ゴールデン☆ベスト
ヒット・シングルをセールス順に上位10曲(なのでもちろん、「愛のメモリー」からスタート。「私の歌」と「真夜中のエレベーター」は、同じシングルのA面B面)と、各種タイアップのついた楽曲から年代順に10曲、で全20曲、CD1枚にびっしり。思う存分、しげる―愛をこめて、敬称略―の甘く、時にワイルドな歌声に酔いしれることができる、ビクター時代のベスト盤である。
前半が売り上げ順、後半が年代順という構成ながら、意外にも流れはスムーズで、メリハリがきいており、聴いていて楽しい。
不滅の名曲「愛のメモリー」も当然いいけれど、それ以外の楽曲の中にも、自分なりのお気に入りを見つけ、また再発見することができる喜びがある。
リアルタイムでは小6の頃だった「私の歌」を聴くと、まるで子供の頃のような素直な気持ちがよみがえってくるし、しげる自身がコブラの声を演じたアニメ映画『コブラ』主題歌「Daydream Romance」も懐かしく胸に響く。少し肩の力を抜いたような、筒美京平さんらしい大人のディスコ・サウンド「銀河特急」、井上大輔さんならではのロケンロール「JAKA JAKA」あたりには、いま聴いて「おっ……!」と感じさせるカッコよさがあった。実写版映画『火の鳥』の同名主題歌のスケールの大きさ、ライオンズの優勝セールの時などに大音量で流れている「地平を駈ける獅子を見た」での、しげるの伸びやかなハイトーンボイスも、ハートをわしづかみだ。
聴けば聴くほど、しげるに限らず、布施明、前川清、尾崎紀世彦(敬称略。名前はブレイク順)………と、日本はもっとこういった、歌のうまい人たちのことを大切にすべきなんじゃないか、という思いがこみ上げてくるのだった。
濱口英樹さんによる、コンパクトでわかりやすく詳細な解説つき。楽曲ごとに初出発売データ、オリコン最高位、タイアップの詳細もわかるようになっている。
ちなみに、ジャケット写真はビクター時代ではなく、最近のしげるである。
俺たちの旅・青春の詩~俺たちシリーズ主題歌・挿入歌集~
70年代の日本テレビ系の大ヒット番組『俺たちの旅』を中心とする“俺たちシリーズ”の主題歌・挿入歌集アルバムは、95年にもコロムビアから「青春ドラマシリーズ ソングブック/俺たちの旅」という企画で発売されていたが、解説書の充実ぶりや音質の良さから見ても、今回のアルバムに軍配があがる。
全24ページのブックレットは放送リストや作品紹介、挿入歌の使用話数の解説も掲載されていて、詳細な番組ガイドとしても充実の出来栄え。サウンドもデジタル・リマスター作業で磨きがかかり、旧盤とは比べ物にならない素晴らしさ。なにしろ70年代の録音とは思えないほどシャープな音になっている。
また、「俺たちの旅」は歌詞の一部が異なっているTVサイズの主題歌もボーナストラックで収録され、かゆいところに手が届く構成だ。
ブックレットの裏表紙にはシングルやLPなど、当時のアナログ盤の懐かしいジャケットをカラーで掲載している。
俺たちに明日はないッス デラックス版 [DVD]
新文芸坐の特集で観ました。当日はタナダユキ監督
のトークショー(マニュキュアで飾る方が監督を務める
時代になったんですね。トークもお上手でした。)もあっ
て、本作を確か13日間で撮ったと、日数でいうなら昔
のロマンポルノみたいだったと言っていました。
でも中身のテイストは全然違い、等身大で不器用な
登場人物には親近感を感じました。ちょうど、ジョージ・
ルーカスの『アメリカン・グラフィティ』のように、彼らの
いずれもがうぶで純情なのが、とてもよかったです。
『百万円と苦虫女』もそうですが、この監督は奇をて
らわずにストーリーをしっかり語れる人です。だから、
俳優達が自分の役どころを無理なく演じています。ク
ライマックスの海で友野(三輪子)を比留間(柄本時生)
が助けるシーンは、波のゴーゴーという音と合わせて、
観ているこちらが怖くなるくらいの迫力がありました。
監督は、是非劇場で観てほしいと言っていました。し
かし、都会はともかく、地方ではこんなマイナーな映画
なかなか観ることができません。DVDで観るのもいい
と思います。様々な特典もついているようですし。
STARTING OVER
「浮世の夢」や「生活」の頃は、まさか20年も続くとは思っていなかった。
宮本浩次の才能を見逃さなかった大勢の人に感謝。
この最新作は彼の音楽的才能が遺憾なく発揮された記念すべきアルバムだ(月並みな言い方だが)。
でもなぜSTARTING OVERというタイトルなのだろう。辞書には「やり直し」などという意味まで載っているが。
そこで、ロッキングオン・ジャパンのインタビュー記事を読んだ。
お陰で、彼がこの17作目のアルバムをどんな気持ちで作ったのかがはっきりとした。
長年のファンの脳裏には、昔から聴いてきたがために思い込んだ「エレカシ像」がある。
それは本人にしても同様だった。
しかし、そういう誇大妄想的なロマンを超えたところで作られたアルバムだということが分かった。
同時に、ここ10年のアルバム群がなぜああだったのかもわかった。
『脳でなく耳で聴けるアルバム。
気迫の向かいどころが曲中心になることを自覚してやった、第一歩。
その分言い訳できないので、重い。新しいことを今回のアルバムでたくさんできた。
それが歌としてみんなにちゃんと届いたと思えればまた、ひねくれないで、きっとまっすぐ行ける。』
STARTING OVERとは、宮本浩次が音楽の原点を「見つめなおした」と取ればいいのかもしれない。
これが一番分かりやすそう。
長年のファンにも、ひねくれないで、まっすぐ聴いてほしい、名曲ぞろいのアルバム。
俺たちに明日はない [DVD]
この映画にはあると思う。
たしかに、主人公が犯罪者ということで、感情移入できない観客もいるかもしれない。モラルで彼らを否定するのはたやすい。
しかし、明日の見えない時代の中でもがき苦しみ破滅する彼らが
現代の閉塞感とどこかオーバーラップし、少し共感することができた。
その共感があったからこそ、ラストシーンは胸が痛み、切ない。
最後に死ぬフェイ・ダナウェイのなんと美しいことだろう。