宇宙からの侵略生物 [DVD]
古くからのSF映画ファンにはガスタンクの階段から降りて来る蒸気人間のスチール写真が有名ですが…本邦劇場未公開作品です。 傑作『原子人間』に続くクォーターマス博士いわゆるQ博士シリーズ第2弾…続編あつかい故にか薄い評価の本作ですが… これも傑作です。 制作された1957年と言えば人類初の人工衛星スプートニクが打ち上げられた年です。 アメリカをはじめ西側陣営はスプートニクショックで宇宙からの侵略生物も東側の侵略者も同義語だったのかもしれません。 まあ、そんな世相を背景に綴られた物語のよう思えます。 …てな、感じで紹介しますと、まるで『盗まれた街』ボディスナッチャー物のバリエーションみたいですが… 本作には恐怖や不安を具象化した芸術的なブヨブヨ系の怪獣が出てきます。 (バルンガやヘドラといったブヨ系怪獣のルーツのひとつかと思います) とにかくヴァル・ゲストって監督はちゃんとした映画監督です。 物語の語り口も良ければ画面構成も良いです。 特に画面構成は素晴らしいと思います。 Q博士と言えば『原子人間』と『火星人地球大襲撃』がチヤホヤされてます。 もちろん元祖テレビシリーズも見落としちゃイカンのでしょうが…本作『宇宙からの侵略生物』を観ずしてQ博士を語るなかれ…なのです。
火星人地球大襲撃 [DVD]
Q博士シリーズ第3弾。地下鉄工事現場より太古に飛来した宇宙船が発見され船内から出てきた火星人の遺骸から強烈な残留思念エネルギーが発生しロンドン市街が大パニックに。SF映画ファンにはカルト的人気の作品で、トビー・フーパーの傑作『スペース・バンパイア』との類似性も指摘されてる異色作でもあります。本DVDにはテレビ放送時のアテレコ音声はありませんが画質も良く新鮮な感覚で見直す事ができました。イナゴの佃煮みたいな火星人や奇妙な不思議デザインの宇宙船、地下鉄工事現場の撮影セット…それら登場するさまざまな装置の美的感覚がアメリカ製のSF映画とは微妙に違ってて心地よい違和感が楽しめます。そして何よりもしびれたのは、まるで“最後の審判”が下されたようなロンドンの街に繰り広げられる終末光景。風に舞う新聞紙にリリカルな美しさを感じます。このシーンだけで火星人地球大襲撃は永遠に語り継がれる傑作映画です。
原子人間 [DVD]
数十年前、初めてVHSソフト化された折にヤラれました。
シャープな映像、ツボを押さえた劇伴、今見てもゾクゾク!
妙な虚仮威しや自嘲気味な開き直りは皆無、
センス・オブ・ワンダーに挑む映画作家の模範というべき姿勢が素晴らしい。
数え切れない模倣を生んだ空想科学映画のマスターピースです。
Quartermass
70年発表。ジョン・ガスタフソン(b、vo)、ピート・ロビンソン(k)、ミック・アンダーウッド(dr) によるクォータマスの残した唯一の作品。トリオ編成ということですぐに想像するのはナイスだろうか?実際にオルガンを主体にしているため類似性は散見するものの、グループを牽引しているのはガスタフソンのようであり、ヴォーカルが中心となっている点がナイスとは異なる。またリズム隊の強靱なブレイもナイスとは趣がかなり異なる。グループの前身はディーブ・パーブルのイアン・ギラン、ロジャー・グローヴァー、そしてウェブ〜サムライのデイヴ・ロウソンらもメンバーとして在籍していたエピソード・シックスで、3人共にそこの出身である。
1.はプロローグ的な小品。2.は後のレインボーのバージョンが有名な曲だが、ミックがリッチー・ブラックモアとアウトローズで同じメンバーだったという事実は重要であろう。3.はブルース風味のスロー・ナンバー。徐々に盛り上がるドラマチックな展開を見せているが、聞き物は凄まじいオルガンのソロ。4.はハープシコードを導入したクラシカルなバラード。ポール・バックマスター・アレンジ/指揮のオーケストラの導入で重圧かつ厳粛なムードが加味されており聞き応えあり。
さすがに実力者が揃っているだけに楽曲/演奏ともにこの時代のものとしては一つ抜けた印象がある。一部の楽曲の提供してスティーヴ・ハモンドはロビンソンのクリス・ファーロウのヒル時代の同僚。全体としてはあか抜けて少しだけ洗練されたアトミック・ルースターといった雰囲気だが、凄まじいオルガン・ソロなども含まれており、小粒な印象はない。バックマスターの強力なオーケストラ・アレンジも聞き物で英国ロック好きには手放しでお薦め出来る作品だと思う。
グループは本作のみで解散。ガスタフソンはビック・スリーを経てアトミック・ル−スターのジョン・カン、ポール・ハモンドとハード・スタッフを結成している。ロビンソンはビッグ・スリーを経て後にブランドXに参加。アンダーウッドは後にポール・ロジャースのピースに参加した他、イアン・ギラン・バンドにも参加している。
Quatermass (W/Book) (Dig)
英国アングラ・ハードには、そのグループの人脈をたどるとずるずるっと芋づるのように重要なグループがいくつも収穫できる、という系列があります。(コロシアムとかGUNとか…)クォーターマスもそのようなグループです。オルガン、ピアノを中心としたヘビーロックであり、その風格はツェッペリン、パープルにも引けをとりません。一般的にはレインボウがファーストで演奏したBlack Sheep Of The Family で知られています。3. Post War Saturday Echo に特徴がよく出ていますとおり、スリー・ピースの演奏力と構成力をいや、というほど聞かせます。わたしはジョン・ガスタフスンの巨大なベースが何より好きで、彼の演奏を聞けるだけでロキシー・ミュージックもイアン・ギランも許せてしまいます。彼のボーカルが堪能できる意味でもこの作品は貴重です。
過剰な湿り気はなく、明るく乾いています。ベースになっているのは、ブルーズよりはジャズでしょうか。楽器のインタープレイにおいても冗漫にならずに緊張感が持続するところが上手いです。最後にスリーブ・デザイン。ヒプノシスが全力を振るった制作(錆びた鉄鋼廃物で統一されている)で感心します。また、お定まりのハーベスト・レーベルの録音のよさ。6. Gemini なんかを聞いてしまうと、嬉しくて一日クォーターマスをリプレイしてしまうのです。素晴らしい。