フィールド・デイ(紙ジャケット仕様)
2005年にリリースされた2枚組作品。PP&Pシリーズや企画盤ではない作品としては実に1990年の「スローダンス」以来になる。全曲がアコギを中心とした楽曲で、電気ギターやドラム、ベースは使われておらず、最初聞いたときにはアーカイブコレクションのように時折8ビートのドラムとベースのリズムトラックが欲しいと思ったりしたが、何度も聞くうちに1曲1曲の個性が分かるようになり、ファンは良さを分かってくれるという自信を持ってリリースされた作品だということが理解できるようになった。雑誌のインタビューによるとアンソニーは近年テレビ音楽の仕事でキーボード音楽を作曲する機会が多く、そのフラストレーション解消のためにアコギを使った曲を作曲し、少しずつ録りためていたらしい。なので制作期間は幅広く2001年からの楽曲で構成されている。2枚目の前半部分の楽曲が個性的で、同じアコギでも様々な技法や表現力を駆使した楽曲が連続して登場する。僕は連日仕事のBGMとして本作を愛用しているが、気持ちを落ち着ける効果だけではなく、企画のアイデア、創造力が湧いてくるので、BGMとしてのお勧めできる。
ヴォイス(初回限定盤)(DVD付)
グラミー受賞直後のアルバムってことで、これで初めて上原ひろみを聴く人もいるでしょう。
言い過ぎは承知であえて書きますが、このアルバムが気に入らなければ、たぶんもう他は聴く必要ないです。
これまでの集大成と言っていいような、彼女らしさの全てが詰まっている、そんなアルバムです。
代表作になると確信します。
一部ジャズマニアから、こんなのはジャズじゃないといった批判をされたりもするようですが、私も違った意味で、上原ひろみのジャンルは何かと訊かれたら、ジャズではなく、
「ピアノそのもの。彼女こそがピアノである」と答えます。
ジャンルなんて超越し、ピアニストであることすらも超越した、まさにピアノと一体化した彼女の声(VOICE)がスピーカーから聴こえてくる、このアルバムは特にそう感じました。
彼女自身、楽器を演奏しているという感覚は皆無なはず。
そして声である以上、出来ない表現があることは耐えられないのでは?
だからこそ彼女はひたすらストイックにテクニックを磨くのでしょう。
2011年マストバイです!
ジャズということで敬遠している方にこそ聴いて欲しいです。
最後に、あえてジャンルに分けるなら、このアルバムはロックです。
スローダンス(紙ジャケット仕様)
この「スロウダンス」のリリースにあわせて1990年の11月にアンソニーの旧作品群がCD化され、「ギースアンドザゴースト」や「ワイズアフターザイベント」「サイズ」などの作品が初CD化され、本作とともに聞き込んだことを思い出す。本作品は2部構成で、お得意のクラシックギターだけではなく、「プライベートパーツピーセズ7」の製作で学習したジュピター8やプロフェットシンセサイザーを使用して臨場感あふれるオーケストレーションを実現している。前半と後半に分けた展開はマイクオールドフィールドの「ハージェストリッジ」や「オマドーン」を想起させる。前半の終末部は明らかにマイクオールドフィールドの作品群の影響を感じさせる。サウンドの全体的な印象はジャケットの深緑色の世界で、シンセとクラシカルギターの絡みや柔らかく染み渡るように広がる暖かいシンセの音色、後半の雨音のようなシンセに優しいギターが絡む展開など聴き所が多く飽きさせない。この内容を考えるとよく日本盤(ポニーキャニオン)がリリースされたと思う。バブル絶頂期だからこそ可能だったのかもしれない。