ユメノ銀河 [DVD]
夢野久作の本を読むきっかけになった映画です。モノクロなところが雰囲気だしてて良かったです。あんまり夢野久作ワールドを出してるわけじゃないけど映画は映画で独特でした。個人的には好きです。
ドグラ・マグラ [DVD]
原作に比べると、ずいぶんすっきりまとまり過ぎている感はあるものの、怪しげな雰囲気が非常によく出ていて面白い仕上がりになっていると思いました。
とにかくあの不可解千万な小説世界をよく映像化したものだ、という点で大いに評価できます。夢と現実、幻視と実像、想像と事実、過去と現在、他人と自分、狂気と冷静さが入り乱れ、何が真実で何が嘘なのか、自分は一体誰なのか、という思考の混乱を巧く映像的に表現しようとしている。その工夫が感じられました。“脳髄地獄”ということを言うためには、もう少しパラドックス、論理の矛盾を取り入れた方が良かったかな、とも思いますが、上映時間を考えるとこれくらいがちょうど良いのかも知れません。
美人の妻を絞め殺して死体が腐ってゆく様子を克明に記録絵にする、というおぞましいエピソードも含まれていますが、グロな脚色はせず、嫌悪感を催すようなシーンも無い、スマートな作品です。過去の因縁が自分の血の中に甦る、その陰で糸を引く者は誰か、という一種の推理物でもあります。自らが加害者であり被害者であり、かつ探偵でもある、その謎解きが永久に繰り返されるという恐ろしい作品です。
ドグラ・マグラ (まんがで読破)
原作が大長編、しかも複雑な構成なので、漫画化は無謀なのではないかと思っていましたが…
まあ、無難にまとまりましたね。
ただ、この作品の場合、「無難」というのが一番の曲者です。
限られたページ数で漫画化しなければならないため、必然的に筋書きはシンプルになり、原作の「複雑怪奇な物語を読み解く醍醐味」が薄れてしまっています。
また、エピローグは原作と視点が異なるため、印象が違ってきています。
とはいえ、本筋となる部分は一通り描かれているので、とりあえず読んでみるのもいいでしょう。
事前に漫画版で大まかな話の流れを把握しておけば、原作を読むのが少し楽になるかもしれません。
火星の女 (夢野久作の少女地獄) [DVD]
夢野久作原作の「少女地獄」だと聞いて購入。
原作(とも異なる内容だが)を知らないと、全然物語的にわからないのではないかと思った。
役者が少女ではないのと、成人向けなのは出してる会社のせいか・・・
原作のドロドロ感は多少は感じられた。
知らない人が見たら、やはり後味の悪い気持ち悪さは残ったと思う。
ビデオDVD化していない「瓶詰めの地獄」(内容がだいぶ異なるようだが)
こちらも気になるところ。
ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)
焼き肉屋の順番待ちで、ふらりと小さな本屋に入った時のこと。
「ドグラ・マグラ」という妖しい題名。
「精神に異常をきたす奇書」という妖しげな文句。
妖しい表紙。
ページをめくると例の巻頭歌、そして独特の文体…。
そのままレジに持って行き、夢中で読んだことは言うまでもありません。
今振り返って思うのは、一度読み終えてしまった以上、
もう最初と同じ気持ちでこの本を読むことはできないということです。
この本が文学的に優れている本かどうかは分かりませんが、
少なくとも私には唯一無二。
この本が醸し出すような独特の雰囲気を持つ本に、以降会えていません。
妖しく、複雑で、ある意味でシンプルなストーリー。
この本を本当に存分に楽しめるのは、手に取って読み終えるまでのわずかな時間です。
そしてそれは、この本が少しでも気になった類の人間にとっては、
人生でとても貴重な時間になると思います。