ベスト・オブ・ベスト/日本の名歌
瀧廉太郎作曲の「荒城の月」「花」「箱根八里」、山田耕筰作曲の「この道」「からたちの花」など日本の古典的歌曲を始め、珠玉の作品を集めたと言える歌曲集です。この4枚組に収められた115曲は、後世に歌い継いで欲しい曲が沢山含まれていました。懐かしの小学唱歌や童謡も多く含まれていますので、幅広い年代に愛される企画だと思いました。
収録されている声楽家も素晴らしいメンバーでした。立川清登、伊藤京子、中沢桂、松本美和子、澤畑恵美、中村邦子、木村宏子、中村健、永田峰雄、斎藤昌子、吉田浩之、本宮寛子、そして関西を中心に活躍しながら、今や全国的な活動を広げている三原剛、畑儀文、そして日本の声楽界における重鎮・畑中良輔の「沙羅」の名唱を聞くことができます。ここに収録された何人かの声楽家の声を聴きましたが、CDとして聞くとそれぞれの発声法における個性の違いが結構分かり、新たな発見がありました。
録音年代が書かれていません。結構幅広い年代にまたがっているとは思いますが、聴感上の支障はなかったですね。ピアノ伴奏は、声楽、合唱伴奏に多くの録音を残している三浦洋一、浅井道子によるものが大半ですが、他に青島広志、塚田佳男、藤井孝子という名も見えますので、安定した音楽が展開されています。
これらの録音の貴重さは、何人かの方がすでに鬼籍に入られていることから日本の声楽家の歩みという点から見ても歴史的な価値を見出します。
全曲とも解説が書かれていますし、小山晃氏による声楽家の紹介も詳しいものでした。ただ出来れば伴奏のピアニストの紹介があっても良かったかな、と愛好家の一人として思います。
悪徳の栄え〈上〉 (河出文庫)
幾つか知っておくべき性語の類がある。「千鳥」とは女性同士が張形を使って行う性行為のことであり、「何する」とは即ち「性交する」ということ、「若気(にやけ)」は、男色の相手、もしくは肛門。「玉門」は女性の陰部。まあ大体文脈でわかるけど。澁澤訳はなかなか読みやすいが、裏教養小説とは言い当て妙だ。美徳や道徳などは、社会が個人に押し付けた次元の低いもので、真の幸福は美徳などという欺瞞を超越して悪に徹する事だ、というのは、単にサドの戯言として看過するわけにはいかない哲学的命題を含んでいる。さて、放蕩の限りを尽くすジュリエットの運命や如何に。話は下巻に続く。
隠し剣秋風抄 (文春文庫)
今回映画化ということで、もう一度 三村新之丞=木村拓哉という前提で読み直してみた。
既にマスコミ・CM等でご存知の通り、「盲目の侍」。ただし「座頭市」と異なり目は開いている。文中 「・・・以前とちっとも変わらずに美男子なのに・・」「・・・外界が見える物のように開いている」。
要するに“かなり腕の立つかっこいい若侍”=木村拓哉 あのいい顔がそのまま武士になる。
ピッタリである。監督が、「この侍は、木村拓哉でいきたい」と最初から願っていた通り、
”完全なるはまり役”である。
ストーリーはご存知の通り、
「盲目にならされて、妻の・・・が・・・・・に・・・・・・・させられて・・・・・」、
「武士の一分」にかけて・・・」
泣かせどころアリ、しかし最後は「ハッピーエンド」。
藤沢作品“文句なし!”
小説は昭和55年の今から26年前の作品だが、
映画にするなら多分「木村拓哉」以外にこの役はいないであろう。
今回の作品は「たそがれ清兵衛」「隠し剣鬼の爪」に続く藤沢周平作品三部作の最後。
「たそがれ清兵衛」は原作の短編3編を、
「隠し剣鬼と爪」は2編を合わせたストーリー。
今回は「盲目剣谺返し」1編、かなりオリジナルに近いはずである。映画公開が楽しみである。