六番目の小夜子 第2章 [DVD]
印象的な”ドンミノドミナス!!”という女性コーラス(超怖い)から始まる小夜子。
小夜子の音楽は、本当に怖くて素晴らしい。いやがおうにも期待が高まります。
5~8話は、1~4話の小夜子恐怖編から思春期苦悩編に突入という印象。
とにかく主人公鈴木杏ちゃんも、怖い転校生栗山千明ちゃんも、体の弱い美少年山田孝之くんも、悩む悩む!!
しかし、悩む中で文化祭のどきどきする高揚感があったり、中学2年の時にしか分からない風景があるのが素晴らしかった。
個人的にはBGMが変わる7話がおすすめですが、どの回も中だるみせず面白いです。かって損ナシでしたよ。
不連続の世界 (幻冬舎文庫)
「不連続」をテーマとした全5編の短編小説。
既作「月の裏側」の登場人物の一人である、
塚崎多聞が主人公として活躍するミステリ。
既作を見る必要は全くありません、既作で名前だけ登場した
奥さんも登場しますが、おおそんな名前だったな!
と思うくらいです。
恩田陸の作品で、一人の主人公を置いた連作短編といえば
「象と耳鳴り」を思い浮かべるが、
本作は似た雰囲気ながら、より「月」に近いSF感がある。
5編の中で最も気にいったのは、
聞いた人が死んでしまうという歌を追うミステリ「悪魔を憐れむ歌」なのだが、
この作品は上記「象」の一編「ニューメキシコの月」に非常に通じるものがある。
また本作は日本各地を転々とするが、
「まひるの月を追いかけて」の紀行情景描写、
「ユージニア」のノスタルジーも随所に見られます。
各短編の発表の幅が8年近く空いているだけに、
そういった移り変わりや比較も出来るんだろうと思う。
ここに挙げた既作のどれかでも好きな人なら、
かなり直撃の作品ではないでしょうか。
「象」が大好きな私としては久々のヒットでした。
…ただ、上記に「月」を見てなくても大丈夫とは書いたが、
それは同時に主人公は多聞である必要はあったのかなとも思った。
まあでも…最終章などは「象」の関根多佳雄ではきついかな。
「おまえ、多分『嫌な予感』が他人よりも発達してるんだよ。
無意識のうちに、何かが起こることを予感していて、知らず知らずのうちに身体が反応しているんだ。」本文264ページより
夜のピクニック (新潮文庫)
淡々とした物語展開なのに、どうしてこうも飽きずにいられるのか。
それどころか、どんどんその世界に引き込まれていく自分に気が付く。
歩行祭というただ長い距離を歩くだけの行事で、
こんなにも世界に奥行きがでるとは思っても見なかった。
登場人物たちの設定もきちんとされており、小ネタもちりばめられ、
最後にはそれら総てが手を結び、一つの作品をきちんと形作っている。
登場人物たちが抱える悩みも、どうしようもないふざけた感じの考えも、
それなりに自分達も違う場面で似たようなものに出くわすような納得のいくものである。
「みんなでただ歩く。ただそれだけのことが何でこんなに特別なんだろう」
貴子たちと一緒に歩行祭に参加して、
青春時代の自分に戻ってみるのもよし、同時進行で青春を共有するのもよし。
この物語独特の世界に触れて、いっそのこと深く浸ってみてはいかがでしょう?
心地よい、のんびりした時間が、この本には流れていると思います。
この機会に、ぜひ。
ブラザー・サン シスター・ムーン (河出文庫)
恩田さんらしく、細かな描写はうまい。
リアルな青春のようなものをきれいに切り取っていると思う。
バンド関係の描写に関してはかなり資料にあたられたんじゃないだろうか。
でも、正直退屈でした。
延々と3人それぞれの心理描写が続いて行き、ストーリーラインらしいものは特になし。
ひとり分ならまだいいんですが、これを3人分やられると、3人目には少々食傷気味。
1人目の女の子は明らかにかなり恩田さん自身を投影していると思われるのですが、
その女の子をちょっとアイドル的に描いているのが…
恩田さんの心理描写がかなり好きで、それだけで1冊読んだって構わないという方にはおすすめ。
ピクニックの準備 [DVD]
映画『夜のピクニック』のためのスピンオフ企画として、本編で語られる歩行祭の前日を登場人物に合わせて9本のショートフィルムにまとめた作品。
映画や小説は言わば、一つの世界の一カ所を切り取って表現しているわけで、「夜のピクニック」で語られた歩行祭があればその世界には当然前日譚も後日譚もあって当然なわけです。ところが、ほとんどの作品の例えば「2」が面白くなかったりするのは、「1」で切り取っていた部分が曲で言うサビみたいなもので、前日譚や後日譚は切り取り方が下手だと見られたもんじゃないような作品になってしまいます。この作品はその切り取り方が実に巧い。
特筆すべきは、主人公と言っても良い3人を除いては本編とは違う監督が作品にしていること。それも本編のテイストをぐちゃぐちゃにすることなく、それでいて「遊び」の部分を許している(「序奏」なんていかにも「彼」らしい妄想で良いですね)あたりが単体作品としても充分評価できると思います。
原作があるとは知らずに観たので評価を下げるかどうか迷ったのですが、原作があってもこの映像だけで充分本編に興味を持てるだけの出来だと思ったので結局☆5つに。原作を読んでいない人、映画を見ていない人は対象にしていません。
あぁ、また原作読みたくなったなぁ。