Our Bright Future
鮮烈にして辛らつな”Fast Car”のデビューから20年。アルバムのタイトルは”私たちの明るい未来”。皮肉か、悔恨か?表題曲では”Fast Car”とほとんど同じことが唄われている。「未来が明るかったのは昔のことよ」と唄われている。つまり20年間、何も変わらなかったか、あるいはさらに悪くなったか。。。「理論的に言えば、私が間違っている可能性は常にある」。
後方を固めるのはスティーヴ・ガッド、ラリー・レヴィン、ジョーイ・ワロンカーなど「すげーなー」という布陣だ。それだけ彼女の唄は静かにアメリカ人の心を打つということだろう。
冬の夜に聴くと、染みる1枚だ。そしてこの冬、合衆国初の黒人大統領が誕生する。「未来が明るいのは、それが未来だからだ」と言える世界になるように、そう思いながら聴いてください。
New Beginning
フォークで癒されたい方、これがうってつけのアルバムです。特にat this point in my life最高です。UK、US等、世にバラードは数々あれど、個人的に一番好きな曲の一つです。トレイシーのアルバムとしても頂点かな?と思います。
Where You Live
はっきり、暗いです、重いです。でも決して後ろ向きでもネガティヴでもありません。聴いていてむしろ前向きになれます。一見矛盾するようだけど、それはただ、彼女が素直なだけであり、そしてそれを聴く側が素直になれるから、のような気がします。大物の新作ラッシュの中でひっそりとリリースされた感のあるこの1枚。それはそのまま、このアルバムの存在意義を表しているのかもしれません。ひっそりと、しかし確かな手応えで、合間あいまに長く聴いてゆけるアルバムに出会えました。
トレイシー・チャップマン・コレクション
初めて聴くと今世代の曲と違い音数も少ないし、
曲調も穏やかで地味にすら思うかもしれませんが、
ものすごく印象に残りました。
Telling Stories のリフなどは
日本のアーティストにもちょっと影響を与えたのではないでしょうか。
独特の声で歌いあげるその歌詞には、思いがこもっていて
この人は何のために歌っているのかをよくわかっているなと
感じさせてくれます。
Give Me One Reasen もいいですが、
最初の Fast Car がお気に入りです。
Crossroads
ファーストから1年半経った89年10月のリリースされたTracy Chapmanのセカンド・アルバム。ファーストと同じくDavid Kershenbaumがプロデュースしています。クレジットされているミュージシャンの人数はかなり多く、有名なところではなんとNiel Youngが最後のトラックにピアノとギターで参加、またディランの"Desire"やRolling Thunder Revue Tourへの参加で有名なヴァイオリンのScarlet Riveraも参加しています。アルバムで使用されている楽器は前作より多彩で、意外なところではマンドリンやバンジョまで出てきます。これは純粋にそのオトを必要としただけでなく、白人音楽を代表するカントリー以外で使われることのないこの楽器を「白人と黒人の融和」というイメージで敢えて付け加えたものかもしれませんね。歌詞はファースト同様の社会的なものもありますが、内省的な作品が増えています。
曲としては前作品同様に完成度が高いのですが、前作品に満ちていたような緊迫感はそれほど感じられません。アルバム全体の印象としてはファーストよりぐっと明るくなっています。ファーストの世界を期待して聴くのも勝手なんでしょうが、その辺がちょっと不満だったりします。結構いいアルバムなのは確かなんですけどね。