夕凪の街桜の国
「夕凪の街」では、原爆の惨禍の中で生き残った被爆者の苦悩や思い、「桜の国」では、自分のルーツや社会的立場を見つめ直す被爆二世を中心に描かれている。被爆二世と言っても健康状態や置かれている立場、考え方等は様々であり、偏見を与えることなく描写することは大変難しいと思われるが、この作品では、多くの被爆二世に共通するであろう悩みや問題が、主人公 七波の様々な思いや心のゆれを中心に的確に描かれている。物語は被爆二世が受ける結婚差別にも触れている。描き方によっては差別の助長につながりかねないが、そこは、被爆二世である凪生の恋人 東子を含め、問題にきちんと向き合い、乗り越えていく主人公達の姿を描くことで、しっかりフォローされている。
東子は両親に凪生との交際を反対されるが、広島の平和資料館を訪れ、被爆者問題への理解を深め、認識を新たにしながら、凪生への愛を貫く決意を固めていく。
21年前(結婚する前)、妻と広島を旅し、平和資料館も訪れた。被爆者、被爆二世の問題を理解し、納得した上で結婚してほしかったから…。この作品を読んでいたら、その時の記憶が鮮やかによみがえってきた。あの時の妻は、きっとこの作品の中の東子そのものだったのだろうと思う。
一般の人にとっても、被爆二世にとっても、被爆者、被爆二世の問題、…核、核兵器の問題を改めて見つめ直し、向き合っていくきっかけになる、大変すぐれた作品だ。
この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)
上巻を読んだ時にも思いましたが、物語の舞台が、昭和20年、広島県であることをのぞけば、見合いで初めて出会って夫婦になり、家族になった人々の日常を描いた、ホノボノするいいお話なのです。
特にこの中巻は、上巻に出てきた主人公のほのかな恋の行く末と、旦那さんの結婚前の恋物語の描写が素晴らしく、恋愛漫画としてもとってもよい出来です!
そんな調子なので、戦争映画に出てくるような、「非日常」の描写は意外なほど少なく、本当は戦争というのは、今の我々と変わらない日常の縁続きにあったのだということがよく伝わってきます。
戦争の恐ろしさを描く方法には色々あると思いますが、これだけ丁寧に日常生活を描くことで、逆に戦争の恐ろしさがにじみ出ています。
異常事態は映画のようにファンファーレが鳴って始まるものではなく、日常生活の隣に潜んでいて、気がつくと巻き込まれていたという方が正解なのかもしれませんね・・・
夕凪の街 桜の国 [DVD]
とりあえず出てくる感想は
「すごい」
の一言である。
賞賛以外でてこない。
原作のマンガが非常に独特の雰囲気を持った作品で
好きな作品であるが故に
映画化されていたのはもちろん知っていたが
なかなか見る気にならなかった作品であった。
が、今は劇場へ見に行かなかったのを後悔している。
「反戦」をテーマにした映画は世界各国でいろいろと作られているが、「反核」を訴えるのはやはり日本からでないといけないと非常に強く感じた作品である。
物語が、終戦から13年たった広島から始まるということで直接的な、「惨状」が描かれることはほとんど無いが、逆にそれが「核」の恐ろしさを強く感じさせる事になっている。
原作のマンガが短編であるため、内容的に削ることはまったく無く、逆に構成を変え、膨らませている。
ただ前述した「独特の雰囲気」は出ていない。これを求めるのは酷であろう。マンガだからこそ出来る演出だとおもう。逆にそれを切り捨て、映画としての完成度を上げたのではないかと思う。
ストーリーについて、あれこれ言うつもりにはまったくならない。ともかく日本人なら見るべき作品であると言い切ってしまいたい作品である。
ちなみに私の中の「映画で号泣ランキング」が塗り替えられた。これをこえる作品は出ないのではと思う。
この世界の片隅に(前編) (アクションコミックス)
前知識無く書店平積になっていたのを見かけて購入。
帯にドラマ化8月5日放送とあり、俳優の格好が軍服だったので、
戦中の話なのだろうとは思ったが。
導入部とも云える前半二話は、ちょっとファンタジーが入り混じった
主人公の幼い日の記憶。そんな感じでふわふわと物語が紡がれるのかと
いうと、そうでもないのだが、前編は比較的緩やかに当時の情景が
描かれている気がする。後編は、徐々に戦争の現実が主人公の日常にも
突きつけられることになるのだが、理不尽と絶望の固まりのような
戦争というテーマを、それ一辺倒ではなく、非常時の中でも日常を
精一杯(そしてチャーミングに)生きる主人公とその周辺の描写は
素晴らしく、だからこそ、その中で起こる不幸な出来事にも、
ちょっとした笑い話にも深く感情移入できるのだと思う。
鬼いちゃんがどこかで生きていることを願う。
Town of Evening Calm, Country of Cherry Blossoms
How were the ordinary people's lives under the bombing in HIROSHIMA? How were they completely destroyed and changed by 'one new bomb'? In what way does its still keep affecting the people physically and mentally even till today?
This manga clearly describes these sad facts, not in a hysterical way but in an incredibly calm and beautiful way. But all the more for so, the pain of the people sticks to the readers' soul even deeper. Definitely a masterpiece. Must be read by lots and lots of people in all nations.