はっぴいえんど
このレビューは主観で書ききるが、この曲のドラムほどファンクを感じる日本人ミュージシャンの演奏を他に知らない。
ブラックミュージックの影響の強い連中も録音技術の発達のせいで生のアンサンブルとは言い難く、始まりから終わりまで不安定であるからこそ独特のジャストなタイミングがあり、それこそがファンクの主成分を絞り出す術であり、その濃度はアンサンブルの醸す空気とドラマーの性格にかかっている。
メンバーが大麻で捕まるからこそファンキーなグルーヴな訳で、日本のミュージシャンには堂々と吸って欲しい。百人同時に捕まれば世間も考えるはずだろう。
日本は三島の言う通り文化とそこに暮らす人間を切り離したかも知れないが、それでは退屈と憂鬱に満ちてしまう。 退屈しきったバカ者がこの国の言うところの犯罪を犯し続け無駄を生産してしまうところにだけ可能性を感じる今日この頃である。
今も行くところに行けば悲観できない興奮に満ちている。
それでも疲れた時には良い音楽を聴こう。明るい場所は相変わらず退屈と絶望に満ちているから
創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史 (光文社新書)
《美空ひばりは「演歌」歌手だったのか?》という
帯の文句に惹かれて購入しました。
とはいっても、本書では特定の個人(歌手、作詞家など)
に依拠して論ずることはしません。同時に、著者自身が
若いこともあってか、体験談的記述も控えてあります。
本書ではもっと構造的な視点から分析をしています。
本書の特徴は、「演歌」という便利で安易な言葉による思考停止を揺さぶり、
丹念な研究の成果を一つの投げかけとして読み手に考えさせている点です。
ですから、本書に出てくる数多の楽曲や、参考文献などに触れてみて、
時代に思いを巡らすことは、考えるということの訓練としても有用でしょう。
上記の点や、使われている語や文体から、本書の著者は
フランス現代哲学(門外漢なので的外れかもしれませんが)
の素養があるように思いました。そのせいか、文章が硬質で
非常に(よくいえば)読み応えがあります。もちろん、
それが一層おもしろさに深みを与えているのですが。
ただし、そのような事情から、本書の価値は読み手がどこまで
テキストと真摯に向き合うかによって決まる部分が大きいです。
それを踏まえて星4つとさせていただきました。
だからここに来た!-全日本フォーク・ジャンボリーの記録- [DVD]
1970年のフォークジャンボリーの記録映画は当時から音楽映画というだけでなく、あの時代の象徴としても評価されたもの。フォークからニューミュージック、Jポップと、ポピュラー度が高くなり、歌としてよりは音楽として迎えられる時代になっていくにつれて話題にされることもなくなり、たまにBSやスカパーの特集で放送される程度の取り扱いだった。しかし、今こうしてDVD化されたことは驚きであり、ポニーキャニオンの姿勢に拍手を送りたい。この時代に青春を過ごした者としては、この時代のライブ音源等が関係者のところに沢山眠っているという話に、いつか会えるのではないかと期待している。
フォークジャンボリーは都合3回開催されたが、これはその中間の年。翌年にはメインステージが占拠され演奏ができなくなるという出来事があった一方で、よしだたくろうがサブステージで「人間なんて」を永遠と歌い続けたことは有名だ。そのライブの迫力はCDで復刻されているので耳にすることができる。もちろんこの70年(第2回)もCD化されているし、数社から発売されたものを集めると相当の曲に出会えるので、それも楽しめる。
しかし、このDVDで楽しめるのは、ほかの人も書いているように、岡林信康の歌であり、少しだけ映っているはっぴいえんどの姿だ。つまらなそうに演奏している姿がとても楽しい。数年前に小田和正の「クリスマスの約束」で久しぶりにTV登場した斉藤哲夫の若き哲学者と呼ばれた当時の映像もいい。遠藤賢司もいいし、風船もいい。亡くなった高田渡の若々しい姿、そのバッキングを務める岩井宏も亡くなった。「夜があけたら」の浅川マキも亡くなってしまった。この時「教訓1」でスターになった加川良は残念ながら音源だけ。でも、どれもこれも、あの時代を思い出させてくれるに十分だ。
すべてが懐かしく、うれしいのだが、私がきわめて個人的にうれしいのは、オープニングの映像でフィルム傷がそのまま出ていることと、時々音飛びしていること。さらには、小室等と六文銭の映像だ。そののちにベルウッドから六文銭のアルバムが出されているが、この日のステージの六文銭は別。たしか、記憶に間違いがなければ、ここの女性は小室のり子さん、そう小室さんのファーストアルバム「私は月には行かないだろう」のジャケットに写っている、小室さんの奥さんのはず。小室のり子さんの歌声はこのステージのものしか残っていないのではないかな。六文銭のメンバーがしょっちゅう変わっていた頃であり、まさにフォークの時代だ。
このジャンボリーは、当時のフォークシーンそのものであり、時代を映している。翌年の第3回頃から、フォークは重いものを背負わされ、自ら変貌していくこととなる。このころの流れは今も確実に続いているのだが、ふれあう機会はめっきり少ないままだ。
このDVDが、この時代を知らない若い人たちにどのように映るのかはわからないが、この時代にギターを弾いたことのあるひとには、青春を思い起こさせるに違いない。
HOSONO HOUSE
どんな音楽が流行っていようが、自分がどんな状況にいようが、定期的に何ヶ月かに一度は必ず聴きたくなるアルバムです。世に出てから30年以上経っていても決して色あせることなく、いつ聴いてもいいなと思える名曲揃いのアルバムですよ。
クイック・ジャパン90
転機となったのは、爆笑問題・田中の登場だったと思う。
それまで、知る人ぞ知るとか、誰も知らないという人選が『QuickJapan』の表紙の特長だったと思う。
しかし、上記の田中登場以降サブカル寄りとはいいつつも比較的メジャーな、表紙買いをさせるような人選になっていって、最近は「ウンナン」「銀魂」など知らない人の方が少数な表紙になっていた。
今号は久々に、「誰?」という表紙だった。
なので、昔の(vol20以前の)号を読んだ時のような興味深さを覚えながら読めた。
「神聖かまってちゃん」が本当に国民的バンドになるのか、それとも時代の徒花なのか、今後は見守って行きたいと思った。
小島慶子インタビューは大変興味深かった。
AMラジオの今現在エース級番組『キラキラ』の今後に、その動向に直結する小島慶子の退職騒動。
心配していた人の多くにとって、安心を得られるインタビューになっているのではないか。
特に小島のAMラジオ復帰を喜び、評価していた伊集院光が感激するような発言もあったと思う。
あとはいつも通り、細かいコラムは全て興味深かった。
他のインタビューも吉田豪のサブカル対談、ゲスト鈴木慶一も良かったし、羽海野チカの『3月のライオン』のインタビューも良かった。
今号は表紙に訴求力がないかもしれないけれど、内容は充実しているので、是非とも読んでもらいたい。