ソウル・オブ・マン [DVD]
主には「スキップ・ジェイムス」と「J.Bルノアー」の2人のブルースマンにスポットを当てたドキュメンタリーです。(「ブラインド・ウィリー・ジョンソン」も出てきますけど、ちょっと扱いが違います。)
私も一時ブルースをかなり聴いていた時期がありましたけれども、この二人について正直名前くらいしか知りませんでした。
なんとも数奇な物語になっていますが、ストーリー自体はノンフィクションということ以外に取り立ててどうこう言うべきこともありません。
というかやはり、音楽ですね。
「スキップ・ジェイムス」も「J.Bルノアー」もキャラクターがユニークで演奏シーンはどれもひきつけられました。
同じブルースでもこうもキャラクタが被らないものかと感心しますね。
当然ながら一般的に思われているところのブルースミュージックとは大分受ける感じが違うのではないでしょうか?
また、これをひと癖あるミュージシャン達がカバーします。
(ルー・リード、BECK、ジョン・スペンサー、ボニー・レイット、カサンドラ・ウィルソン、ルー・リード、マーク・リボー、ニック・ケイヴ、ボーン・バーネット、ガーランド・ジェフリーズや他にもいたかも)
このカバーもかなりよくできていて、すばらしい。
音楽のドキュメンタリーでよく眠くなるのは音楽をちゃんとフューチャーしていないからだと思う。
魅力ある音楽を聴かせながらのドキュメンタリーであれば、たいしたストーリーがなくてもかなり印象が良いはずで、この作品に限ってはさらにストーリー(実話)も印象深く心に残ると思う。
White Light White Heat
すべてを真っ白に。灰に帰してしまうような冷めた狂熱を感じさせる究極の1枚。
計算ずくで、あるいは必死で練習したからといって、かと言ってまったくの偶然が重なって作られた作品ではない。
彼らこそキング・クリムゾンやイエス等の一連の「プログレバンド」とは真逆の存在だろう。
注)彼らのことを否定するつもりはさらさらありません。尊敬しているし、音楽としては今でも素晴らしいと思っています。
この盤は、文字通りロックの奇蹟。現代音楽上がりのイギリス人ジョン・ケイルと、大胆不敵で繊細な文学青年ルー・リードとのガチンコ・バトルが体験できる彼ら唯一の作品にして、ロックのたどりついた終着駅のような作品だ。
本当のロックとは、私が思うに創造的混沌の世界(=カオス)である。他は全て、ニセものかロックっぽい事象にすぎない。でもそれで満足できてるんなら、私は一向にかまわないけども。
現代音楽のミニマリズムとR&Bがきわどく交差した「シスター・レイ」は最高のロックな名曲。ドアーズの「ジ・エンド」や「音楽が終わったら」、スーサイドの1枚目同様稀有な体験性をもった作品である。
ルー・リードの八方破れに乱れ散るギターがナイーブに美しい「アイ・ハード・ハー・コール・マイ・ネーム」。
延々と・・・壊れながら繰り返されるリフが印象的な「ホワイトライト/ホワイトヒート」。
あのスピッツがパクった「レディ・ゴディバズ・オペレイション」・・・
本物のロック・・・サイケでもヘヴィ・メタルでもプログレでもない名付けようのないものは今もこの作品の中にある。是非とも体験して欲しいロックの遺産。
ルー・リード:ロックンロール・ハート [DVD]
ヴェルベット・アンダーグラウンド”以前”(!)のルー・リードから始るところにこの「メイキング・オブ・エポック・メイキング・ミュージック」映像の真価が表れる。余程のルー・リード・ファンでもなければ彼がクソみたいなポップソングの作詞作曲家として音楽界にデビューしただなんて知らないだろう(僕も初めて知った)。しかも本人の口からそれを聴くことができる。
そこからウォホールとの出会い、ヴェルヴェッツの邂逅、結成、空中分解、ソロの作品群の意義が本人と彼をとり巻くアーティストの口から語られていく。挿入されるライヴ、リハーサルの映像も全て貴重であり、胸ときめくものだ。何しろ初期のヴェルヴェッツのライヴ映像なんてムチャクチャである。デイヴィッド・ボウイとデイヴィッド・バーンという70年代から80年代のロックの変革をもたらした二人が同じドキュメンタリーに登場するのも楽しい。嬉しい。またマスタリング・エンジニア(ボブ・ルドウィック)などが話すリードのサウンドへの拘りも恵心のいく語りである。
そしてこのドキュメンタリーを重要なものとして位置づけているのはルー・リード本人の、この映像作品以降の音楽のカッコ良さだ。ボブ・ディランの「ノーディレクション・ホーム」ほどの話題性はないが、40年近くもロックをやっていられる力と、ロックへと突き動かす不穏な世界の動きへの眼差しに、日本人としてちょっと羨ましくもなる。この国でロックを40年やれているアーティストがどれだけいるのか、どれだけ現れるのかを思う。
Velvet Underground
Velvetsの音楽の評価はいつも「前衛性」とか「後世に最も影響を
与えた」とか、やたら仰々しいです。その割に実際に聴いてみて、
その前衛性を理解するには、当時の時代背景やらメンバーの生い
立ちやら、アンディウォーホルとの関係やら、色々勉強した上
でないと中々難しい、という非常に厄介な代物です。前知識なし
で聴いても、ただ古臭くてノイジーで、歌詞は変だけど、歌詞
カード経由でしか分からない、という感じですものね。ところが
このアルバムだけは、圧倒的に違います。悲しくて優しくて、
泣きたくなります。前知識なしでも、ただそこにある、もの
悲しくて、それでいて聞き手を包み込んでくれる作品群の前では、
小難しいことを考える気も失せてしまいます。特に出色の出来
は4曲目。色々な人がカバーする有名曲ですが、やはりオリジナル
の凄さには敵いません。結婚した人を愛した作者が、叶わぬ恋を
嘆く、という至って内容はシンプルなものですが、心に染みます。
振られた時に聴きましょう。何とかやっていける気がしてきます。
9曲目でちょろっと往年のVelvets節が出るのもご愛嬌。これが逆に
アルバム全体のバランスを良くしているのが不思議。
プラスティック・ビーチ (エクスペリエンス・エディション)(限定生産盤)(DVD付)
やはりデーモンアルバーン、天才です。
ミュージシャンとしてでも、ボーカルとしてでも、ソングライターとしてでもありません。実はこの人、もともとプロデューサー的な能力が天才的なんです。
このアルバムはあまりにもたくさんの人とコラボしていて、誰が参加しているのか全く把握しきれないほどですが、アルバムとして全く散漫な印象がありません。むしろそれどころか素晴らしいコンセプトアルバムと言えるほどです。
曲ごとにおそらく参加しているアーティストが違うと思われるのでアルバム全体としての音を語るのはそもそもナンセンスなのですが、あえてそこを語るなら、キーボの背景的な使用、骨太のベースライン、牧歌的だがどこかねじれた旋律などが新要素として耳に残りました。(キーボではなくてギターに特殊なエフェクトをかけている音なのかもしれませんが)
一人とコラボしただけで焦点をしぼりきれないアーティストが多いのにこの統一感は圧巻の一言。やはり流石はデーモンです。the good, bad, and the queenで正反対のグルーヴを持つベースとドラムを見事共存させたように、またここに奇跡のミクスチャーサウンドが実現しています。
ファーストのころはところどころでブラーとの共通点も見えましたが、アルバムごとにブラーからの飛距離を増し、もはや音楽的な共通項は見当たらないほどに。
ラストアルバムにふさわしい充実した傑作になっています。
DVDは作成中の映像カットの寄せ集め。作成を楽しんでいる感じは伝わってきて興味深いですが、個人的には繰り返して見たいようなものではなかったです。
P.S. ラストアルバムじゃないかも…だそうです。曲がめっちゃ余ってるとかなんとか(by デーモン)。聴きたい…!!