ランドラッシュ―激化する世界農地争奪戦
食糧を輸入に頼る国の政府や企業が海外の広大な農地を奪い合うように買収している。あの悪名高きウォーターバロンによる水源・水道インフラの占領の農地版とも呼べる事態が進行している。
日本でたとえてみるなら、海外の企業と日本政府が話しを進めて長野県に匹敵する農地が海外企業に50年以上貸与することが決められ、地元の住民がその企業に安い賃金で雇われる。国内で食料が不足して餓えてもそこで作られた作物は海外に運ばれていく。それってどういう感じなのか。
ランドラッシュを受け入れた国やその住民はどう感じているのか、またランドラッシュを精力的に進める国や企業はどのようにそれを進めているのか。
本書では、新しい世界の食糧・農業事情が、余すところなく語られる。
日本の食料安全保障のためにふんばる個人も紹介されている。
青森の農家の方のことばが印象的だった。
「・・・日本の技を惜しみなく提供して、農業はすごいんだってウクライナ人自身に気づいてもらう。そしたら、日本人に対する『信用』が生まれるじゃない。そういうのって、広がるから。そしたら、食料の面でも互いに助け合える関係が作れるよね、少しずつだけど。それがほんとうの『食料保障』だと思うんだよ。…」
生き馬の目を抜くような国家間の食糧・農地をめぐる競争が繰り広げられている中、日本には“血の通った”やり方で食料・農業に向き合ってほしい。
世界で有数の食料輸入大国日本に住んでいるなら読んでみるべき本。