悪魔の調べ〜ミステリー映画の世界〜 金田一耕助映画ベストセレクション
77年に東宝レコードから発売された同名レコード、金田一耕助映画のサントラ+カバー音楽集の復刻CD盤。
東宝原盤の「悪魔の手毬唄」「獄門島」はサントラ、角川の「犬神家の一族」松竹「八つ墓村」ATG「本陣殺人事件」はカバー。
「本陣殺人事件」はサントラ未発売で、なんと音楽は、映画監督の大林宣彦によるもの。
これらに加え、CD化に際して、「女王蜂」「病院坂の首縊りの家」のサントラを数曲ずつ追加収録しているので、
当時の金田一映画の音楽を一挙に聴けて、また、各東宝作品はメインの曲のサントラをまとめて聴けるのが特長です。
サントラではないカバー曲も、東宝スタジオオーケストラの演奏により、他の東宝作品風になっているのも面白いです。
獄門島 [DVD]
感動、という点では前作"悪魔の手毬唄"には及びませんが、こちらも相当の名作。 娯楽性と完成度という点においては"犬神家の一族"をも上回っていると思います。 殺人の犠牲者たちの描写がもっとも華麗(?)に映像化されているのは本作です。あの生首が宙を舞うシーンは、子供の頃見ていたら絶対トラウマになっていただろうな。
この作品で特に光っているのは若かりし頃の大原麗子さん。 私と同世代の大部分の人間にとって、大原麗子という女優さんを知ったのはNHKの大河ドラマ"春日局"を通じてだったと思うのですが、この作品では彼女はまだ20代。 長い黒髪とやや低めの声が本当に魅力的です。 それから、あまり話題に上ることがないようですが、"犬神家-"に続いて二度目の登板、坂口良子さんが最高にカワイイ! 大原麗子さんが憂いを含んだ深窓のお嬢さんなら、こちらは元気いっぱいの庶民派おねえちゃん。
ほかにも、レギュラー脇役陣の一人、草笛光子さんの女歌舞伎舞台もバッチリ決まっているし、司葉子さんの清楚さ、大地喜和子さんの憎憎しさ、デビュー後間もない浅野ゆう子さんのクレージーな力演など、美しい衣装に身を包んだ女優さんたちの活躍が目立つ一篇です。
悪魔が来りて笛を吹く (角川文庫―金田一耕助ファイル)
個人的には「獄門島」と並ぶ著者の最高傑作である。最初に読んでから25年以上経っているのだが何度読んでも飽きない。
著者の“推理”小説で扱われる題材は、古い因習が色濃く残る農村(岡山・長野)、戦後の没落貴族の血の因縁を描いたもの、そして東京を舞台にした一般人?を扱ったものの3つに分類されるが、中でも最も陰惨なのが没落貴族を描いた作品である。その代表的な作品が「仮面舞踏会」とこの「悪魔が来りて笛を吹く」であろう。前者もいい作品なのであるが、やはり推理小説としての出来が素晴らしいのは本作である。数多く張り巡らされた伏線が良く練ってある。言葉のイントネーション、登場人物の発する一言、小物の使い方、どれも素晴らしい。そして何より最後に明かされる「悪魔が来りて笛を吹く」の“意味”…。
著者の作品の特長の一つはセリフを読んだだけで誰が話しているのかがすぐにわかり、その人となりまでも表現してしまう“会話体の上手さ“である。これが作品を魅力的なものとしているのだが、この作品ではその特長が際立っている。この事件の捜査は東京と関西(神戸・淡路島など)をまたにかけて行われるのだが、東京からきた刑事(あるいは金田一)と関西弁を話す旅館の女将の会話などは素晴らしい。
金田一耕助は名探偵ではないという意見は結構ある。否定できない部分も確かにあるが、これ程数多くの人に愛された探偵はいないのではないか。
すでに古典とされる作品であり、粗探しをすればないこともないが、日本的な設定やトリックを描き続けた作家横溝正史が生んだ傑作の一つである。