古武術の発見―日本人にとって「身体」とは何か (知恵の森文庫)
知覚から運動にアプローチした対談である。
運動の背景にある身体感覚をもう一度、研ぎ澄ませる。何も座禅を組むことではない。自動的にスカスカ入ってくる身体感覚の入力を一度切って、知覚していることを自覚する。オートをマニュアル化するわけである。こうすることで、知覚を揉み崩して、再度組み直す。そうして個別に認識されるようになった対象=身体各部を、各部ごとに操る。即ち、運動の前に知覚。跳ぶ前に見ろ、ということか。そういう意味で、真摯な対談だった。
文庫版後書きの編集者とのインタビューも好印象である。お互い知った仲だろうに、対談内容の際は知ったかぶりをせず、一つ一つの事項を、言葉で説明するように求めて検証している。いわゆる業界紙の対談にありがちな、業界用語を並べて外堀を埋めるだけの内向的な内輪話にならず、健康的である。
零距離戦闘術 (DVD付)
基本的に、日本という国は平和である。
その日本から、実戦を強く意識した戦闘術が登場した。
非常に興味深い、希有な本である。
立ち技に関しては、稲川氏が父から習ったとおぼしき居合術、もしくは合気道系統の動き(まあ術理としては居合≒合気ではあるが)が色濃く出ている。
歩法や入り身、肩甲骨への意識の仕方などは明らかに日本の古武道の動きだろう。
一方グラウンドに関しては、ごくポピュラーなブラジリアン柔術の動きをベースにしていると思われる。
(あくまでも素人の見解だが、寝技の巧さは少なくとも色帯以上のレベルだろう)
一通りDVDを見た感想としては、「ああ、これは確実に相手を制せるな」と思わずうなったものや、「うん、これは大丈夫かな?」と思うようなものもあった。
たとえば、DVDでは相手の突きを順突きしか想定していないのが少々気になる。
現代で「突き=パンチ」に最も長けているのは、間違いなくボクサーである。
最低でも、逆突き(ストレート)やワンツーの想定は必要ではないだろうか。
(もしくは、「入門編」で紹介するのはこれだけ、ということかもしれない)
あとこれは余談だが、付録の(自衛官による)演武は見事だった。
気迫がひしひしと伝わってくる演武である。