e文庫 『幻魔大戦deep』 平井和正
この「deep」は即ち「深・幻魔大戦」ということだろうが、再読を始めてみると、初めて読んだときほど東丈の描写やそもそもの文体に違和感がないのに気づいた。もっと「アブダクション」のような(つまりは「地球樹の女神」以降のか?)平井和正の「軽み」の部分が前面に出て、重みの部分は見えづらい、あっても続かない、文体になっており、東丈のキャラクターが直哉もどきになっている記憶があったのだ。
だが、ちょうど同時並行して「真幻魔大戦」を再読していたのだが、さほどの相違は感じられない読み始めだったのだ。
それが、一気に「アブダクション」度を加速したのは、“すてきなお母さん”雛崎みゆきが登場してからになる。彼女の登場以降、丈のキャラクターも世界の描写も「アブダクション」に“憑依”されていく。
が、にも関わらず、では雛崎みゆきというキャラクターがそれほどの圧倒的な存在感を持っていたかといえば……これは決してそうではないのだ。登場当初はそれなりの平井和正の女性キャラクターとしての魅力を備えているかに見える……が、振り子を丈に伝授することのみが役目であり、それが終わればもはや使命を果たしたかのごとく、急速に存在感を喪失していく。いてもいなくてもいい存在としか思われないのだ。(その証拠のように、続く「幻魔大戦deepトルテック」では消失している!)
この「deep」において、新しく登場した重要な女性キャラクターの中でも、雛崎みゆきほど重要であり、そして同時に存在意義のなかったキャラクターはほかにはいない。丈にとってすらも、最速で美叡(&美恵)や雛崎みちるに比べて、みゆきが占める割合はみるみるうちに失われていったのではなかったか。
平井和正作品の魅力のひとつには、確かに女性キャラクターの備える“女神性”があったはずだ。ところが、この「deep」で登場した女性キャラクターたちはいずれもかつての魅力に欠けている。東美恵たちなど、「真幻魔大戦」時の養女時代の愛らしさはどこへやら、といって虎4や杉村優里のようなパワフルな魅力を備えているわけでもなくという、どうにも感情移入する魅力の乏しい女性陣だったのだ。
「真幻魔大戦」登場時の美恵は、「東美恵子」だったはずで、それが“夢魔の寝室”編あたりから「美恵」になっているので、その辺ですでに世界が変わっていたのかも? 「美恵子」のままだったら、また違ったのかな? ……この辺は余談中の余談である。
丈のくだけた口調は、べらんめえ部分はともかく、GENKEN主催になる前の少年の丈にはちゃんと存在していたものなので、それほど違和感はない。それよりも、フロイのような“宇宙意識”とインフィニティたる“宇宙意志”はどう違うのか、振り子はコックリさんとは違うのか、そんな細かいあたりが気になってしまうところはある。
GENKEN時代の丈の失踪が、ついに逃避だったと断定されてしまったが、これはつらいところではあるかもしれない。
けれど、GENKENを作らないでいた丈のまわりにやはり久保陽子や平山圭子もいたようだ。彼女たちと一緒に、“非・GENKEN”の丈はいったいどう活動しようとしていたのか。その物語も興味が湧いてしまう。オヤブンでもなく、東丈先生でもない丈は、はたしてどう幻魔大戦に関わっていったのか。
そして……GENKEN世界の延長でありながら、ハルマゲドンの少女にはつながらなかったらしい世界の木村市枝は、「砲台山」の時同様、やはりあくまで木村市枝だった。それがやはり、純粋に嬉しいのが、どの読者にも共通のことではないだろうか。
8マン〔完全版〕(2) (マンガショップシリーズ)
収録作品は下記の通り。
光線兵器レーザー 週刊少年マガジン 1963年(昭和38年)40号〜47号
超人サイバー 週刊少年マガジン 1963年(昭和38年)48号〜52号、1964年(昭和39年)1号〜2号
人間ミサイル 週刊少年マガジン 1964年(昭和39年)3・4合併号〜11号
本編のみで短編等の追加はなしです。
ちょうどテレビで始まる時期からの作品で、1巻収録分と比べると絵が完成されてる印象があります。
ウルフガイ(12)(完) (ヤングチャンピオン・コミックス)
なにこれ!
女として、こんな扱われ方は納得いきませんよ!!
「運命なのだ!」って言うならちゃんとハッピーエンドにせい!
くやしい!こんな綺麗事あるかい!
・・・が本音です。
幻魔大戦 [DVD]
再販歓迎です。初期の漫画を基に描いています。上映した時代の雰囲気もあり、見ていただきたい作品です。レーザーディスクも持っています。
大きなヘッドホンでカセットテープを聞いているシーンは、懐かしく思います。
「姉さんね。遠い昔の前世から丈の事何でも分かっている気がするのもちろん来世も」のセリフは小説を読んでいる人には、うれしいですね。見直すと大事に作られていることが分かると思います。
8マン〔完全版〕(4) (マンガショップシリーズ)
収録作品は下記の通り。
超人類ミュータント 週刊少年マガジン 1964年(昭和39年)32号〜47号
超振動砲 別冊少年マガジン 1965年(昭和40年)11月号
マッドマシン 週刊少年マガジン 1965年(昭和40年)51号
燃える水 別冊少年マガジン 1966年(昭和41年)1月号
新エイトマン 太陽衛星サンダーの巻 ポップコーン(光文社) 1980年(昭和50年)6月号
たの幼テレビきょく8マン たのしい幼稚園 1972年(昭和47年)1月号
本編については説明の必要なしなので短編についてだけ。
「超振動砲」は、1965年10月発売の別冊に載ってて、田中課長が久しぶりだと言ってることからも読切りで復活した1作目だと思われます。
3巻に載った「サイボーグPV-1号」が47号掲載で、多分10月末から11月頭にかけての発売だったはずなのでそれより早い。
「マッドマシン」が51号でその1ヶ月後ぐらい。
ちょっと遅れて12月発売の「燃える水」かな?
今回は1980年の「太陽衛星サンダーの巻」が収録されているのですが、これはリム出版版にも入ってなくて、ほんとに初めて読みました。
でもまあ、この絵はなぁ。ちょっと哀しいです。
「たの幼テレビきょく8マン」は〇〇七との初対決部分のリメイク。
「カワリ大いに笑う」と同時期なので、背骨も腕も湾曲してる。そういうタッチです。
1960年代後半から1970年代での桑田次郎のタッチの変化がよくわかる1冊という見方も出来ますね。