犬も歩けば赤岡町―日本で二番目に小さな町
赤瀬川原平氏、南伸坊氏、藤森照信氏、林丈二氏など「路上観察学派」の活動は、芸術的感性や知的好奇心、あるいは単なるヤジ馬的な魅力が原動力となっていた。だが、そのおもしろさを知る一部の「まちづくり」「まち育て」関係者は、住民参加活動のツールとして活用していた。類似のツールとしては「地元学」で用いられる「あるもの探し」がある。「まちづくり」という「実用的な活動」との差別化を図る意図があったかどうかは別として「路上観察学派」のスタンスは、あくまでも芸術や学術の範疇にとどめようとしていたように見える。路上で不思議な物件を発見しても、住民とのコミュニケーションによって疑問を解決することに対しては禁欲的なまでのこだわりすら感じられた。
しかし、この本では高知県赤岡町の町おこし活動に直接踏み込んでいる。地元の人とともに「隊」を編成して路上観察を進め、その成果をスライドショーで共有する。本の中には地元住民の声も入るし、その町に寄せる住民の思いもしっかりと書かれている。その意味で、今までの路上観察とは一線を画した著作と言える。路上観察にはまっている人はもちろん、まちづくりに関心を持つ人にとっても必携の一冊である。