Loveless
今までなぜか聞くのをスルーしてしまっていたこのバンド。
いざ聞いてみると、最初はまったく衝撃がこなかった。
というか、音の揺らぎを心地よく感じていなかった。
何回が繰り返し聞いていると段々その魅力に気付き始めた・・。
とてつもない力に溢れた作品だという事に気付いた。
恐らく「When You Sleep」は聞きやすい曲なので
最初に気に入ったと思う。
しかしこのアルバムの中で、個人的にやばすぎると思うのは、
ダントツで「To Here Knows When」だと思う。
凶暴でいて繊細なノイズ、音の揺れと
ひっそりと漂う女性の声・・・。
それが延々と続く、やられました・・。
歌詞もやばい、抽象的な詩で音と合っていて、
ものすごい風景が浮かびました。
このアルバムに出会えてよかった!
また名盤をひとつ知ることができました。
ラヴレス
ケヴィン・シールズという人の異常なまでの探求心を感じ取れます。
エフェクターやサンプラー、打ち込み等を取り入れ、長時間スタジオにこもり、
納得のいくまで何度もとり直したと言われる本作は、スタジオのレンタル代や
機材の費用でインディーズ・レーベルであったクリエーションの財政をかなり
深刻なものにしたそうです。
その後。クリエーション側はマイブラをメジャーレーベルに渡してしまいます。
浮遊感漂う囁くようなヴォーカルに、アーミングによる揺らぎを利用し、
異次元に迷い込んだような雰囲気のギター・ノイズは奥行きや広がりを感じさせ、
何とも言えない不思議な世界観を持ってます。
前作Isn't Anythingも非常にサイケデリックで、“向こう側”に踏み出して
いましたが、このLovelessでは完全に“向こう側”の最奥に入ってしまっています。
メロディもかなり洗練されています。
1曲1曲の雰囲気は私自身の貧弱な語力ではとても表現仕切れないです。
ただただ綺麗だと思います。
そしてこれが91年に作られたということ自体がかなりスゴイことだと…
圧倒的な完成度を誇る90年代を代表する名盤だと思います。
ブラッディ・バレンタイン 完全版 3Dプレミアム・エディション (初回限定生産) [Blu-ray]
1981年『血のバレンタイン』のリメイクとなるが、そちらは未見。
今回のリメイク版はアトラクション感覚。
CGやVFXなど特殊効果の進化ゆえに、得体の知れない恐怖が襲ってくる怖さは感じられない。
特殊効果の未発達な部分を演出で工夫していた時代の作品に比べると、怖さよりもショッキングな映像ありきの印象を受ける。
しかし、オリジナル版を背景とした3D映像で体験するアトラクションとしては十分楽しめる。
劇場やテーマパークとは違い、家庭用はアナグリフ方式(赤・緑/青)の3Dの為、本来の色調とは異なるが、そこは割り切って。
思わずよけてしまう程の3D ではないが、BDの高い解像度により立体感と奥行きは十分に味わえる。
高い臨場感と表現した方が近いかも知れない。その点ではパッケージとして十分に成立していると感じる。
音声は、英語がTrueHD7.1ch、日本語TrueHD5.1chで収録。
家庭用3D ソフトでは字幕を追うことが困難な為、吹替えもロスレスで収録している点は素晴らしい。
前半、サラウンドが大人しく油断していた辺りで急に後方から物音が聞こえ驚かされた。
感の良い方であれば途中で犯人が判明してしまう描写もあり、ストーリー展開自体は軽め
の為、同封の2D版は余り価値がない様に思える。
あくまで3D前提の作品。
エンドロールで延々と深く暗い炭鉱の中を進んでいく映像が一番恐ろしい。
マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン Loveless (P‐Vine Books)
名盤『ラブレス』の制作過程を軸に、バンドの結成から昨年の再結成前までの歴史を綴った本。
遅々として進まない『ラブレス』のレコーディング風景と時間経過、
サウンドの秘密(もちろんレコーディング専門誌ほどの詳細があるわけではないが驚く)、
アラン・マッギーとバンドとの間の緊張感、
ケヴィンとビリンダの関係性などは、
外枠は知っていたが、その詳細は長い間ヴェールに包まれていた部分である。
200ページ足らずの本なので、分厚いアーティスト研究本と比べればライトなものではあるけれど、バンドメンバーの言葉を交えたそれは、レコードを聴くだけのファンとしては興味深いことばかりであった。
狂信的とも言える著者の思い入れたっぷりの文章は、このバンドのファンには同胞意識が感じられ微笑ましい。
しかし、その分バランスを欠いた所もあり、『ラブレス』に影響を受けたラファエル・トラルの『ウェイヴ・ワールド』への言及部分などはあまり必要ないところでもあると思う。
日本版の巻末には、『ラブレス』発表直後のケヴィンのインタビューが載っている。
当時はアルバム発表のよくあるインタビューのひとつだったと思うが、
アーティストとして「表現」をすること、音楽的に影響を受けたもの、バンド名への思い(笑)が語られ、『ラブレス』が歴史を作った現在の視点から鑑みると、更に興味深い発言として映る。そしてこの本の本編に足らなかったと感じる部分を、このインタビューがかなり補完してくれている。
200ページ足らずでこの装丁としては、この値段はちょっと高い気がしますが、
やはりファンなら一度は目を通しておいていい本だとは思う。
これを読んで、改めて、彼らの活動再開をまだまだ待とうという気になった。
Isn't Anything
さすがシューゲイザーの代名詞、マイブラ。
近作の音作りは唯一無二ですが、「ライブバンドではないな」とも思わされました。
「ラブレス」はどの曲が欠けても成り立たないイメージを持っていますが、このアルバムはなにやらごちゃごちゃしています。
これがマイブラが生み出すサイケデリアなのかもしれませんけれど。
いい意味で評価しづらい一枚。