Tin Machine II
ボウイ自身結構力が入っている。曲も良いし本人曰く当初なんとなくバンドになった、というにはあまりにしっかりした内容に仕上がっており、底力をみせる。ボウイはソロが前作、前々作とコケてからのツアー中はシカゴ・ブルースばかり繰り返し聴いていたらしいが、当時を感じさせるアンニュイな「グッバイ・MR.エド」など彼の「ブルーズ」であり名曲だ。80’s以降のボウイの中ではこの曲が筆者は一番好きだ。彼の定期的な立ち位置確認の真っ只中に発表されたに違いない本作だが、当時年齢的、アーチスト的にもかなりシビアな時期にあっただろうボウイの書いた曲にはそれぞれに陰影があり素晴らしい。ソロ〜バンドと全く別物ではなくボウイ的には一本筋が通っている。歌唱も声のバリエーションで聴かせており、バックアップする演奏も手堅い。リーヴスはかなり面白い事をやっていて、やはり彼はティン・マシーンでのプレイが一番良い。この真面目さと男臭さが一般には受けなかったが、しかしこれも小規模ツアーしかやらなかった彼らの意図でもあるだろう。当時のシーンではマージナルな印象だったが、現在聴くとそれが不思議なくらいのクオリティーを持った作品だ。惜しむらくはジャケット。自身がアートも手がけるボウイが何故?と思う程最低なこれが一番の敗因だと思う。(1stの鋤田さんとは何万光年のズレ。)ちなみにセイルス兄弟はコメディアンのスーピー・セイルスの子息でバディ・リッチの世話で芸能界に入ったとか。漆黒のベルリン時代、イギー&ジギーを支えたのが彼らであると思うとそれも中々に感慨深いものがある。
Tin Machine [ENHANCED CD]
前作とそれに伴って行われたツアーでのケバケバしいイメージから一転、ブラック・スーツに身を包んだボウイが80年代最後に挑んだのは、ハードロックバンド・「ティン・マシーン」の結成だった。
音楽的な側面から見ると、「ネヴァー・レット・ミー・ダウン」にもハードロックなアプローチは確かにあった。
しかし、ここまでゴリゴリに固めてくるとは誰も想像できなかったはずである。
元々、このバンドは「デヴィッド・ボウイの新作」の為に集まったのだが、最終的にバンド名義として活動することになったという。
楽曲は初期衝動のようにボウイが叫び、バンドがひたすら突っ走るハードな曲から、どこかギクシャクしたバラード、さらにはオルタナに接近したと思わしきギターポップなものまでで、実に多彩といえる。
このアルバムを引っさげ、バンドは小さなクラブのみを回るショートツアーを敢行した後、すぐにスタジオに戻り次作の製作に入る。
しかし、そこで過去のカタログを再発売しようとするレコード会社からボウイに大規模な「グレイテスト・ヒッツ・ツアー」の要請があり、ボウイはそれを受けてレコーディングを休止、翌1990年のほとんどを「Sound+Vision」ツアーに費やすこととなる。
このレコーディング休止が痛手となったのか、「ティン・マシーン」の次作はかなり厳しい内容になってしまう。