羅生門 デジタル完全版 [DVD]
羅生門では様々な立場の人間が自分の都合の良いように事実を捻じ曲げ嘘をつく。
生きてゆく為に嘘をつかざるを得ない立場の人だけでなく、この世の呪縛から逃れ、現世と関係のない筈の死者でさえ、自分の為に真実を捻じ曲げてしまう。人とはなんとも身勝手な存在なのでしょうか。
武士殺害の犯人、殺された武士、その妻らの各人は検非違使の前で証言しますが、その場面はまるで地獄に落とされたくないが為に閻魔大王の前で嘘をつく亡者のようで、浅はかな人間の性を見る思いがします。
事件の当事者である3人全員が嘘をついていることが最後に分かりますが、事件を目撃していた杣売りの証言も本当だったかどうかは分かりません。武士、その妻、盗人、杣売りの全員が真実を語っている保証はどこにもなく、皆が自分のために事実を歪曲しているのではないかと勘ぐりたくなる。
虚偽に満ち溢れたこの世界を生きてゆく目的は何か・・・・黒澤監督が言いたかったのは、そんな事のように思えてきます。
現代の映画にあるような派手なSFXやギミック、アクションは全くありませんが、人間心理の微妙な揺れや関係、立場や地位に左右される人間の弱さと身勝手さを様々なアングルで描写していて、見ていて飽きがきません。
時代を超えて真に普遍的なものが、そこにあることを感じさせます。
近年の映画のど派手なアクションやギミックに飽き飽きした人、人間関係で悩んでいる人、画面構成や、台詞の微妙な言い回しなど、味わい深い演技を楽しみたい人に推薦します。
羅生門 [DVD]
矛盾が成り立つという程の矛盾があろうか
目撃者
妻
盗賊
イタコ(夫)
全てが己が為に吐き出した嘘は、ある意味での真実なのかもしれない
徹底的に人間を突き放した物語の後にあるのは、晴れ渡った空と赤ん坊。
人は醜い。だからこそ美しい。
全ては矛盾である
雨月物語 [DVD]
どちらかというと昔から黒澤映画のファンで、溝口監督の映画は、あまり見たことがなかった。
でも、今回何となく気が向いて見たのだが、その奥深い表現に圧倒された。本当の芸術作品を見た気分である。
ただ、この映画を見て思ったのは、これだけの映画になると、演じる役者さんの素養もかなり要求される。単に、感情表現をするだけでは無理で、日本文化への深い知識と経験が要求される。
今は、作られることの無くなった、こういう日本映画を守るためにも、しっかりとした日本の文化に根ざした、映画人や俳優の養成が必要なのではないでしょうか?
元々、数多くの名作を生み出してきた日本の映画界なのに、このまま、国籍不明の映画を作り続けても、結局は廃れると思うのですが。
散歩しながらうたう唄―森雅之第二作品集
比較的初期の作品群なので若干画風の異なるところもあるが、その叙情性豊かな独自のストーリー性はこの頃も現在も少しも変わるところがない。いずれも読後にさわやかさを残す作品で駄作はない。