恋愛中毒 (角川文庫)
読書というのは、読んだときの年齢や自分が置かれている場によって、同じ本でも受け止め方、感じ方が全く違うものになります。その意味で再読が必要なのです。再読によって自分の変化を感じることができるからです。しかし再読に堪え得る作品はそんなにないのが現実ですが。
本作は数年ぶりの再読。今回もやはり終盤にきて作者にやられてしまいました。恋愛を扱った物語のなかでも秀逸な出来栄えです。恋愛物はビタースゥィートに限ると思っておりますが、本作はビターのなかのビターだけを純粋に抽出して取り出した、常人には真似できない作品となっています。読んでるそばから頭の中を映像が駆け巡ります。恋愛は怖い、人間をダメにする無限の力が秘められている魔物です。ちょっとのお互いの感情のすき間からその恐怖は広がっていきます。その先に何があるのか、本作はそこを追求しています。その追求は真剣であるからこそ読者である我々は目が離せなくなるのです。
20代後半以降の男女は必読です。物語の波に乗っていくことも出来るし、自分だったらと考えながら読むこともできます。そこに新たな「自分」を発見することが出来うる物語であると思います。
林真理子さんの解説も本物の「解説」です。物語を読み終えてから、解説を読むと物語の理解が深まること間違いなしです。
みんないってしまう (角川文庫)
自分が普段思っていても気が付かない様にしようと蓋をしている感情がこの本を読む事で溢れ出てしまいました。
主人公達が失くしてしまうものは、どれも努力してもどうにもならないものばかり。
それでも失くしてしまわない様あがき続ける。
あがいたところで無駄なのに。
無駄と自分でも解っているのに。
でも作者は、そんな喪失感を感じる事が辛く悲しい事だけでないという事を読者に教えてくれます。
その先にある未来に光を灯してくれた、人に対する作者の慈愛のまなざしを感じる事ができる作品です。
「ファースト~」にはあまりそれを感じなかったんですよね。
関係ないのですが。
プラナリア (文春文庫)
私にとってこの本は衝撃的な一冊だった。「乳癌」と言う病気になった本人にしかわかり得ない核を鋭く描いていると思った。私はこの本をきっかけに受診しそして「乳癌」の告知を受けたのだった。一生忘れられない一冊となるだろう!!
群青の夜の羽毛布 [DVD]
小説が面白かったので、見てみました。
本上まなみの「さとる」玉木宏の「鉄男」藤真利子の「母」、それぞれが,はまり役だったと思います。特に藤真利子は良かったです。厳格で、いつもブラウスのボタンをしっかり上まで留めている彼女が、「女」として鉄男に迫るシーンなどは、鬼気迫るものがありました。
ただ、原作と比べ、つくりが大雑把で、薄い感じが否めませんでした。さとるの対人恐怖症の描き方が、もっと彼女の言葉として出てもいいのではないかと思ったのでした。鉄男に対してまで、こんなにも無口でなくてもいいのでは?
原作で語られる人物の心の動きが、映像になったとき、演技だけでは伝わらない部分が多い気がしました。
ちょこっと出てきた、山本文緒先生、いい味出してました。
群青の夜の羽毛布 [DVD]
家族というものについて、考えさせられました。見ていて辛いと思っていたのですが、最後、救われました。私は終わり方で、その映画の好き嫌いを判断してしまう傾向があるもので。玉木宏のファンなので、見たのですが、少しふっくらしてますね。かえって貴重な映像かも。鬼束ちひろの曲は、合っていてとても良かったです。