東京大学応援部物語
ちっとも勝てない東大野球部の応援――ということで、もしかしたらコミカルなものかもと思っていたら、全く違った。
平成14年1年間、東大が久しぶりに勝ち点を挙げた年、
東大応援部に密着取材したルポルタージュである。
「負けたのは応援部の盛り上げ方が足りなかったからだ!」
彼らは自分たちの応援をそう意味づける。だが著者は、
「もし東大野球部が連戦連勝していれば、応援部の人は、応援とは何か、なぜ応援するか、をこうまで突き詰めて考えなくていいはずだ」
とも言う。たしかにその通りである。
一般学生は「自己満足じゃないの」と冷ややかだ。
0−19で負けている9回裏に「一発逆転!!!」と応援する空しさ。
彼らはどこまで本気なのかと、著者は問いかける。
彼らは、野球部だけを応援しているわけではないが、他のスポーツも概して弱い。
だから応援しても勝てない。そこで悩む。
「なぜ応援するか」――と。
本書は登場人物がそれぞれの経歴や人生観を背に、応援の意味を自問自答する苦悩を描いたものだ。
だから、読み進むうちに、これはかなりシビアなノンフィクションだとわかってくる。
強い者を応援するならまだしも、東大の場合は応援しても勝てない。
しかし応援部は、負けたのは応援部に責任があると考える。
これを自己満足というのはたやすいが、こうした究極の自己犠牲に、応援部の部員も本気で悩むのだ。
ラストシーン近く、退部を決めたあるリーダーが最後の明治大学戦にやってくる。
このとき「学生注目! わたくしは−、神宮が好きだ−」……と泣きながら呼びかけるシーンには、
私自身涙を禁じ得なかった。
私はかつて運動部にいて、応援部には大いに助けられた。
「いるだけ」で違うものなのだ。東大応援部には、そう思っている読者がいることを伝えたい。
文庫化にあたっての「あとがき」、三浦しをんさんの解説がいい。
「自己陶酔や自己犠牲なんて蹴り飛ばされて宇宙の塵になるぐらいの強固な意志と実践」
このひと言がすべてを言い表していると思った。
翼をください (講談社X文庫―ティーンズハート)
中学生が書いた小説だそうだが,文章も内容もしっかりしていて,そんじょそこらの「大人」が書いたものに遜色がない。だいしたものだと感心した。
たしかにいじめがテーマの小説であるということもできるが,この小説の世界はもっと広いと思う。
愛されたいのに愛されていないと苦しんでいた主人公の少女が,しだいに自分からひとを愛そうと,生き方を転換していく過程と,それにともなってひとりで立つことを恐れない勇気をみずからのなかから養い育てていく過程が,ひとつのものとして,小さな気づきの積み重ねとして,説得的に描写されていた。
読む人にも,ひとりで生きる励みを与えてくれる好編だと思う。
薬屋りかちゃん 2 (2) (アクションコミックス)
読んでいて、こんな場面ある!と思う内容である。
「処方箋通り薬を出してくれたらそれでいいのに」と思う方には、裏で薬剤師がどういうことを考えて行動しているのか読んでいただきたい。
薬屋りかちゃん 1 (アクションコミックス)
現役薬剤師が描く薬屋漫画。
ということで、結構期待してたのですが
それほどマニアックな内容では無かったです。
子供が嫌いなのに、小児科の門前薬局に勤める主人公「塩乃樹りか」。
正直、1話目の扉絵は「これ顔崩れてないか?」と画力に心配ありましたが。
もっとこう、薬局の専門用語がバシバシ来るかと思いきや
実際には薬剤師としての「メンタルな部分」を題材にしてる感じなので
「医療モノ」が好き!ってかたには、ちょっとあわないかもしれません。
まぁ、薬局で扱う薬とはいえ
結局は各製薬メーカーが「商標」取ってるので
「処方箋」の部分にも下手に文字かけないってのもわかるんですが。
(一部の薬品だけの宣伝となりかねない)
まぁ苦労はわかります。
帰郷の話では、一瞬、誰がりかちゃんなのか、わからなかった。
(似たような顔の人が出てくるから)
普段のキャラでは、山之内さんがイイ感じ。
BOX~袴田事件 命とは~ [DVD]
地味だがとても迫力ある映画だった。冤罪と死刑について考えさせられる。司法は常に真実を明らかにするものではない。時に見方によれば悪魔の代弁をするものであることを,死刑存置論者は知るべきである。冤罪が死刑廃止の理由にならないと考えるのは,無実の人間が濡れ衣によって国家に殺されることを許容するに等しい。司法制度は神の制度ではなく,間違いは無くならない。わが子を殺された親の気持ちで被告人を殺すことと,袴田さんが殺されることと,どちらか選べと言われたら,どちらを選ぶだろうか?それが死刑存置か,廃止かの議論です。