ニッポンの城 (エイムック 1872)
城の選択、写真、解説記事、レイアウトなどは非常に良いと思う。
ただ、ルビ(読み仮名)の振り方が素人丸出しで、見苦しいとか情けないとかいう以前に、
見づらくて仕方が無い。
担当者の無知とか手抜きとか、いろいろと事情はあるのだろうが、こんな雑な仕事を
する職場は許しがたいというか、すごく羨ましいというか、なんだか複雑な気分になる。
一番目立つ見出しや城の名前のルビがこの有様では、内容もあまり鵜呑みに
できないかもしれない、などと思ってしまう。
素人がワードで編集しているわけでもないだろうに、基本中の基本すらできていない
文字組みというのは、商業出版物としてはダメすぎる。誰もチェックできる者が居ない
というのであれば、出版社の「格」を問われる由々しき事態だと言わざるを得ない。
内容的にはなかなか良さそうで、本当はかなり欲しかったのだが、どうしても
美意識が耐えられずに購入を見送ってしまった。
よくわかる国宝 国宝でたどる日本文化史 (楽学ブックス―文学歴史)
基本的に見開き2ページで1つの国宝を素晴らしい写真とともに紹介しています。国宝ばかりですから、眺めているだけで美術鑑賞になっています。ただ誌面の関係でしょうか、国宝第1号となった広隆寺の弥勒菩薩や法隆寺の玉虫厨子など、写真入りで紹介してほしかったものもありました。
本書の内容です。
国宝鑑賞への招待、これだけは知っておきたい国宝鑑賞用語、都道府県別国宝の数は?、見ておきたい国宝はここにある
縄文・弥生・古墳時代 日本文化の黎明期、縄文のビーナス(尖石縄文考古館)、縄文雪炎 火焔型土器(十日町市博物館)、これも見ておきたい! 縄文、弥生、古墳時代の国宝
飛鳥時代 仏教に国造りのベースを求めた、高松塚古墳壁画女子群像(高松塚古墳)、丙子椒林剣/七星剣(四天王寺)、菩薩半跏像(中宮寺)、百済観音(法隆寺)、救世観音(法隆寺)、釈迦三尊像(法隆寺)、金堂(法隆寺)、五重塔(法隆寺)
奈良時代 仏教が国家権力の象徴となった、阿修羅像(興福寺)、盧舎那仏坐像(東大寺)、正倉院(正倉院)、薬師三尊像(薬師寺)、鑑真和上坐像(唐招提寺)、十二神将立像(新薬師寺)
平安時代 権謀術数と怨霊が闊歩した、薬師如来立像(神護寺)、中尊寺金色堂(中尊寺)、弥勒仏坐像(慈尊院)、十一面観音立像(法華寺)、醍醐寺五重塔(醍醐寺)、釈迦如来立像(清凉寺)、平等院鳳凰堂(平等院)、阿弥陀如来坐像(平等院)、雲中供養菩薩像(平等院)、平家納経(厳島神社)、三十六人家集(西本願寺)、源氏物語絵巻(五島美術館)、伴大納言絵詞(出光美術館) 鎌倉時代以下は字数の関係で省略します。
怪奇探偵小説傑作選〈4〉城昌幸集―みすてりい (ちくま文庫)
この傑作選は全5巻なのだが、他の四人、岡本綺堂、横溝正史、久夫十蘭、海野十三は名前も知っているし、それなりのイメージもあった。しかし不勉強なことに、この作者だけはまったく知らなかった。
ショートショートの先駆者ということだが、馴染みのある星新一の作品が最後の一段で予想外のところに出てしまう梯子のような作風だとすれば、城昌幸の作品は最後の一段でいきなり梯子自体がなくなってしまうような、そんなびっくりするような作風に感じた。
とにかく冒頭の「艶隠者」だけでも目を通してほしい。コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズのような謎に満ちた導入部からストーリーがどう展開するか。おそらくこの一作で本書を通読したくなる衝動に駆られると思う。自分がまさにそうだった。
大正から戦前戦後の暗黒から混沌の時代を背景に、あるときは怪奇・幻想的な味付け、あるときはSFや落語の人情話の香りとバリエーションが楽しめる作品集だ。
人魚鬼―若さま侍捕物手帖 (徳間文庫)
篠山藩主の息女うつぼ姫。若さまをして「あの女に惚れなければ男じゃねえよ」とまで言わしめた稀世の美女。藩主の信任厚い医師江川了巴は、不老長寿の秘法を求め、姫を人魚のすむという南海の孤島に連れてゆく計画をたて、道中警護のため、剣客小森新太郎を雇います。
本編は、捕物帖というより伝奇ロマンと言ってよいでしょう。姫のあまりの美しさに魅入られた男どもが、姫をわが物にしようと、あの手この手の策略を弄します。物語は、剣はめっぽう強いが世事にはうとい新太郎を中心に展開しますが、要所要所で若さまがどこからともなくあらわれ、姫の危難を救います。姫はいつしか若さまに恋心をいだきますが、若さまは、「君子危うきに近寄らず」とばかりに素知らぬ顔。とんだ野暮天ですが、若さまはおいと坊のお酌でちびりちびりきこしめしてるほうが性に合うと見えます。