出ですが、 斜に構えてこんな風に周りを眺められたら ある意味突き抜けられて気持ちいいかも・・・。 なんて思ってしまう不思議な映画です。
ブリキの太鼓 HDニューマスター版 [DVD]
最初に観たのはテレビでした。
水揚げされた牛の首からニョロニョロとウナギ(カンジェロ?)が出てくるシーンが強く印象に残っています。
そして、主人公のオスカル。一体彼って何者?
出産時の記憶があり、奇声でそこら中のガラスを割る能力があり・・・。
何よりも自らの意思で成長を止めてしまえる彼。
シュールでどこかエロチックでグロテスクな世界が広がります。
ブリキの太鼓 1 (集英社文庫 ク 2-2)
この本についてのレヴューを書くことは私には難しいです。
なぜなら、この本に潜んでいるテーマはあまりにも盛りだくさんで複雑だし、
さらにそれが幻想的に暗喩的にと あらゆる巧い(しかもそれが全然嫌味に感じられない)
コーティングを施して表現されているのだから、簡潔に要約することができないのです。
いやぁもう奥が深いというか層が厚いというか。
解説にもあるように 当時の民族問題の暗喩として読むのはもちろんおもしろいし、
心理学的な側面を意識して読んでも楽しめるのではないかと思います。
「三巻もあるのはちょっとなー」という人には、
フォルカー=シュレンドルフ監督が第一部だけを映像化した映画を観ることから始めるのもお勧めです。
ブリキの太鼓 2 (集英社文庫 ク 2-3)
ブリキの太鼓は、グラスが創作した非現実で想像を超えた独特の世界観で構成されている。
例えば、主人公オスカルは3歳で成長が止まっており、外見は幼児だが頭脳は大人である。
またオスカルは、自分の“声”で物体を粉々に破壊するという特殊能力をもつ。
自分の意志を高めることで、ガラスなどを自在に粉砕する。
さらにオスカルはある日、不良グループ一味に取り囲まれる。
オスカルは少年たちにこう言った−「私はイエス(キリスト)である」と。
少年たちのボスは全てを理解し、オスカルを新しいリーダーとして受け入れた。・・・
ここまで書くと、大友ファンならピンと来たはず。
アキラには、見た目は子どもで顔だけが年相応に老化した“大人子ども”が登場する。
彼らは超能力のように物体に手を触れずに破壊できる。
さらに同じく少年の姿をしたアキラは、混乱した世紀末的都市「ネオ東京」で、
救世主として祭り上げられる。・・・
SF世界を矛盾や破綻なく創造するには、
理想と現実とがお互い行き過ぎることなくバランスを保つ必要がある。
絵空事にならずに、なおかつ超現実世界を生み出すには、相当の技量がいるだろう。
子どもの純粋さと大人の成熟との同居や、
人間の欲望の一つである破壊衝動、
それに現実の世界と“神”の奇跡についての関係などを、
破綻なく築きあげたグラスにも大友にも賞賛を与えたい。