ラッキー嬢ちゃんのあたらしい仕事 (Mag comics)
昔日本でも人気だった、アメリカのテレビドラマを思わせる雰囲気。
ストーリーは女の子のちょっとした冒険ものなのですが、
高野さんらしい軽妙な線と、自在なカメラワークが特徴的。
虫と歌 市川春子作品集 (アフタヌーンKC)
紛れもなく傑作だと思う。なんとも言えない感動に胸が締め付けられる短篇集だ。
正直、最初の二篇「星の恋人」「ヴァイオライト」を読んだ段階では、まだ少し不思議な感触を覚える程度だった。よくある雰囲気モノか、と。
しかし「日下兄弟」を読み終える頃には、完全に心を持っていかれていた。ヒナのひたむきな想いに、思わず目頭が熱くなる。彼女はきっと、笑っていたと思う。
そしてラスト「虫と歌」は禁断の果実だ。まるで、答えを教えられるのではなく、求められているような。涙を流すことに罪悪感すら覚える読後感。これがデビュー作で、その洗練された作品が「星の恋人」だと考えると、あの結末で終わらせることにも納得がいく。
神秘的で科学的。ファンタジックな側面を持ちながら単なる「良い話」に収まらず、ここまで堂々と生命と向き合っている作品はない。時折見せるおかしな掛け合いに和みながらも、大胆に仕込まれた残酷なカラクリが、無性に切なさを掻き立てる。虫や植物などを通して描かれているが、どうしようもないほど人間の物語である。
若者よ、ケータイ小説で泣いてる場合じゃないぞ。
絶対安全剃刀―高野文子作品集
短編集である。
物語のスタイルや掲載誌もバラバラで、“高野文子作品”であるという以外には、何も共通点はない。
国籍不明の場所、子供のころに見た場所、普通の茶の間、でもそこには絵だけでは表現できない、文字だけでも表現できない、漫画だけが持つ力があふれている。
老人の“ぼけ”という深刻なテーマを扱った“田辺のつる”は発表当時から大変に評価が高いが、個人的に一番好きなのは、観音様と死んでしまった少女の話。
わたしが死んだら、あんな観音様が迎えにきてくれないかなぁ。
とにかく、読んで!
棒がいっぽん (Mag comics)
まるで両親の若い頃のアルバムを見るような、自分は直接体験していないのに記憶のどこかが知っているような、快い懐かしさでいっぱいにさせてくれる本でした。やっぱり高野文子最高!
Endless game of Cat and Mouse
現在各種セッションで八面六臂の活躍を続けるギタリスト鬼怒無月(キド ナツキ)に、高良久美子(vib.他)、大坪寛彦(b他)のアコースティック・インスト・トリオの初作。
ジャケ帯にソフト・サイケデッリク・ミュージック何て書いてあるけど、このCD、店頭だとどこの棚に置かれるのだろう。発売元があやど某と同じで、メンバーのキャリアからすればジャズのコーナーか?もっともジャズファンは手を出しそうにないけど。ただしクリシェにまみれた凡百のジャズ作品に比すれば、メンバーによる楽曲はどれもユニークな魅力に溢れ、パーカッションを含む各楽器もよく鳴り歌っている。
ところで本CDのカヴァーアートは高野文子なのだが、これが中身の音楽にぴったりなのだ。高野あるいは奈良美智あたりの作品~日常のありふれた風景がいつしか非日常にすり替わる不可思議でどこか懐かしい世界~が好きな人にはおすすめだ。あるいは部屋の隅にさりげなく置かれた、ポップな現代アートのオブジェがしっかり自己主張しているようなものか。つまりこのCDの中には、とてもオリジナルで魅力的な世界があるということ。