日本中枢の崩壊
古賀氏は経産省現役官僚でありながら、民主党政権による国家公務員制度改革の後退に関する言論を批判的に展開してきました。結果、古賀氏への圧力は強まり、氏は1年以上もの間、「大臣官房付」という窓際ポストに置かれています。古賀氏は2010年10月15日の参議院予算委員会で、天下り根絶を進めるべきだという持論を述べました。
古賀氏の論旨は次の通りです。
(1)「天下り」のためのポスト確保が最優先され、無駄が大きくなっていること
(2)特に民間企業への「天下り」が、企業と霞が関の癒着を生み、行政が歪んでいること
(3)従って、「天下り」の弊害を無くすために、公務員改革が必要であること
現民主党政権は、天下り根絶の方針を骨抜きにして、自民党政権以上に天下りを容認しているように見える。例えば、東京電力への資源エネルギー庁長官からの天下りですが、原発事故の遠因の1つになっているのではないか。さらに、氏の原発事故処理に関する私論の寄稿に関して、経産省大臣官房は寄稿を差し止めた。本書はこの国の中枢で何が起こっているのか分かり易く解剖して見せてくれます。福島原発のメルトダウンより先に国家の中枢がメルトダウンを起こしていたという恐ろしい話です。これでは福島原発事故は収束するはずはありません。
李下に冠を正さず。官僚や政治家、リーダーは自分の職責の重さを真摯に考えれば、国民から白眼視されない高潔さと清潔さを持ち合わせたいものです。正義が通らない国家では国民に元気は出ない。震災の復興と原発の収束ばかりが前面に出てくるが、その根本は正義と、正義を行おうとする矜持であると思います。国民を元気付ける政治・行政が行われることを切に願って止みません。
官僚の責任 (PHP新書)
読み終わって、ため息が出ました。書いてあることは、官僚のあり方として、ごくごく当たり前のこと。それをここまで書いて、世間に問うねらいは。「自分は、違うだろう。」という、自己満足が、かいま見え、すっきりした読後感になりません。役所でなく、民間会社に在籍していて、同じような状況に直面しても、やはり本を出して社会に訴えるのでしょうか。著者の姿勢を、役所の中で、とことん貫いて欲しかった。本を出したりせず。改革に意欲的な仲間とともに。国家公務員、しかも超エリートとして、在籍していた官僚の不満が語られているとしか思えませんでした。著者は、経済産業省を辞めたと報道されていましたが、これからどうするつもりなのでしょう。政治家、大学教授、評論家、一流企業の役員?どんな立場になっても、日本の行く末を、しっかりと見つめ、ご活躍ください。その期待を込めまして、★★★とさせていただきます。
TPP亡国論 (集英社新書)
グローバル化の世にあって、参加は必要なのではと漠然と思っていましたが、認識が改まりました。
今のように為替が不公平に操作されているような状況下で、自由化してもかえって弊害ばかり起こるのではないかと心配になりました。特に輸出が伸びるとされている自動車等の工業製品にしても、逆輸入が増え、企業栄えて何とやらと言う事にもなりかねません。
本書の言うとおり、日本は十分『開国』しているし、中国や韓国が参加しない協定に参加して何の得があるのでしょうか?、それよりもデフレや円高に対処すべきだとする著者の意見に賛成です。
とにかくこの問題を再考させるきっかけを作ってくれた本書に感謝したいと思います。