KATHMANDU
スティーブ脱退後に発表されたオリジナル5作目。
シルクロード体験を下敷きに製作されたスケールの大きなアルバム。
目を閉じればシルクロードが思い浮かぶような
アルバム全体を包む世界観が秀逸。
世代を問わない普遍性は相変わらず。
じっくり聴き込みたい作品。
辺境遊記 ―― キューバ、リオ・デ・ジャネイロ、小笠原諸島、ツバル、カトマンズ、サハリン、南大東島、ダラムサラ
○映画「モーターサイクル・ダイアリーズ」では、若き日のチェ・ゲバラの放蕩ぶりが良く描かれていたが、『辺境遊記』に出てくるキューバやリオでのクダリはこの映画を思い出させた。みんなブッキラボーで親切だ。
○下田さんの似顔が味があっていい。似顔の人が写真にも写っている場合があって、それを探す楽しみもある。写真がまた良い。暑苦しさやゴミゴミ感、アッケラカンぽさの中に全て「本気」が見える。場の持つ本気、気候がもたらす本気、そして本気なヒトビトの本気なまなざし。
○この本の真髄を見たコトバ「行ったからといってその国のことがわかるものではない。しかし、行かなければもっとわからない。どんな空気が流れていて、どんな人が住んでいるのか」帰国後、団塊世代人に偉そうにゲバラのことを聞かれた際の著者の感想だ。頭デッカチになってはイケナイ。
○ショックだったのはツバルの現状だ。ひとつはゴミだらけ、ということ。ひとつはこの国を台湾が支援しているということ。小国でも国連加盟国なので、台湾を認めてもらおう、という作戦のようだ。それと「沈む」ということに対してそれほど悲観的になっていないこと。ひょっとしたらこの国は沈まないのではないか。
○笑ったのは南大東島の民謡のオトッツアン。「子供?何人いるかな。五、六人。わからん」と。実際には七人いた。笑った。いいなぁ〜、こんな生活。
○小田実が生きていて現代版の「何でも見てやろう」を実践したら、この本に近いものになったのかも知れない。『地球の歩き方』の旅人もこれからは『辺境遊記』で事足りる。とにかく笑顔と暑さと人情がタップリのヨカ本です!
憧憬☆カトマンズ
宮木パワー炸裂!
出てくる女子たちは、一見冷めて強くて鈍感なように見えて、実は熱くて繊細でやさしい。
おバカ大卒で上昇志向もなくひょうひょうと生きているけど、仕事はプロに徹する男前。
炸裂するおバカトークが痛快で、心地よい女子友に囲まれているような楽しい読書タイムでした。
最後のエピソードは、ストレス解消するほどのウルトラハッピーエンドストーリー。
まさに、パイナップル餡いり鯛焼きの味。
KATHMANDU
彼女の持ち味としていた上質の短篇小説のような展開が少し陰を潜め、私小説的な味わいよりも曲の個性で勝負しようとした時期と感じ取っているのが本アルバム『KATHMANDU』です。
ミリオンセラーを出すのは当然だという制作会社の雰囲気が彼女の気持ちにのしかかっていたのではないかと思うほど、様々な試みをしています。表題曲だけでなく、エスニック的な香りを随所に取り入れ、一風変わった音楽表現を積極的に取り入れたアルバムだと捉えています。
このアルバムが発売された頃のユーミンのCDは冬の風物詩として定着しており、1988年の「Delight Slight Light Kiss」以来8作続けてミリオンセラーを続けてきた記録も本作品で惜しくも途絶えてしまいました。もっともそのほうが本人の力を抜くのに好結果を生み出したと思われます。21世紀に入ってからのユーミンの活躍を見てもファンは一定のイメージを持ってずっと接してきたわけですから。
曲のタイトルに横文字が増えたのもこの頃の特徴でしょう。
1.KATHMANDU、2.Take me Home、3.命の花、4.Baby Pink、5.Delphine、6.輪舞曲(ロンド)、7.Broken Barricade、8.Midnight Scarecrow、9.クロームの太陽、10.Walk on,Walk on by、11.Waver of Love〜ORIHIME、という流れを見ると、初期の頃の日本語だけで通した曲名とは全く違う傾向を示しています。
個人的には、バート・バカラックの曲のタイトルや伴奏をイメージした10曲目の「Walk on,Walk on by」のノスタルジーを感じさせる雰囲気が好きで愛聴しています。このような60年代を彷彿とするような楽曲を作らせれば随一ともいえるユーミンの真骨頂とも言える作品です。
11曲目の「Waver of Love〜ORIHIME」も和のイメージを追及した好作品で、東洋的な作風はとても印象に残るもので、ユーミンでなければ作れない作品でもありました。