ドニゼッティ:歌劇《愛の妙薬》 [DVD]
まず値段に注目。この安さでこのクオリティはそうない。
ネモリーノをロベルト=アラーニャ、アディーナをアンジェラ=ゲオルギューという豪華夫婦(当時)キャスト。この二人の歌声の前には僕の意見など何の意味も成さないだろうから何も言うまい。
この作品、位置づけとしては「喜劇」だが、ネモリーノの立場からすれば八割方悲劇で最後だけ喜劇と言った所か。私に言わせれば、世の多くの男性が体験するほろ苦い「片想い」と言うものを色彩豊かに(だから喜劇的なんですね。セピア色だとほんとの悲劇になってしまう)描いたのが本作品なのだ。
特に、それまで気弱なネモリーノが、求め続けたひとの愛を得るために、自分の生涯の自由を金で売る際の決意に満ちた演技には心を打たれずにはいられない。
ドニゼッティ:歌劇「ルチア」全曲 [DVD]
もう、どこをとっても素晴らしいの一言です。しかしやはり主役の歌手陣が光っている。まずはルチア役のスコットである。たっぷりとした声量と透き通った声は聞く者を彼女の世界へと連れて行く。そして何よりも凄かったのが、[狂乱の場]でのコロラトゥーラである。コロラトゥーラというとカラスやグルヴェローヴァを思い浮かべるが。スコットも素晴らしい超絶技巧の持ち主だったことを再認識させられる。
そしてエドガルド役のベルゴンツィがまた素晴らしい。ドラマティックかつ甘いその美声はどんな役でもこなしてしまう。エドガルドのハイライトはもちろん最後の「わが祖先の墓よ・・おまえは昇天の翼をひろげた」であるがこの10分以上ある長い部分を完璧に歌いきる。高音域もしっかりしていうことがない。「わが祖先の墓よ」後のブラヴォーと拍手の嵐は印象深い。
ところが今回一番共感したのはエンリーコ役のマリオ・ザナーシである。これまで名前も聞いたことがなかったので、彼の歌唱には驚いた。何一つとして傷がなく、正統派ベルカントと言ったところであろう。容姿もよく、全てにおいて完璧である。バスティアニーニにも引けをとらないとおもう。録音が少ないのが惜しまれる。
舞台のセットも気に入りました。本当に非の打ち所がない舞台です。
まぁ、非があるとすればスコットの顔ぐらいか?
ドニゼッティ:歌劇《連隊の娘》ミラノ・スカラ座1996年 [DVD]
愛するべきはドニゼッティのオペラです。音楽にしてもドラマにしても、プッチーニやヴェルディに比べれば「深さ」や「凄さ」で見劣りするのは確かですが、徹底した「楽しさ」そして純粋な「気持ちよさ」は認めないわけにはいかないでしょう。その「解りやすさ」を「底の浅さ」として片付けてしまうのは、たとえ一理あるにしても、それはあまりにも無粋に過ぎる態度です。
彼女は戦場でフランス軍第21連隊に拾われ、快活かつ美しく育った兵士たちみんなの「娘」。それが主人公マリーです。兵士の服を着て、男さながらに気風のよい彼女ですが、それでもやはり年頃の娘。青年トニオと互いに恋に落ちたりします。
しかしそんな彼女の運命は、ベルケンフィールド侯爵夫人の登場により急展開を。マリーは侯爵夫人の姪だったのです。パリに連れて行かれることになるマリー。連隊の皆とも、彼女を想うあまり連隊に入隊したトニオとも、離ればなれになってしまうのです。
愛する人たちと別れ、一変した境遇のマリー。いかなる運命が彼女を迎えるのでしょうか。彼女にとって何が「幸せ」なのでしょうか―――
歌の上手さ、演技のコミカルな楽しさも申し分ありません。演出も変に気を衒ったところがなく安心の出来です。全くのカキワリな背景が特徴的ですが、このオペラのマンガ的雰囲気にはマッチしています。全体的に好感のもてる良質の上演になっています。
最後に待っているのは、説明するのが野暮なくらいなまでのベタベタなハッピーエンド。嗚呼、何たる哉!この愛さずにはいられない幸福感!
ベスト・マリア・カラス100
オペラを聴いたことがない人でも、マリア・カラスという歌手の名前は知っている。
本CDは没後30周年記念版であるが、CDのタイトル帯のキャッチコピーそのもので、オペラ入門者からカラス・マニアの方まで納得の100曲!だろう。是非、一気に聞いて、マリア・カラスの歌声に浸ってほしいものだ。それに価格も6枚組¥3000円(税込み)でお買い得だ。すこし、マニアチックに鑑賞のツボをいえば、彼女と競演してしている男声の豪華な歌唱も楽しみである。もちろん、現代オペラ歌唱と比べると時代かかった表現ばかりであるが、歌の本質について、彼女の真摯さが伝わる良い編集といえる。是非とも、一気に聞きとおして彼女のひいてはオペラの魅力の虜になってほしい。
ビルギット・ニルソン オペラに捧げた生涯
ショルティによる「はしがき」、そしてニルソンの「はじめに」を読んでこの本が類稀なるマスターピースであることを確信しました。何より読みやすい訳が有難い!秋の夜長が楽しみです。でも今晩で読みきってしまうかも・・・