戦国おんな絵巻 (光文社文庫)
この本のタイトルは「戦国おんな絵巻」であるが、内容は「歴史上のおんなよもやま話」という感じで、複数の歴史上の女性にまつわる話をまとめたものであり、面白く気楽に読めるが、中身はなかなか濃い。歴史をおんなという裏舞台から検証すると、当時の歴史上の人物像や出来事の背景が掴め、歴史をより深く理解できる。徳川秀忠のイメージも大きく変わりました。永井路子さんの本はほとんど期待外れがない。
乱紋〈上〉 (文春文庫)
作者もはっきり言っているように、「歴史小説」と「歴史実録」は違うと言うことを良く認識した作品です。
狂言回しをするおごう付きのおちかにしても、要所要所で重要な役目を果たすちくぜんと言う謎の男にしても、いずれも作者の創作でしょう。
さらに言えば、三姉妹の見事な三様の性格付けにしても、作者の「物語」の構成上必要とされるものでしょう。
そうした「歴史」に対する作者の味付けが、見事に結実しているように思います。
三姉妹のそうした異なった性格と嫁ぎ先と言う運命が、この「歴史」の中で三姉妹を躍動させています。
とは言うものの、おごうと言う人物について、今まで全くと言っていいほど知らなかっただけに、その沈黙の奥に秘めたものを持った、ある意味頑固な生き方が、姉二人以上の人生を送らせた様に思えます。
同様に、二代将軍徳川秀忠にしても、家康と家光の間にあって、影が薄い存在に感じていましたが、家康の影に隠れて、徳川三百年の礎を築くのに重要な役目を果たしたことを再認識しました。
この二人の「歴史」の中で、それほどの輝きを放っていない夫婦の
「歴史」に果たした役割は、今まで思っていた以上に大きなものがあったのかも知れません。
エンターテイメントとしても非常に楽しい作品でしたが、「歴史」を改めて考えるいい機会になりました。
乱紋〈下〉 (文春文庫)
よく、ドラマや本でみる、気の強いお江ではなく、ゆったりとした人物として描かれています。そこが,すごく読みごたえがあります。お江の人生を、お茶々 お初と比べてみるのもいいでしょう。
山霧―毛利元就の妻〈上〉 (文春文庫)
毛利元就の正室妙玖の視点で書かれた小説です。
残された手紙等の資料の中から、妙玖という人物は元就にとってどういう存在であったのか、夫婦の会話を中心にして話が進んでいきます。
政略結婚ではありますが、互いの意思を尊重し合い、大内と尼子という二大勢力の狭間で生き抜いていく姿が印象的です。戦国時代の女性の立場というのは決して低いものではないのだというのが好ましく感じました。
全体として淡々とした進行ですが、そこに絡む人の様々な思惑を丁寧に描写してありますのでぐいぐいと話に引き込まれます。個人的には楽しく読めました。
ただ、このあたりは好みもあると思いますので、それを差し引いて評価を星4つです。
NHK大河ドラマ 毛利元就 完全版 DVD-BOX 第壱集
見る前は、毛利家のホームドラマ大河と聞いていたので正直あまり期待はしていなかったんですが、
毛利一族とそれを取り巻く人々を中心として進むホームドラマ要素と、前半弱小領主として近隣の有力大名・大内家、尼子家と渡り合い、
後半は弱小領主から謀略を駆使して中国一帯を支配するまでを描いた戦国要素がバランスよく織り交ぜられていて
最後まで楽しく観る事ができました。
毛利家を取り巻く女性陣の中でも、元就の妻の美伊などは元就がこぼす愚痴を聞き、叱咤する事はあっても
決してでしゃばる事はないので好感が持てますし、なんといっても元就の育ての親である杉と、杉に仕える侍女の久のやり取りが
面白かったですね。毛利家の外部の敵となる尼子経久・陶晴賢や、内部の敵である井上元兼なども見ごたえある悪役に描かれています。
ただ後半美伊や杉が亡くなった後の毛利家を取り巻く女性陣に少々魅力が感じられなくなったのと、予算がなくなったのか厳島合戦が
スタジオ撮りだったりしたのは残念でしたね。よく言われていますが最終回の内容も唐突で「何じゃこりゃ」と思ったのは事実です。
ですがそれを補って余りあるほどの前半の魅力溢れる毛利家の人々と、それを取り巻く近隣大名との攻防が面白かったのは間違いないです。
最近は戦国時代を扱う大河ドラマは何かとホームドラマ要素に重点がおかれがちで、必要以上に女性を活躍させる傾向が目立ちますが
この作品はホームドラマ要素を扱いながらも、女性を必要以上に活躍させることなく、魅力的に描いている作品です。
自分としては一番理想的な戦国ホームドラマ大河ですね。