あにいもうと [DVD]
何度も映画化およびTV化された室生犀星の名作だが、この作品は特に配役が豪華。母親が浦辺粂子、父親が山本礼三郎、長男森雅之、長女京マチ子、次女久我美子なんて、すごいゴージャスな一家ですよね(笑)。
見所はたくさんあるけれど、やっぱり森雅之。無学で自堕落な石工を見事に演じてます。本当にこの人は芸達者な役者さんです。最後のほうの、京マチ子との半ば本気モードの取っ組み合いのケンカもすごい!東京郊外のロケ撮影も見事。噛むたびに味が出る、スルメのような成瀬作品。
あんずよ 燃えよ [DVD]
作品としては古き良きNHKらしい上質な出来上がりです。原作がとても良く再現されていて、今でも通用しそうなカメラワークや台詞、また俳優陣の演技で当時の制作現場の技術レベルと熱意が伝わってくる作品になっています。ですが、今の水準に慣れている人にはいかんせん画質が悪すぎます。ちょうどVHSのEPモードとSPモードの中間ぐらいでしょうか(特性的には三菱ではなく日立的です。理解してもらえるでしょうか?)。32型のテレビでモニターしても顔のつくりがハッキリしません。ちょっと残念です。デジタルリマスターして再販して欲しいのですが、損益を考えると・・・
ただし日本のドラマ制作史上貴重な作品の一つには間違いないので、このDVDが存在すること自体が一つの英断であると称えられてもおかしくないと思います。
日本の心を唄う 現代日本歌曲選集 第2集
ヴェルディ・レクイエムの「ラクリモーサ」を独唱した際、あまりの絶唱に女声パート全員が涙を流し歌えなかったという逸話を持つ大歌手柳兼子が、老境に入って録音したレコードのCD版である。日本歌曲史の中に埋もれてしまうかと思われたこの録音が21世紀になっても聴ける。生きててよかった。往年の大歌手が声を失った代わりに到達したのは直接こころにとどく孤高の芸術だった。私も涙と共に聴かずにはいられなかった。遠くから聞こえてくる「いずれの日にか国に帰らん」の一節など、嗚咽とでもいおうか、望郷の一念をここまで歌い上げた歌唱を私は知らない。
万葉集 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)
教科書にありがちな旧仮名に加え、今の仮名使いでルビがふられているので
ぜんぜん古典の知識がないような自分でも正確に歌を覚えることが出来る仕組みになっています。
選ばれた一つ一つの秀歌に対する、短いながらも丁寧な解説は、
最近の学術的な研究成果も反映しているそうで、
併記された参考歌とも合わせて楽しく読むことができました。
共感できる歌を見つけるたびに、千三百年以上の時空を越えて、万葉人の喜び悲しみが伝わってくるようです。
もっと読みたいと思わせてくれた点を含めて、
値段的にも入門書に最適の1冊でした。