ザ・ファイター コレクターズ・エディション(2枚組) [DVD]
最初のシーンから、登場人物に乗り移ったかのような兄ディッキー演じたクリスチャン・ベールの演技が凄いです。「バットマン」の大富豪役とは真逆の、ヤク中になり切る。歯並び替え、髪を抜き、13kg減量も凄いけれど、フラフラと重心の高い歩き方、焦点がズレてボケた目つき、その振舞いに違和感なく説得力があります。エンドロール前にオマケ映像として本人が登場するんですが、もう、容貌も話し方もソックリですよ。カメレオン俳優クリスチャン・ベイルの面目躍如ですね。
主要登場人物達の人物造形がみな素晴らしく、もちろん、主人公のマーク・ウォルバーグもずいぶん体重を絞ったようで、家族に翻弄されながらも自分を貫くボクサーぶりがカッコイイです。母親を演じたメリッサ・レオの、人をイライラさせる演技は凄かったし、お姫様俳優のエイミー・アダムスが、一転、野性的な魅力を発揮しメリッサ・レオとは好対照でした。
本作は、主人公ミッキーがボクサーとしての才能を発揮していく物語であると同時に、問題をかかえたファミリーが変わっていく物語であり、兄ディッキーが麻薬中毒から脱出する物語でもあるという重層的な構造になっています。それらが相互に深く関連しあっている描き方は脚本、演出ともに見事であり、感動を増幅させています。二人の兄弟が自分自身と闘い、過去を乗り越え、二人三脚で夢を手に入れる。
印象的だったシーンのひとつに、ある日車の中で、いつまでもダメな生活を続けるディッキーのことを母親が嘆くのですが、そこでディッキーがビージーズの「ジョーク I started a joke」を口ずさむシーンがあります。歌詞の内容は、
僕がジョークを言ったら
それを聞いた世界が泣いた
それが僕をからかったジョークだなんて思ってもみなかった
だから僕は泣いた
そしたら世界が笑った
自分は笑い物だって、もっと早く知るべきだった
ディッキーの境遇とピッタリで、なんだか、胸にジーンときました。
他にも、レッド・ツェッペッリン、エアロスミス、ローリング・ストーンズのなど、60・70年代のロックが印象的に使われています。
ディッキーは弟のことを一番に思い、二人の夢である世界チャンピオンを叶えかったのに、あろうことか弟の成功を妨げていたのは、他でもない自分や家族だったんですね。
二人それぞれが自分自身と闘い、過去を乗り越え、ようやく世界タイトルマッチのチャンスを手にし、クライマックスの戦いとなります。
21グラム (初回出荷限定価格) [DVD]
昔観たときはなんか面白いような気がして、最近4年ぶりにレンタルして鑑賞したら全然心に刺さらなかった。まず時系列をいじる必要がないし結局テーマは何なんだ?命は儚いけど重いってことが言いたいのかな?それとも21グラムぐらい軽いから何でもあり、何がいつ起こるかわかんないから気をつけてねって感じかな?そんなことは言われなくてもわかってるっつう話だし。主人公と遺族の奥さんの行動もケイソツだとしか感じられないし、全体を通して消化不良すぎて話にならないし。何で昔いいと思ったんだろ?でも良かった。なんか深いようで浅いなあって。ナオミワッツとあの信仰深すぎるおっちゃんの演技は良かったから星は3つで。暗い映画でもバベルとかクラッシュとかは深いなあって思うし何回も観たいなあって感じる。ミリオンダラーは後半が浅いよね。テーマは深いのに書き方が浅い。まあ話はそれたけどこの映画は何回も観たくはならないね。
でも世の中は理不尽なことだらけだからね〜
ありっちゃありなんだろうけどオレは普通だったな。
ザ・ファイター コレクターズ・エディション [Blu-ray]
実話ベースの、話自体はドラマチック、
詳しくないけど、俳優たちの演技も、多分いいのだと思う。
ボクシングを使って家族の関係を描くのも、
ある意味王道定番。
良い映画になる要素満載。
しかし、カユイところに手が届かないとでもいうのだろうか?
どちらにも振り切れていないというか・・・
あぁ、だから賞をとれたのか。
メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬 スペシャル・エディション [DVD]
枯れてるんだけどギラついてる、それこそ男の憧れるオヤジ像だと思う。映画の中だけど、そんなオヤジを1人見かけた。
ジョーンズはこの国ではすっかり「BOSS」のCMのせいでハリウッド俳優というイメージが湧きづらくなってるし、ましてメガホンを取っていると言うと、「イーストウッドの間違いじゃね?」と言われかねない。そんな彼の初監督作品にして当時カンヌで喝采を浴びた本作は、アメリカ-メキシコの国境を舞台に「移民問題」という現代的テーマを落とし込みつつも、どこか寓話のようなロマンに満ちたロード・ムービー。
ギジェルモ・アリナガ脚本らしい、時間軸を錯綜させた手法は本作に関して言えば大して必要無いなんじゃないかとか、このオヤジ、こんな荒療治させなくても……とか、色々突っ込めなくもないんだけど、全編にわたって映し出される美しい原野と、ほとばしる男気と哀愁を帯びたジョーンズを前には物言えなくなる、そんな圧倒的なオーラを放つ作品。
何より良かったのが、このオヤジが普段から義憤に燃えるような品行方正な奴ではなくて、どうしようもない女に手を出し、こんな無茶な方法でしか国を越せない頑固で不器用な奴だということ。逆に言えば、こんな無茶苦茶な奴だからこそ、仁義に友情にと燃え上がってしまったのかもしれないということ。
ただ、友人との約束というだけで、このカウボーイはこんな無謀で危険な旅を決断したんだろうか、と見ながら思った。あの「退屈」という前線が完全に停滞したかのようなアメリカのド田舎(メルキアデスとの友情よりも、徹底的にそれは描かれている)で、彼はここから出て行くきっかけを探してたんじゃないかと。
西部劇にとって、メキシコは重要なテーマの一つ。荒野を越え、リオ・グランデ川を渡ると、言葉も文化も見た目も違う人たちがいる。男はそこで新たなエネルギーでギラつかせる。島国の日本人には決して理解できない国境という名の興奮。友の死によって、目に見えないその線の存在を日々強く感じていた男は一気に触発された。ラストまで見ると、よりそう捉えてもいいなあと思った。
フローズン・リバー [DVD]
貧困と格差が支配する「もう一つのアメリカ」を垣間見せる映画です。
テーマやモチーフがとても独特だけに、知識としても仕入れる価値あり
というか、「こんなことがあるのか・・・」という感想は抱けるだろう
という確信はあります。
厳しい現実を活写したドラマですが、絶望感が漂っているかというと
そうではなく、あちらこちらに力強い希望を見いだせます。
おそらくその理由は、
社会問題をモチーフにしながらも、物語の軸が「母と子」に
置いてあるからでしょう。
過酷な現実に翻弄されて、切れそうになりながらも
力強く結ばれていく母と子のその絆が描かれています。
変な言い方ですが、いろいろな場面で「人情味」を感じる、
そんな映画です。
静かに感動出来る作品でした。メリッサレオの演技も圧巻です。