青い山脈 前・後篇 [DVD]
「青い山脈」はオリジナルというか1949年に今井正が監督した作品が今でも評価が高い。それは敗戦後の解放感が「新子」というヒロインに象徴されているからだろう。杉葉子さんという痩せた女優さん(食料事情がまだ悪い)の水着姿は今の申し訳程度のビキニよりセクシーである。シンボリックだから。吉永小百合さんの「新子」も悪くない。何を「象徴」しているのか?多分「高度経済成長」と1960年代の「飛んでる」女性かな。「素顔」の吉永さんは目立たない地味めの「ちょっと綺麗な」女子大生である。教えられなければ解からないほど。吉永さんの出世作「キューポラのある町」で川原でしゃがんでいるシーン。はっとするような表情が何を意味するか中学生の私には理解出来なかった。クラスメイトの山口県のジェイムス・ディーンを自称(ちょっと似てた)Nが「あれは初潮を迎えたんだよ」と教えてくれた。「初潮」って何?と聞いたら呆れた顔をしていた。私は「性教育」というものを10分間も受けていない。保健の時間では「省略」である。女性の手を握ったのはフォーク・ダンスと日比谷公園で佐々木さんと。内ゲバが勃発したから逃げたがしかし手を握ったあと何をするか解からない。21歳でMさんの「フレンチ・キス」に気絶しそうになった。その後Mさんは女性の「生理」からいろいろ教えてくれた。ほんとに今でも感謝してます。これがほんとの「個人教授」
陽のあたる坂道 (角川文庫)
青森と言ってもある作家とは
こうも、違うものかと云うほど
前向きな温かい作家ですよね。
明るくすこやかな 人の温かさや優しさ、
誰しも大小あるだろう劣等感への扱い方。
活き活きと描かれたものが少ない現代だからこそ
余計に心地良く感じます。
信次を倉本たか子が愛することも自然で
たか子と信次に語らせていることが
伝えたいことなんだろうなと思います。
こうした学生を描く雰囲気は、
曽野綾子女史の28才から35才当時の
いくつかの小説ともテイストが似ていて
お気に入りです。
青い山脈 [DVD]
何度も映画化された石坂洋次郎原作の「青い山脈」だが、リアルタイムで観ていない私も、戦後まもなく制作されたこの「青い山脈」がベストだ。この種の映画では珍しくキネマ旬報のベスト10の2位。名匠・今井正監督の作品は戦後民主義の申し子のような映画だ。話としてはたわいないものだ。しかし、映画全体に「希望」という空気が溢れている。眩しいような原節子の美しさ、池部良の六助も爽やかで。素直な気持ちで楽しめる。こんな時代もあったのかと時の移り変わりを感じるが、なんど観ても清々しい気持ちになれる。懐古的な価値ではなく、日本映画腐朽の名作と言ってよい。それにしても、もう少し安くならないものか。
陽のあたる坂道 [DVD]
私のかすかな記憶にうちのお手伝いのキミちゃんと週末に行った映画館での裕次郎がある。
それまでキミちゃんのお気に入りは東映の時代劇の中村錦乃助で
森の石松だったり若衆だったりさすらいの剣士だったりして週末のスクリーンで輝いていた。
キミちゃんがある日私をいつもと違う映画館に連れて行ってくれた。
始めてみた現代劇で若くてキラキラしてイタズラっぽい笑い顔の青年に館内から凄まじい嬌声が飛び交っていた。
何か見てはいけないものを見たような後ろめたさは東映時代劇にはないクールな都会青年は
大人の言うところの不良だと感じたからなのだろう。
今思うと裕次郎の絶頂期の映画はキミちゃんとほとんど見ているかも知れない。
キミちゃんも雇い主である我が親から裕次郎を禁止され、口止めの板チョコ(キミちゃんには痛い出費だったと思う)とともに
私と安全な東映映画に行く振りをして日活を見に行くほど大ファンだったんだろうと思う。
ゆったりとした映画の中の時の流れ、丁寧な言葉遣い、懐かしい住宅街の景色、踏み荒らす人も少ない雪山の白、シェパード・・・
総てが懐かしい子供時代に浸れる私のタイムマシンがこの映画である。
「錦之助見たって言わなきゃ駄目だよ」
チョコレートとともに繰り返される毎回のキミちゃんの台詞も甦ってくる・・・・