怪盗ミルク
ミステリマガジンに連載されていた作品を、単行本化したものです。「ミルク」といえば、ファン歴の長い人は初期の名作「ミルクがねじを回す時」を思い浮かべると思いますが、直接の続編とかではないです。ではなぜ「ミルク」で「怪盗」なのかってのは、あとがきに詳しいです。
本作のミルクはエプロン・ドレスにマント、魔法使いのような大きな帽子という服装で、しょっちゅう空中にフワフワと浮かんでいます。“盗めないものは何もない”という怪盗ですが、彼女が盗むのは普通の物ではありません。それは人の夢だったり、心だったり、それこそどこかの惑星だったりと、彼女に不可能はないのです。
そしてこの娘はかなり残酷です。先生いわく、「小悪魔ではなく、悪魔」「優しい悪魔であり、残酷な天使」だということです。何でも盗んであげると人に近づき、多くの場合は、かかった獲物を笑顔で地獄に突き落とします。
人生や老いの哀切を描いた苦いリアリティーのあるものが多めですが、オチでお伽話のようになる「虹の彼方」や、幻想美のある「海の物語」など、様々なタイプのエピソードが楽しめるようになっています。
金・名声など全てを持ち合わせた財閥の御曹司リチャード・Cと、彼の人生を羨む名もない工場労働者という2人の青年の皮肉な運命を描いた「リチャード・C」が、自分は強く印象に残りました。あと、病弱な少年がミルクに自分だけの惑星が欲しいと願う「孤独の惑星」にジンときました。“友達”を集めるくだりとか大好きです。
どのエピソードも葉介先生にしか描けない世界で質も高いが、今回は読んでてびっくりするほどのアイデアやシーンはそんなにはなかったかな。値の高さも考えて、☆はちょっと厳しめにしました。
「怪盗ミルク現わる」
「盗まれた一日」
「虹の彼方に」
「ミルク失敗(しくじ)る」
「リチャード・C」
「海の物語」
「夢診断」
「孤独の惑星」
「お墓のそばに棲んでいる」
「シャッフル」
「いらない子供」
「非存在の少女」
あとがき
コミック幽 (MFコミックス)
ホラー漫画初心者なので、いろいろ読んでみたいと思い、購入しました。
諸星大二郎(妖怪ハンターは読みました☆)からはじまり、押切蓮介、五十嵐大介、中山昌亮(不安の種シリーズ読みました☆)、伊藤三巳華でちょいブレイク。
さあ後半はどう楽しませてくれるのか…と期待してページをめくると、だんだんパワーダウン。
著名な作家陣が企画で描いちゃいました的な作品が多く、がっくり。
花輪和一は漫画風の画集、摩耶峰夫は漫画風ライトノベルだし(笑)
でもファンの人には嬉しい一冊なんだろうな、きっと…
夜姫さま (ぶんか社コミックス)
これは完成度高い単行本ですね。CDで言えば捨て曲無し状態。全話よく練られてる。絶版になってるのが勿体ない。最新の「もののけ草紙」より気に入ってしまいました。自分のお気に入りは「闇姫さま」と「井戸姫さま」です。私は中古を買うしかなかったんですが、重版したほうが良いと思います。
夢幻外伝 2
07年に出版されたソノラマコミック文庫・新装版「夢幻外伝II」と、収録作品は同じです。「夢幻外伝」9話に加え、その他の短編が8本収録されています。
「夢幻外伝」は、今さら語るまでもない名作です。「水妖」ではある男が、水という水を見るたびその水面に、見知らぬ女の顔が見えるようになる。そして彼は、水の顔と瓜二つの女性と知り合うのだが…という話で、展開の素晴らしさに惚れ惚れします。濃厚な怪奇色漂う「鞄」、無言劇の傑作「首おくれ」も大好き。最終話「黒い天使」も痺れました。
その他の短編も質が高い。「HAUNTED-HOUSE」〜「猫夫人」、「死霊教師」の6本は、83〜84年に「コミコミ(及び増刊)」で発表されたものです。「猫夫人」は、ライヤー教授の1編「猫夫人」とは別物です。「走る女」以外は、どこか外国映画を見ているような趣を感じます(「死霊教師」の舞台は日本ですが)。
「HAUNTED-HOUSE」は、画家の青年がスケッチした幽霊屋敷のようなあばら屋の絵の窓に、描いたはずのない少女と怪物が映っていて…というもの。ブラックなネタやスプラッターなど盛りだくさんな好編。「死霊教師」は、エクソシスト、ゾンビ他、名作ホラー映画をパロった、スプラッター・ギャグです。バカバカしくて最高です。
「遠い道(88年)」はやっぱ、蟹のイメージですよね。悲しくも味わい深い逸品です。「父の手(92年)」はパターンとしては珍しくないけど、ショート・ストーリーの名編です。
やはりこの「高橋葉介セレクション」は、紙質はあまり良くなかったです。でも400頁という文庫と同じボリュームを考えるとしょうがないのかな。コレクションとしての魅力は乏しいけど、たくさん読めるのはいい。何にせよ、「夢幻外伝」が復刊されて良かったです。
<夢幻外伝>
第1話「水妖」
第2話「目隠し鬼」
第3話「鞄」
第4話「船は行く」
第5話「続・船は行く」
第6話「泣きぼくろ」
第7話「首おくれ」
第8話「酒毒」
第9話「黒い天使」
「HAUNTED-HOUSE」
「狼と狩人と女」
「少年と犬」
「走る女」
「猫夫人」
「遠い道」
「死霊教師」
「父の手」
あとがき
夢幻紳士 幻想篇
内容は他のレビューにいっぱい書いてあるので略しますが、
とっても完成度の高い作品と思います。
1話ずつでもオムニバスのように楽しめますが、何より伏線がウマイです。
物語がウマイです。
表紙で買っちゃう人もいるんじゃないかと思うくらい美しい表紙ですが、
表紙買いの人の期待も裏切らないでしょう。と思う。
価格が高いとおっしゃる方もいらっしゃいますが、1300円の価値はあります。
魔実也くんに久々に会えてタイヘン楽しゅうございました。
3話のラストを見て、あぁ、魔実也くんてこういう奴だよなぁとしみじみ。
あとがきを読んで、やっぱり魔実也くんてそういう奴だよなぁとしみじみ。
この人が大好きです。