佐野洋子〈追悼総特集〉100万回だってよみがえる (文藝別冊)
佐野さんは戦中派と呼ばれる年代だから、その死が早すぎるということはない。かといって大往生というほど生きてはいない。
親の死やボケ、自分の病気など、必ずみんながたどる道を歩き、精力的にお仕事をした。普通の人と違うのはやはり天才だったということ。
天才は、ごくあたりまえのことを、誰もが書かない視点で、その鋭さで皆をうならせてしまう。時にフッと、時に「ガハハ」と佐野さんの作品に笑った人は沢山いると思う。
利発な所はお父さんから、器用でたくましい所は母、静子さんから・・・・ムックの中の写真の佐野さんはとても和む。佐野さんにも幼少時があり、乙女の時代があったのだ。
随分いろんな方が佐野さんのことを語る。それも一流といわれる方たちばかりだ。
個人的に身内であった、息子さんと元夫の谷川俊太郎さんの対談が面白い。「本当はね」「いや、あれはね」などなど、行間からなにやら悲鳴なのかため息なのか、どうやらもう一人の生々しい?佐野洋子がいたようだ。ジロチョーというあだ名で呼ばれていたというのも面白い。やはり大陸育ちの突きぬけた明るさがあったのだろう。
とても正直に生きた佐野洋子さん、「100万回生きたねこ」の他に好きなエッセイをあげるとしたら、北軽井沢で地元の人たちとの交流、(料理をおすそ分けしたり)老いの日々を生き生き描いた「神も仏もありませぬ」が好き。「シズコ」さんとの和解もホロリとさせられる。
ご冥福をお祈りします。
THE BADDEST~Only for lovers in the mood
この限定アルバムを数年ぶりに聞いて感動しております。
実は、発売当初にこれを購入し、大切に聞いていました。
しかし、運悪く車上荒らしに遭ったことで、CDをほとんど盗まれてしまい、
このアルバムの存在すら忘れていたところでした。
あるときに部屋の中を片付けていると、CDが入っていないケースと
おまけの小説を発見したのです。
もう一度聞きたい!
さっそくAmazonを探してみると中古品があるではないか!
もちろん注文させていただきました。
数年ぶりに聞いてみると、古さを感じさせない
(8年前のアルバムとは思えない)仕上がりですね。
やっぱり久保田は最高です。
秋の夜長に酒を飲みながら聞くにはちょうどいい。
そして、ちょっと大人になった自分には、
小説の内容がとても理解できるようになっていました(笑)
買ってよかったです。
ぼくは勉強ができない (新潮文庫)
高校生の時に読みました。
私は素直に影響されてしまい、いままで何十回読んだかしれません。
カバーはぼろぼろだし、しおりも切れて、表紙はしわしわになっています。
でも、何度読んでも、主人公秀美くんは最高にかっこいいし、いかしてる、そう思っていました。
・・・最高に好きでした。でも、レビューを書きなおします。
なぜ過去形なのかというと、この小説に影響されたのは、自分の弱さのせいだなあ、と大人になってから
気づいたからです。
私は、人から決めつけられたり、偏見を持たれることが嫌いでした。
強いクラスメイトから虐げられることもあったので、そんな怒りを、この小説の、自分と異質な人を上から
こきおどすスカッとしたやり方でおさめていたのだと思います。
私は、詠美さんに影響されて、人を偏見で見ようとしたり、肩書きの偉い人や教員のことを
あまり好きではなくなりました。
そうすることで、自分の弱さを強さに変えて、自分で自分を守っていたんだと思います。
でも、逆に自分が、詠美さんがこきおどしているタイプの人をよく知ろうともしないで
偏見のこもった目で見ていることに気づきました。20代後半になった今頃になって。
偏見を持たれることが嫌だったのに、私は偏見たっぷりである種の人のことを決めつけていたのです。
要するに、どっちもどっち、です。
詠美さんの文章はとてもすごい、本当にうまい比喩をしているし、とても上質な物語だ、と思うのは
今でも変わりません。
でも、この価値観にとどまっていては、どこか現実を見ていない、自分たちの価値観だけを認める狭い世界の中で
生きていくことになると思います。
ある種の人をバカにしたように思って、自分がかっこいいと感じるのは、思春期のいたいけな心には
よく効く薬だと思います。
実際、私は何度もこの本で自分の尊厳やプライドを保ってきました。
しかし、いずれ卒業しなくてはいけない本なのかなあ、と思います。
本当の意味で、偏見を持たず、やたらとかっこつけず、人と向き合いたいと
今頃になって思っています。
この本は、影響力が強すぎて、長い間私の考え方の足かせにもなってきました。
でも、本当に大好きな本でした。だから、愛をこめて星は4つにします。
高校生は、心して読んでください。
シュガー&スパイス 風味絶佳 [DVD]
男子の初恋だけを描いた作品だったならば文句無しに☆5つ。 しかし全体を見たときに華美な装飾を纏い過ぎた作品、洗練された感の無い作品に私は感じた。 グランマやガススタンドの登場人物、その他セット達がそう感じさせているに違いない。 「ただ、君を愛してる」の様にシンプルで王道、型にはまった典型的な作風が好きな私にとって、グランマは痛々しい存在だった。 後に主人公の感情が爆発するシーンに必要な演出なのだが、存在感が有りすぎてバランスが悪いのでは? 主人公の感情の浮き沈み、初恋から失恋、ただ彼女を信じ待ち続けて終わる恋。 信じて待ち続けるしかできない。 というモノローグが胸に突き刺さり痛かった。 当時の自分を思い出した。 男子の初恋、優しいだけの男を描けている点だけに評価した☆3つ。