予防接種 (小児科臨床ピクシス 4)
基礎疾患のある児の場合、
接種の予定が遅れてしまった場合
児が風邪をひいたときの対応
などよく困る点について書かれており、かゆい所に手が届きます。
だらだらと詳しく解説せず簡潔に書かれているところがgoodです。
しかし、予防接種を扱った他書が3000〜5000円で販売されてるのに対して値がはります。
他の疾患と違って予防接種は数年でルールが変わったりするので、
もう少し買いやすい値段にしてほしかったです。
値段分減点1です。
B型肝炎訴訟―逆転勝訴の論理
信念を貫く
平成23年6月28日、B型肝炎訴訟の全国原告団、弁護団と国(管直人政権)が和解の基本合意書に調印しました。救済の対象となる患者、感染者数は推計で43万人、和解金などは最大で3兆2千億円になると報じられております。
B型肝炎訴訟とは昭和23年から63年までの40年間、旧厚生省の指示が出るまで国が定めた予防注射等で注射器は使い回しされており、それが原因でB型肝炎になったとされる訴訟です。一審では原告敗訴、高裁、最高裁では逆転勝訴になりました。
「B型肝炎訴訟」(与芝真彰著、かまくら春秋社)には医事裁判の現実、特に専門の権威ある教授の意見がそのまま証拠になって、判決につながっていくこと、そのような裁判のあり方に疑問を持ったB型肝炎の疫学の専門家ではない与芝真彰教授(専門は劇症肝炎)が事実を積み重ねた論理で証言を行ない、一審での敗訴から高裁、最高裁での逆転勝訴にいたるプロセスが描かれております。
特に巻末の下記の記述に感銘しました。
札幌高裁や最高裁での判決が極めて緻密な論理のうえに構築されたものであつたことを知って頂ければ幸いです。
つらかったのはB型肝炎訴訟も劇症化予知の訴訟も相手方(国や県)の三人の証人が日本肝臓学会を通じての知己であり、その分野の「権威者」であつたことです。そのうえ、二人は東大の医局の先輩でした。お一人は既に亡くなられましたが、もうおひと方は健在で、現在も肝臓や消化器の学会のボス的存在です。この三人との対立は、その後、陰に陽に学会や厚労省の班会議での私の立場を不利にしました。
この先輩お二人を近くから見ていると、若いうちはともかく、東大出身者の中にはある年齢になり社会的地位が高くなると「権威者」になって自らの信念や患者さんの立場より国や県といった権力側に立つようになる人もいるのだと感じられます。(全文)
数年前、与芝真彰先生(現、せんぽ東京高輪病院長)と出会いました。
「生老病死」は与芝真彰先生が昭和大学藤が丘病院を退任したときのブログです。
http://www2.shizuokanet.ne.jp/sabu/back/090316.html
医療格差 角川SSC新書 (角川SSC新書)
著者が生命や命と表記せず「いのち」と表記する理由は、個人的には人間の尊厳を「生きる」ということに染みこませたいからだと勝手に解釈しています。ただ単に「生きる」のではなく、人間の尊厳を持って「生きる」ことができる社会を第7章でいう「いのちが最優先される社会」と言うのだと思います。
でもそうした「いのち」を最優先するために最も重要な医療制度には、様々な問題点があるということが本を通して分かります。患者ではないから、いまは健康だから、といった理由で関心を持たないということはあってはならないと思うし、世界的に素晴らしい制度である国民皆保険で多少なりとも全ての国民がこの医療の問題には関係あります。
ではいまどういった医療の問題が起きているのか?それを知るということに関してはこの本はものすごくお薦めできると思います。