OPUS(オーパス)下(リュウコミックス)
映画千年女優やパプリカ、東京ゴッドファーザーズ、遡ればパーフェクトブルー等で
アニメ監督としても有名な今敏の遺した漫画です。
不運にも雑誌の休刊に伴い連載も中断されてしまったために
未完で終わってしまっているのが注意点ですが、
”作者が自身の漫画に取り込まれ、登場人物と協力しながら巨大な敵に立ち向かう”と
いう、彼の監督した映画パプリカをどこか想起させるような内容は彼でなければ
描けなかったものだと思います。
武蔵野美術大学在学中に漫画家としてデビューし、
大友克洋のアシスタントをやっていた事から伺えるようにもその画力は
目を見張るものがあり、昨今の漫画では味わえないような最高のアナログ味とでも
いいましょうか、それらが最高に心地良い作品に仕上がっています。
大友克洋のAKIRAや、大友に影響された画風の作家が好きな方は
間違いなく気に入る一冊だと思います。
まさか彼の単行本が出るとは思っていなかったので、今回
こういった形で本にしてくれたコミックリュウの編集部には
賞賛の言葉を送りたいところ。
押井守を原作に迎えた「セラフィム(こちらも未完)」も同時に
リリースされているので、ファンのかたはチェックしてみてください。
妄想代理人 BOX 【初回限定生産版】 [Blu-ray]
大量に存在するアニメの中で、流行に迎合せず独特の世界観を描き続けた監督の唯一のテレビアニメ作品。
オープニングのすがすがしすぎるほど不気味なメロディー及び本作の音楽担当は日本にプログレやテクノを広めた一人、平沢進氏。
作画は多くの日本人が知っているであろうアニメスタジオ・ジブリで活動し『もののけ姫』『紅の豚』などを担当した安藤氏。
一つの小さな出来事が次第に社会に感染していくストーリーを群像劇スタイルで作成しており、至るところで見受けられる『対話のすれ違い』が人の持つ孤独のリアリティを絶妙に表現している。
リアルとして始まり、非現実を受け入れられない社会が次第に受け入れ始め、最終的にまた日常に戻っていく全体の構成は卓越しており、子供向けではないものの、アニメを見ない人たちにも見てもらいたい作品。
パーフェクトブルー 【通常版】 [DVD]
あまりニーズが無いであろうアニメで、ここまでしっかりとしたサイコサスペンス映画を作ったという点を高く評価したい(事実、サスペンスやホラーを扱った長編アニメはほぼ皆無と言って良い)。もちろんアニメならではの演出も随所に活かされていて、単に実写映画をアニメ化しただけのような安易な代物ではない。
ストーリー展開もありがちなストーカー殺人に見せかけておいて、ちゃんとドンデン返しを用意してある。このシナリオと演出のレベルの高さはなかなか。
何度も見たくなるタイプの作品ではないが、この手のジャンルが好きなら一度くらい見ても損は無い完成度。
PS.今敏監督が亡くなっていたとは最近まで知りませんでした。素晴らしい作品をありがとうございました。ご冥福をお祈りします。
川瀬敏郎今様花伝書
川瀬先生の生ける花が好きで、本はいろいろ持っていますが、これは「私の花」と同じくらい好きな本になりました。お花の種類や花器についてなどの文章も豊富ですし、お花の写真を見る以外にも、読んでいても勉強になります。「私の花」のときとはまた感じが変わられている気もしますが、とても風情のあるお花の数々で、心が和みます。
花心をすこしでも自分に取り込めればと思って、眺めています。
新装版 海帰線 (KCデラックス)
連載から21年の時を経ているにも関わらず、秀逸さは現代の漫画をはるかに超越している。ストーリー、描写のクオリティの高さは改めて著者のもつ技術の高さを感じさせられた。