永遠の仔〈下〉
直木賞の選考では、選考委員の大先生方に「作品が長すぎる」「子供同志の会話が子供らしくない」等々の評価を受けたようであり、実際読んでみると、なるほどその通りである。しかし、その不器用さゆえ、読者に強いメッセージが伝わっているように思う。作品自体は過去と現在に起きた殺人事件を軸に展開するミステリーとなっているが、まず作者が作品を通して伝えたいメッセージがあり、その表現方法としてミステリーを選択したように感じた。とにかく「力」がみなぎった作品である。
永遠の仔〈3〉告白 (幻冬舎文庫)
読んで随分たつが、文庫版が出たようなのでレヴューを書くことにする。私は、この作品に出てくる登場人物はどうも「キレイ」すぎる気がする。例えば、主人公の看護婦の弟が、姉が父親と関係していたことを知って常軌を逸し、家に放火するくだりがあるが、いくら近親相姦が背徳的行為でショッキングとは言え、それではあまりにも純情すぎるというものだ。母親と弟が早々いなくなるのも、物語の構成上ご都合主義といえなくもない。総合的に宮部みゆきの「模倣犯」を凌駕すると思うが、登場人物の行動や台詞に若干センチなところがあるし、臨床心理学や精神分析の症例を読み込んでいることが文脈から明らかなのもちょっと気になる。
永遠の仔〈5〉言葉 (幻冬舎文庫)
児童虐待がテーマで
涙なしでは読めない作品。
ハッキリ言ってすごく重い作品。
その他にも、アルツハイマー、介護問題、等
決して他人事ではない問題も描かれていて。
こういう話、今の時代
きっと現実でも起こっているんだろうなぁ…と思うと
哀しくて辛くて切なくてたまらない気持ちになってしまう。
かなりの長編だけれど
感情移入してしまうので、全然長さは感じず
一気に読み進むことができた。
読み進むうちに
10年ぐらい前に見たドラマのシーンが
頭の中に浮かんできて
ドラマの内容なんて忘れていたはずなのに
それぐらい印象に残ってた作品だったのか、と驚かされた。
後書きに書かれていた
「子」ではなく「仔」にした理由。
それを読むと、また涙があふれてきた。
「優希」も「笙一郎」も「梁平」も
本当に存在していたような錯覚に襲われる。
本編の最後の2行
声を大にして3人に伝えてあげたかった。
もう一度見てみたくて
ドラマのDVD借りました。
またじっくり観直そう。
疾走 上 (角川文庫)
主人公シュウジを「おまえ」と呼ぶ語り口に違和感を感じて,感情移入にちょっと時間がかかったが,読み出してみると本当に止まらない。上下とも,休む時間すら惜しくて,あっという間に読み終えてしまった。
シュウジを取り巻く状況は,本当にシビアだ。家庭崩壊,自殺一歩手前まで追い込まれるイジメ,暴力的セックス(読んでいて,これほど辛い性描写は初めてだった)と殺人,孤独。
本当に救いのない状況だし,その救いのない状況を本当に誰も救ってはくれないのだけど,ラストで,「シュウジ」と語りかけられる部分ではボロボロと泣かされ,ああ,「おまえ」という語り口はそういうことだったのか,とも納得させられた。
読んでいて居ても立ってもいられないほどの辛さと,一転しての心地よい涙と……やっぱり,重松清はうまいなぁと思う。
永遠の仔 DVD-BOX
放送終了からDVDが販売されるまで、かなりの間隔があります。調べてみれば、なるほど放送時の視聴率は平均10%前後と商業的にはあまり成功したとは言えない作品のようです。ヘビーなストーリーに主演はもちろん、脇役のベテラン出演者、3人の子役の重厚な演技がさらにヘビーな内容を強調します。好きな役者さんが、パッケージに4人並んでいるのでチョイスした作品なのですが、いい意味で裏切られて衝撃を受けました、民放のドラマでこんな作品はもう今後は期待できないんじゃないでしょうか?
このドラマを見て、中谷美紀が綺麗だとか、渡部、椎名がカッコイイとか、石田ゆり子の濡れ場を見れてよかったとかの感想しか残らない人は、幼年期から思春期にかけて恵まれた環境で育った人なんでしょうね。