完訳 緋文字 (岩波文庫)
真相は闇の中。読者の読み方次第でどんな受け取り方もできる作品。個人的には牧師の立場になって読み進めていた。自分の物語の真相はありますが、ここで書くのはルール違反なので書きませんが、物語全体に流れているのは牧師の苦悩でしかないと考えるからです。緋文字を胸に付けた、母親とその子供の生活はそのまま全て牧師へ注がれる。清教徒社会の中での彼の立場、苦悩を思うと、それも7年間、胸を打たれます。現代社会ではありふれた話であるかもしれませんが、社会の在り方で人間の苦悩は際立ってくる。その苦悩を背負いながら牧師は「牧師」という職業をまっとうしようとしている。その相反した行動によって、牧師は「牧師」となっていく過程なんかは、悲しすぎる話である。男と女、そして社会との繋がりを考える上で一つの視点を与えてくれる1冊です。
魔女裁判 DVD-BOX
ミステリ小説などもよく読むので、物証や物語の展開から犯人を予想し当てることは得意なほうだと思っていたが「魔女裁判」でその自信は見事に粉砕した。
『裏切り』の要素を使い驚きの連続で盛り上げていく作品は数多くあるけれど、本作品はその中でもトップクラスに入る。
しかし、最後までだまされ続けていたが、このドラマで言わんとしていたことは少しだけ感じることができた。
それは、「中間で見ることの難しさ」と「一票の大切さ」だ。
裁判員になってしまったら「中間で見ること」を余儀なくされる。
しかし、それを要求することはそのことに慣れていない民間の人間には酷なことだ。
そうすることが仕事の裁判官でさえ時には間違ってしまうこともある。
だからこそ「裁判員になんてなりたくない」という人が多いのだが、好むと好まざるに関わらず「裁判員」に選ばれることはある。
このドラマでは「裁判員になったら中間で見ることが必要だから覚悟しておけ、慣れておけ」と言いたかったのだと思う。
若者を中心に「政治離れ」が進みそれを反映するように「選挙投票率」も下がり続けている。
「政治家なんて皆同じだし、選挙の一票なんてたかが知れている」と思う人が多いということだろう。
このドラマでは「そんなことはない。一票の持つ力は大きいんだ」と伝えたいのだと思う。
放送中に見ていない人はDVDがでたらぜひ見てもらいたい。
そして、「裁判員になった時の覚悟」と「一票の大切さ」を持ってもらいたい。
クルーシブル (初回限定生産) [DVD]
かの有名なセイラムの魔女裁判を舞台にその禍々しくも馬鹿馬鹿しい全貌を、見事に表現している良作。
とくにキリスト教の名の元に権威を備えた異端審問管の持つ良識と宗教的な常識の矛盾ぶりというか葛藤ぶりも適度に表現されていて、非常に面白い。いかにもすぎて、しばしば怒りがこみ上げてしまうほどだ。
ストーリーも魔女裁判の全貌を邪魔しない程度に抑えた内容でありながら飽きさせない内容になっているし、とりわけ集団ヒステリーの描写は最高。少女達が口を開けて「あ〜〜!あそこ」と叫ぶ姿は期待どおりのできばえ。
また、何よりも映画として成立しているし、演技もしっかりしているし、この時代の愚かな行いが、いかなるもので、いかなる心象風景のもとで展開されているのかも伝わってくるため、私の周りでは必ずしも好評ではないが(もちろん低評価でもない)、個人的におすすめの名作。