グリズリー―アラスカの王者 (平凡社ライブラリーOffシリーズ)
星野道夫さんの本はほとんど読んでいます。ただ、写真集となると値が張り書店立ち読みで、その世界に入ることたびたび。この本は、写真の迫力には欠けると思われがちな文庫版ですが、星野さんの”命”を見つめるメッセージが十分に感じられるものでした。せかせかした毎日、ふとポケットからこの本を取り出して、アラスカではこの熊の親子が静かに春をじっと待って冬を生きているんだと思うだけで、心が休まるようなphotが一杯です。星野ファン必携!!。
Grizzly Man [DVD] [Import]
「熱に浮かされた変わり者」を追求し続けるヴェルナー・ヘルツォーク監督によるドキュメンタリー映画。本作品のヒットで、ヘルツォーク監督に新たなファン層が確立されらしく、以降、新作が続くようになった。
挫折した俳優、ティモシー・トレッドウェルがアラスカに赴き狂的なグリズリー保護者になっていく。巨大なグリズリーと交われる自分がいかに卓越した人間か、と世に訴えるかのように。哲人・ヘルツォーク監督の淡々とした語りにかぶさるトレッドウェルの奇矯な言動を見ていると背筋がザワリとしてくるが、ヘルツォーク監督がどかこでトレッドウェルを「家族の一員」と見なしているのも伝わってくる。彼もまた、ヘルツォークが愛した俳優、クラウス・キンスキーが造形した人物たちと同じ種類の人間なのだと。
野生のグリズリーに何やら愛らしい名前をつけて呼ばわるトレッドウェルを眺めながら、「グリズリーにとって人間である彼は単なる『餌』だ」と言い放つヘルツォーク監督のナレーション。アメリカのロマンチストとドイツのリアリスト。
トレッドウェルが行っていたのは動物愛護ではない。別の何かだ。そして、何も伝わらない対象に何かを勝手に投影し、その対象によって八つ裂きにされる。偶然残されたトレッドウェルの死に際の音声の公表を避けたヘルツォーク監督の判断が感動した。そう、本作品はスナッフフィルムではないのだから。
トレッドウェルが狂人なのか英雄なのかは分からない。ただ、ヘルツォーク映画に相応しい人間だったことは分かる。私的な思いだが、トレッドウェルがグリズリーを恨まずに死んだと思いたい。
Veckatimest (WARPCD182)
一聴して、前作にあった爆発力や躍動感、祝祭感が薄れ、悪い意味で前衛的になったように感じ、よく分からない作品だと思ったんですが、意外とリピートしちゃう作品です。
いわゆるスルメ盤ってやつだと思います。キャッチーなのは、前作の延長っぽい冒頭2曲ぐらいです。けっして分かりやすくないけど、聴く度、毎回新しい発見があります。こんな音があったのか!と思ったり、今まで気にしてなかった音の響きが突然魅力的に聴こえたり。中々作品の全体が見えない分、聴くたび新鮮に聴こえます。
この内容でビルボートの8位に入って、世界中でヒットしてることが、彼らの力量を表してるように思いますが、売れっ子になった事によってバンドがどういう変化をするかが楽しみです。
Compass (WARPCD192)
BECKプロデュース。
なんとも形容しがたいですね。触れ込みではエレクトリックなんですが、未来や洗練よりも過去や野暮を感じます。メロウなんですが、エレクトリックが混じります。おそらく時代の先端から外れたそのエレクトリックさが野暮ったく、オーガニックさを残し、懐かしい。ファンキーであるとは、そういうことなんでしょう。2はトム・ウェイツみたいですね。3は古い表現になりますが、ディスコのチーク・タイムで流れそうな曲ですね。7は単調さがわかりやすくていいです。でも、もちろん聴いていて不快ではありません。
自分の力量の限界を悟り、ソウル、ファンクの正統派との真っ向勝負を避け、現在の音楽業界のすきま、すきまを狙っているさまには好感がもてます。
ボーナス・トラック以外の歌詞・対訳は、折り畳まれた紙に印刷されています。ボーナス・トラックは、ひょっとするとベックが即興で作ったような曲なので、なくても買っていい、と思います。