高砂コンビニ奮闘記 -悪衣悪食を恥じず-
あの超売れっ子作家の「東野圭吾」さんと「江戸川乱歩賞」を同時受賞したし、自主出版以来10年振りの商業出版と元々作品の評価が高かった作家が極貧生活を続けついに「コンビニ」で働くというすごいインパクトで思わず手に取った本です。
客単価が小さい割にクレーマーといわれる客に理不尽なまでに罵倒される姿は(森さんは負けていませんけれど)身近にいくらでもある「コンビニ」どこにでもある光景なんだろうなと思わされます。
ただ、森さん自身の「性格」もあり「生きにくい人生」を送っていらっしゃるなぁ・・・。読んでいるこちら側の心ががドーンと重くなってしまうような気分にもなりますが元々の賢さとユーモアも持ち合わせている森さんの作品です読んで損は絶対ありません!!
この「作品」がもっともっと多くの方に届くようにお祈りしたい気持ちです。
化粧槍とんぼ切り
ほとんどの方が本多平八郎忠勝と聞いても誰?と、 言う返事が返ってきそうですが、徳川家康はご存知 ですよね。その家康公の天下統一のために全身全霊 を打ち込んだ「本多中務大輔平八郎忠勝」は、“徳 川四天王”“徳川十六神将”とうたわれた猛将なの です。武田軍の落首に「家康に過ぎたるものが二つ あり 唐の頭に 本多平八」とありますが、その生涯
57度の合戦において切り傷一つ負わなかった槍術 の達人でした。ご愛用の名槍の号は「とんぽ切り」 と言われ、とんぼが槍先にとまったとたんにヒラリ と二つに切れてしまうほど切れ味が鋭かったそうで す。この名槍「とんぼ切り」が一つのキーワードに なって繰り広げられるこの時代小説は、秋の夜長を 幻想的に過ごさせてくれます。本多忠勝公ファンは
無論の事、歴史好きな方には特にお勧めしたい一冊 です。読み終わって、白檀のお香を焚いている貴方 の姿が見えるようです。
鐵のある風景―日本刀をいつくしむ男たち
森雅裕さんの著作がお好きで、この本の題名から受ける印象で敬遠なさっていらっしゃる方がいるとすれば、「それは、もったいないっ!」
本書は2部構成で、前半は森さんが苦心して選び取材なさった刀工、職人の方の紹介(紹介というよりも森さん本人の言葉にもありますがオマージュといった趣)、後半は、その取材日記などがエッセイ風にまとめられている上に、「推理小説常習犯」のような森節(勝手に名付けて失礼)をも堪能できる1粒で2度も3度も美味しい(という言葉は本書の内容の重さには相応しくないかもしれませんが)重量級の力作です。
また前半の3分の1は、森さんの著作「鉄の花を挿す者」のモデルになっていると思われる刀工、大野義光さんの紹介にあてられ「鉄の花を挿す者」がお好きな読者には興味深い読み物になっています。とりあげていらっしゃる職人の方々への真正面からの敬意が気持ちよく、また、そこにご自分を投影なさっていらっしゃるようなものも感じられて、森雅裕ファンにはたまらない一冊です。
ワタクシ自身は刀剣についての知識などなく、この本がその方面でどういう位置付けになるものか皆目わかりませんが、人間的魅力に溢れた書物で刀剣に馴染みがない方でも楽しめるのではないか、と。